29話 炎の真価
蒼白く輝く何十本もの剣が、全身が激しく燃え盛る首無しの背後で整然と浮遊する。
(はぁ...はぁ...途中かなり危なくなったが、こいつが俺の奥の手だッ!!)
これは頭に思い描いていただけのただの妄想。
だが、焚べる者による魂の炎は望めばその在り方を自在に変化させ、叶えてくれる。
我ながらにこんな構想だけしかできてなかった物を奥の手と呼んでしまって良いのか?と思うのだが、この蒼く揺らめく炎の性質を信じてぶっつけ本番で試した結果、途中で自我が消えかけるアクシデントも乗り越え、自らの周りに魂の炎を凝縮し、剣の形に精製する〝ブレイド・ステイト〟と名付けた技法を壮大な形で発現させることができた。
そして、少し待って欲しい。
このブレイド・ステイトと厨二っぽい名付けをしているのにはちゃんと理由がある。
まず、焚べる者によって扱える魂の炎というのは、自由自在に操れて、望む形に柔軟に変化し、燃やす対象まで指定できるという性質がある。
やはり、チートすぎるこの万能な炎。
上手く扱うにはどうするのが一番良いのか?
俺が出した答えは...〝名付ける〟ことだった。
ミルシャが気絶していた間、炎の理解を深める為に剣や刀に形状変化させていた頃。
その時にふと、形状に名前をつければ、イメージを明確にできて良いんじゃないか?と思いつき、試しに名付けてみたところ、速攻で思い描く形状に変化させることができたので、せっかく覚えるのなら、カッコいいものにしてやろうとして魂の炎の応用法であるブレイド・ステイトが出来上がった。
「………〉
巨大かつ重厚な木の根を周りに従えるアーディに、極めて小さかったが、動揺の色が見えた。
(ミルシャ)
「………――はいっ!?なんですかっ!?」
(……?今から俺がまたアーディ斬り込む。そこでミルシャに、もし俺が対処しきれなかった木の根を任せたい、いけるか?)
「はいッ!大丈夫ですッ!」
(良し、頼む。それじゃ、行くぞッ!)
ミルシャに援護を頼み、アーディの下へ輝く剣達を引き連れ、突撃していく。
「………チッ...〉
心底面倒だと言う様な態度で、アーディは木の根の集団を自分に向けて、突進させてくる。
行動を開始すれば、相手も動く。
当たり前の道理である。
そこで、この奥の手の剣達の出番である。
(………いけッ!!)
自身の周りを浮遊している輝く剣達に、迫ってくる木の根を撃退せんが為に念を送る。
すると、輝く剣達はまるで一つの生き物の様に移動し、蒼白の奔流が木の根の一本に触れた瞬間、
―シュゥゥゥゥ―
接した箇所から一気に灼かれ、一瞬にしてその動きを止められることになった。
(おほっ!できてるできてる!!)
しっかりと操れるのか不安はあったが、剣は従順に自身の指示に従ってくれた。
「……ハァァ゙...〉
(良し、この調子なら...)
次々に差し向けられる木の根をブレイド・ステイトによる剣達で灼き斬っていく。
しかし、全てが上手くいく訳にはいかず...
(……ふぅぅぅ...――まずッ!?)
剣の動きを意識しつつ、次どう動かすか念じながら木の根を避けていた...のだが、完全に意識外からの木の根の攻撃に気づかず、直撃が確定してしまう。
そりゃそうだ、どこぞの新人類ではなく、旧世代の一般男性が、いきなり無線式ビットを操る様な事をやっているのだ。
それに、アーディも無策に木の根を差し向けるだけじゃない。
囮として放たられた根の対処を剣達にさせたと同時に、別働の木の根が自身に向けられていた。
手にしているこの古びた剣では、あの大きさの根をいなすことも斬ることもできない。
完全に自身の裏をかいたアーディの見事な采配。
―ドンッ!!―
それはこの首無しが独りであったらの場合だった。
(すまん、助かった!!)
「よしっ...!」
頼れる味方のミルシャが付いてくれているお陰で、本来受けていたはずの攻撃も無力化される。
「……チィ゙...カァ゙ッ!〉
アーディがミルシャの存在は厄介であると気づき、地中から幾つもの小さく鋭い根を勢い良く生やし、排除にかかる...が、
「ふぅぅ...」
ミルシャは風を纏い、風そのものになったかの様にひらりひらりと躱していく。
(2対1はキツいよなぁッ!)
ミルシャへ少し意識を向けてしまったことにより、巨大な木の根の動きがほんの少しぎこちなくなった瞬間を逃さず、一気に加速し、アーディの目の前にまで迫る。
「グ...ギィィ゙...〉
(逃さねぇぇッ!!)
逃げようと動き出したアーディを見て、咄嗟に背中付近で炎を炸裂させ、急加速し、
(オラァァァッ!!)
「グガァァ゙ッ!〉
アーディの心臓に切っ先を向け、狙いを定め、加速したことによるスピードが乗ったままの鋭い刺突で貫く。
―ガツッ!!―
(――ッ!?)
刃が心臓に届いたと同時に、とても臓器を貫くとは思えない、硬い手応えを感じる。
(硬ってぇ...なら!!)
剣に纏わせていた炎を、ただ垂れ流すのではなく、刃に沿うように鋭く研ぎ澄ませる。
(…………いっけぇぇぇッ!!)
「ガァ゙ァァ゙ァァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ!!〉
鋭く研ぎ澄まされた魂の炎によって、煌々と蒼白い輝きを放った刃が、アーディの心臓を刺し穿いた。
剣の並び方はペ〇ソナのタナ〇スの棺桶みたいなイメージ




