表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深愛~見つけられた日から、もう逃げられない~  作者: 白川桜蓮


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/46

エピソード6-1

「なんか他に欲しいものはないか?」

 蓮が美桜の顔を覗き込む。

「別にない」

 美桜は首を横に振った。

「それじゃ、そろそろ帰るか」

 蓮が彼女の肩に手を伸ばしたその瞬間――。

「蓮っ‼」

 背後から無邪気で強引な声が響き、美桜の身体がビクリと反応した。繁華街の喧騒の中でも目立つその声に、蓮は軽く舌打ちをした。

「……面倒くせぇ奴に見つかった」

 低く呟かれ、美桜は無意識に蓮のシャツを掴んだ。蓮が振り返ると、美桜もゆっくり後ろを見た。

「珍しいじゃん! こんな早い時間になにやってんだよ?」

 人混みをかき分けて現れた男が、軽い調子で話しかける。

「……別に」

「久しぶりなのに、冷てぇな」

「一昨日会ったばかりだろ」

「……ん? そうだったか? あ、そういえばそうだった! ははは!」

「……ったく、笑って誤魔化すなよ」

「まぁ、細かいこと気にすんなって」

 美桜はその男を見ながら考えた。

(この人、蓮さんの友達?)

 金髪を無造作に立たせ、日焼けした肌と筋肉質な腕が印象的。幼さの残る笑顔と大きな瞳。耳のピアスや肩のネックレスが目を引く。並ぶと背も高く、美桜は見上げて首が痛くなった。

 男はふと美桜に視線を向け、

「あれ~?」と腰を曲げて覗き込む。

(……えっ?)

 美桜の頭上に蓮の溜め息が落ちてくる。

 男は美桜をじっと見上げ、驚きとともに人懐っこい笑顔を浮かべた。蓮の肩に腕を回した手を見て、ニヤリと笑い──、

「なあ、蓮。この可愛い子、誰?」

 男はそのまま蓮を見つめて問いかけた。

「お前には関係ない」

「……なんだよ、紹介してくれてもいいじゃねぇか」

 不貞腐れたように呟くケンは、再び美桜に視線を向けた。

「俺、ケン! 二十三歳で、蓮の幼なじみだ。よろしく! 名前は?」

 ケンの元気すぎる自己紹介に、美桜は少し引いてしまった。人見知りの彼女には緊張の極みだ。それでも小さな声で答える。

「……美桜です……」

 確かに聞こえたらしく、ケンが続ける。

「美桜? 漢字は?」

(字……? 名前の字? 蓮さんにも聞かれたっけ……)

「……『美しい、桜』です」

 そう告げた途端、ケンの目が大きく開いた。

「……マジかよ……」

(……何? それって何かあるの?)

「で、何歳なの、桜ちん?」

(桜ちん? なんでちん?)

「……15歳です……」

「はっ……15⁉」

 ケンの顔色がみるみる変わり、蓮に鋭い視線を投げかけた。

「なあ、蓮……」

「……なんだよ?」

「お前、それ犯罪じゃねぇか!」

「あ? てめぇだけには言われたくねぇよ」

「うおぉー‼ 羨ましい! どうして蓮だけ? ズルくねぇ?」

「うっせぇよ。声デカいぞ。葵に言いつけるぞ」

 その瞬間、繁華街のざわめきさえかき消すケンの声が、ぴたりと止まる。周囲の視線すら恐れず騒いでいた彼が、完全に凍りついた。

「……あの……今のこと、葵には……ナイショで……」

 焦るケンを、美桜は興味深げに見つめる。

「は? 却下」

 蓮の冷たい一言に、ケンの表情が引き攣る。

「頼むよ、蓮! あいつがマジで怒ったらヤベェんだって!」

「お前が葵を怒らせるようなことをしたから悪いんだろ?」

「……‼」

(……葵さん……)

 美桜は心の中でその名前を、何度も繰り返した。

(葵さんって、ケンさんの彼女なのかな……)

ケンは肩を落として俯き、蓮は鼻で笑った。その様子に、思わず美桜も笑みがこぼれる。ケンの表情の激変が、ちょっと可笑しかったからだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ