32話 疑念
(だぁ〜かぁ〜らぁ!!全部本当なんだって!!)
「オビト殿に人と遜色ない知性と善性があることは認めている。そして、ミルシャの命を救ってくれた恩人であることが事実だということも」
(でしょ!?ならさ、いい加減俺を信用しても―)
「だがぁッ!しかしッ!だッ!!」
(……っ!?)
「どこぞとも知れぬ......ニホン?という異世界から女神様に身体を改造され、この世界に送られて来たということをそう鵜呑みに信じることはできない、この情報だけ突拍子も無さすぎるだろうッ!!」
(だぁぁぁぁなぁんでだよぉぉぉぉッ!!)
最悪の初対面の後。
頭が無く、喉から蒼い炎が噴き出すこの見た目と、ミルシャを庇う為に使用した魔法を即座に消し去るこの魂の炎によってがっつりアーディに警戒されてしまった俺は、疑念を払拭する為にもアーディへの状況説明も兼ねて、これまでの出来事を隠すとこは隠して洗いざらい話す事にした。
………のだが、まず自己紹介として名前、俺の持つスキルの説明、それからミルシャとの関係を話し、このクエルタム大森林を救う為にも、元凶と思しきルエルタへと直談判(物理)をしに行こうと大樹を目指し、その途中で瘴異化したアーディと出会い、激戦を繰り広げたと。
ここまでは良かった、すんなりと聞き入れてくれてなんて話のわかる人なんだと感動すらもした。
けど、俺の出身を聞かれて話したところでおかしくなってしまった...
「アーディ師匠、ロクローは嘘を吐くような人じゃありませんよ?」
(全部本当なんだってぇ...信じてよぉ...!!)
「すまないな、ミルシャ。オビト殿は善人であり、この大森林の為に力を尽くしてくれていた事は十分に理解できた」
(じゃ、別に信じてもいいんじゃ――)
「いや、どうしても信じきるわけにいかないんだ」
(何がよ!?)
「ルエルタは洗脳や催眠等の精神系の魔法を使って瘴異化させた住民達を意のままに操っていてな」
(え)
サラッとしてエグい情報ぶっ込んでくるじゃないかこのエルフさんは...
「詳しい事情は私もわかってない。が、ルエルタは何故か魔物側に寝返って行動しているようなのだ」
(あぁ...まぁそうだよね...)
護り手を排除しようとしてた時点で予想はしてたがやっぱり真っ黒だよなぁ...けど関係ある?今それ。
「図々しくあることは百も承知し言わせてもらう。この大森林は今、壊滅の一途を辿っていて、救えるのは我々しかいない。つまり我々の失敗はこの地の破滅を意味する」
(そりゃこっちも理解してるが...)
「オビト殿の存在は今、破滅を待つしかない大森林にとって都合が良すぎる。処刑を受けるはずだったミルシャと出会い、救い、そしてこの大森林でさえ救うという意志があり、それを叶えうる力も持つ」
(あぁ、まぁそうだけど...)
「オビト殿は色々都合が良すぎるのだ。ルエルタに用意され、後に我々を裏切らせる為の駒と言われた方が簡単に信じれてしまう」
(俺は…そんなんじゃ...)
……だが、アーディの疑念はわからんでもない。
大森林と一切関係の無い奴がこんな無謀な事に全力で手を貸すとは珍しいなんてもんじゃないからな...
「出身が怪しく、先の展望が見えないこの大森林を命を賭けて救おうとする貴殿が私には....どうしても怪しく見えてしまう...」
(アーディさん...)
「オビト殿やミルシャに助けられなければ、瘴異化された怪物として存在するしかないはずだったが、こうして助けられた今、クエルタム大森林の導き手としてこの地を全力で救わねばならない...!」
「師匠...」
(………)
ミルシャがあの時に俺を全面的に信じてくれたのは俺しかいなかったから...頼れる戦力であるなら俺のバックボーンはどうでも良かったからだと思う。
だがアーディは実力者であり、連携も抜群にとれ、信頼に足るミルシャもいる。
存在が異質な俺を信用できない事は十分理解した。
だが、この大森林を救うと俺は誓った。
どんな奴が相手だろうと諦めないと誓った。
その俺の決意をみくびられるのは...腹が立つ。
「師匠、どうかロクローを信じてあげてください、ロクローは本当にこの森の事を思ってくれているんですよ...?」
「ミルシャ……不甲斐ない、どうしてもこの疑念がずっと頭から離れてくれないんだ....恩人に向かって無礼と思う。しかし....もう失敗は許されない....慎重に事を運び、不安要素は――」
(おい)
「……オビト殿...?」
(俺が信じられないか?)
「…貴殿への疑念は申し訳ないが晴らせていない」
(そうか...)
アーディが心から申し訳なさそうに俯き目を瞑る。
良いだろう、ここまでして頑なに信じないって事は俺のしてきた事を蔑ろにするってことだ。
俺が必死に行動したことも全て騙す為、俺は大森林を破滅させるルエルタの駒でしかないって事だ。
ふざけるなよ....これ以上は我慢ならないッ...!
ふつふつと怒りが込み上げる、どうも抑えることはできなさそうだ。




