第17話 改めてこの大剣がなんで唸るのかと聞かれても僕が知りたいわと思う件について
「とまぁ、かくかくしかじかそういうわけなのさ」
「いやレベルアップとか意味分からんし」
そんなこと言われましても。
校舎外にうじゃうじゃといたゾンビを軽く一掃した後、僕らは再び落ち着いて話せる校舎内教室へ。
包み隠さず僕がレベルアップすることやらを説明したら、ツインテールツンデレ様に厳しいツッコミを頂いた。
「言いたいことは分かるけど、実際そうなってるから仕方ないじゃん」
「いや、まぁそうなんだけどさぁ……いまいち納得出来ないっつーか」
鉄槌はやはり納得出来ないようで、うんうんと首を傾げている。その気持ちはよく分かるぞ。だって僕ですら意味分かんねーもん。
「千棘の気持ちもよく分かるけど、実際にあぁも見せられちゃうとねぇ」
「うんうん! ムンク君凄かったよね、ゆーちゃん!!」
「正直、目の前にした今でも信じられません……」
ちなみに冬雪の『ゆ』からとってゆーちゃんと呼ぶらしい。普通だったら頭文字の『ふ』を取るんじゃないかと思うが、渾名なんてそんなものかもしれない。まぁ、友達なんてろくにいたことないから、よく分からんが。
「そう言えばあの馬鹿デカイ大剣はどこ行ったんだよ?」
「まー、あれだね。インベントリに……って見てもらったほうが早いか、ちんからほいっと!」
鉄槌の疑問はもっともなものだ。あれだけ猛威を振るった武器が忽然と姿を消しているのだから気にしないわけがない。ただインベントリに格納してあると説明しただけで理解できるとも思えないので、手っ取り早く目の前に出すことにした。ちなみに呪文は気分で別に必要ない。
「おわっ!? いきなり大剣が現れた!?」
「信じられません……」
「わー! 手品!? ムンク君凄いっ!!!」
「にわかに信じがたいわね……こうも目の前で見せられれば信じる他ないのだけど」
中々に面白い反応をする面々だが、更にそれだけではない。
『ルルルルル』
「何かしらこの声……この剣からかしら?」
「そうなんだよ、この剣唸るんだよ。ほんと変だよね」
彼女の疑問はもっともなものだ。ていうか、それは僕も知りたかったりするんだよね。ほんとになんで君は唸るんだかね?
心の中で大剣に問いかけるが返答なんてあるわけもなし。そっかー分かんないよねーぐるるー。
◆
「とまぁこんな感じで僕の能力は分かってくれたかな」
一先ず、僕の能力の説明は一段落した。これで無駄な心配とかをされることもないだろう。
しかし、コミュ障のわりに案外と喋れるもんだな。まぁ、伝えるべき事を淡々と伝えてるだけというのも大きいけどさ。これがもしフリートークで女の子と雑談しろなんてなったら無理無理カタツムリーって感じだよ。
「ムンク君が想像を絶するほど強いのはよく分かったわ。ここにいる間はゾンビ関連の事はある程度任せていいかしら?」
「うん、そんな感じでおけ」
天草の提案に頷く。適材適所というやつだ。ていうか、これぐらいやらなきゃ僕はフラフラしているタダ飯食らいのクソニートだ。まぁ、ぶっちゃけてそれもありっちゃありだが、流石に今は自重する。
僕の将来の夢はさておき、一つ懸念事項がある。
「ただゾンビ達の殲滅はあまりお勧め出来ないね。多分だけど、今はそれをすべきでは無いと思う」
「懸念事項があるということね」
「なんでだよ? 倒せるなら倒したほうがいいだろ?」
鉄槌の疑問も分からなくもないが、そういうわけにもいかない。
「僕が全てのゾンビより強い確証はないからね。それと警戒すべきはゾンビだけじゃないかも知れない」
「? どういうことだよ? ゾンビ以外に何があるってんだよ」
「あぁ、それは……」
もったいぶりつつ、答えを叩きつけようとしたところで意外な人物に割り込まれた。
「人間だよ」
「心先輩……?」
「ゆーちゃん。世の中にはいい人も沢山いるけど、世の中には悪い人って沢山いるんだよ」
答えを言い当てたのは純真心だった。まさか彼女がこれを答えるとは予想外だ。能天気そうに見えて案外本質を見抜く眼を持っているのかもしれない。
その通り。ゾンビも脅威だが、僕はそれ以上に人間の方が怖い。この混沌とした世界だ。法律や警察はろくに機能しないし、倫理観だってどうなっているか分からない。タガが外れた人間が何をしでかすか分からないことは、先日の陽キャ達に見を持って味わされた。更に言えば、特に目の前にいる彼女らはろくな目に合わないような気がする。
「そうね心ちゃんの言う通りだわ、世の中いい人もばかりじゃないもの。そういう人達には皮肉なことだけれど、ゾンビ達がバリケードになるということね」
「そういうこと。まぁ、ゾンビを放し飼いにするわけだしバリケードは厳重にしておいた方が無難だけどね」
これも倫理的に言えば褒められたものではないだろうが、まず自分の身が第一だ。ある程度の自衛手段が確保出来るまではこうした方がいいと思う。特に彼女達は見た目麗しい美少女だ、ゼッテーろくな目に合わない。断言できる、こういう世界ではテンプレだからね。
「待ってくださいアリア先輩!! そんな酷い事を認めるんですかっ!?」
当然、愛贄の言う通り人によっては倫理的に容認出来ない事だろう。他の面々も反対はしないものの眉をひそめてはいる。反対はしないがこの状況自体には後ろめたさがあるという所だろう。
「いえ、背に腹は変えられないわ。彼の提案は悪くないものだと思う」
答え方によっては全員の信頼を失う恐れがあったはずの問答だ。そんな中でも天草は凛と、そしてはっきりとここにいる全員に告げた。
「アリア先輩っ!? それでいいんですか!?」
「いいわけないじゃない。でも……私は冬雪さん含めて皆が大事よ。ここにいる皆が酷い目に合ったら耐えられないもの」
「……っ」
愛贄はなおも噛みついたが、天草の真剣な瞳に折れることとなった。きっと彼女も綺麗事だけでは上手くいかないと心の中では思っていたのかもしれない。
「……」
話は纏まったが、当然なんとも言えぬ沈黙が訪れる。なにこれ、胃がキリキリするんですけど。
「ま、堅苦しい話はこれくらいにしてっと。ちょっと面白いものを見せようか」
流石にこの沈黙の原因でもあるから気不味い。気が重くて口から胃が飛び出るほど気不味い。
ここはあれだな。僕の更なる本気ってヤツをみせてやりますかね。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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