31話 再会
「ゴホッ...」
先程までは心臓を貫かれ、生命活動を停止していたはずの人物が再び息吹を取り戻す。
「ぅぐ...は..ぁ.....わた..し..は...」
永遠の眠りから覚めたその人物は、寝そべった状態の身体をゆっくりと起こし、辺りを見回す。
「……ここ...は――ッ!?ちょっ―」
意識が徐々にはっきりし、自らが置かれた状況を把握しようとしたその時。
突如、何者かがその人物に向かって襲いかかる...
「アーディ師匠ッ...!!!!」
「ミルシャ..!?」
言葉尻を正そう、襲いかかったのではなく、二度と言葉を交わす事も叶わなかったはずの恩師に喜びのあまりに抱きついただけ。
未熟な弟子と道を踏み外した師匠の再会だった。
◇◇◇◇◇
「師匠...私...私...!!」
「…多くの心配と苦労をかけてしまったようだな...すまなかった、ミルシャ...良く頑張ったな...!」
「アーディ師匠ぉぉ...!!」
胸の内で弟子が泣き、それを優しくあやすかの様に師匠が優しく抱きしめる。
「うわ゙ぁぁぁん!」
「ふふ...ほら、顔が崩れてるぞ?せっかくの可愛い顔なんだから泣きやめ?」
「ふぅぅ...はい゙...!」
ミルシャの端正な顔が、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになってしまっていた。
それらを自らの衣服で拭き取り、綺麗にする母性のあふれる師匠。
(うむ...ミルシャとの約束の一つ、達成だな!)
この師匠と弟子の感動と和やかが入り混じった尊い光景を後方腕組みしながら眺める。
短い間だったが色々あったこの異世界転移。
身体を作り変えられ、自身に過ぎた力を与えられ、この世界...ニルヴァリスへと転移してきた。
時に憤慨し、時にこの世の過酷さを知り、時に絶望をして、何とかここまでやってこれた。
そして、救うと誓った少女に、諦めるしかなかった師匠と再会させることができて、己の異世界転移を誇りに思えた。
(俺はこの世界でやれる事がある、この力を使って誰かを救う事ができる、最後まで救い切ろう!)
自身の存在意義を見出し、決して諦めはしなかったのだが、少し達成する事に弱気になっていた目標、クエルタム大森林を救い切るという大見栄を叶えてみせると首無しの男は静かに燃えていた。
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(…………)
「…………」
首無しの男とエルフの麗人との間に緊張が走る。
自身の足元には、風魔法による攻撃の痕跡。
目の前には、ミルシャを庇うようにして臨戦態勢をとっている導き手のアーディ。
ミルシャとアーディが再会を喜びあってから数分。
そろそろアーディに色々と事情を聞きたいと思い、少し挨拶をと近づいたのが引き金だった。
◆◆◆◆◆
(……もうそろそろ良いかな?)
感動の再会を邪魔しない様にして静観を決め込んでいたが、何故アーディ程の強者が...導き手が瘴異化などしてしまっていたのか?そのアーディを瘴異化させた要因はなんだったのか?色々と聞きたいことが盛り沢山過ぎて、いつ事情を聞きに行ったものかと機を見計らっていたが...
(もう良いだろ?うん、良いだろ行くぞ!)
痺れを切らしてスタスタと再会に水を刺しに行く。
(あの~すみません、アーディさ―)
「――魔物かッ!?ミルシャ、後ろに下がれ!!」
「あの、えっと...アーディ師―」
「手負いだがお前ごとき滅するなどわけはない!」
「アーディ師匠、ロクローは―」
「ミルシャは休んでいろ!私が相手取る!」
(いや、あの、戦うつもりは――)
「風よッ!!」
すぐ足元に横薙ぎの風魔法が素早く放たれる。
(……マジか)
「誰を宿主とした魔物かは知らんが、人語を解するのであれば、それは脅威となる!ここで潰す!」
(…………)
「…………」
アーディがこちらに鋭い睨みを効かせてくる。
互いの間に緊張が走る。
◆◆◆◆◆
自身の軽率だった行動を振り返り、ミルシャの紹介があるまで大人しくするべきだったと後悔する。
「……来ないのか?ならばこちらからッ!!」
どうこの場を落ち着かせたものかと考えを巡らせていると、先手を取ろうとしたアーディの腕には風が渦巻き、それをこちらへ向かって解き放とうとしたその時。
「待ってくださいッ!!」
「―ッ!?」
瞬間、両者の間に入り込んだミルシャ。
しかし、アーディは急に止まれず風魔法はミルシャ解き放ってしまう。
(――チッ...!)
咄嗟だった。
貯め込んだ魂の炎を全身に纏わせてからミルシャを抱き抱え、放たれた風魔法を正面から受け止める。
「―何ッ!?」
放たれた風魔法は蒼い炎に触れた瞬間、炎によって燃やし尽くされ、炎の出処である男の頭部の炎へと全て吸収される。
「貴様...一体...」
(え~っ...と...どうも、オビト=ロクロー...です)
大森林の導き手であり、重要な情報を持っていると考えられるアーディ。
情報を聞き出そうとして焦って話しかけてしまった結果、この上なく不本意で最悪の初対面と相成ってしまった。




