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デュラハンが行く!! 〜異世界漫遊記〜  作者: 八嶋ユナ
第一章 クエルタム大森林編
29/31

28話 燃え盛る力

改稿をやっと終えました。

一回進捗がすべて吹っ飛んでやり直す羽目になり、仕事から帰ってよしやるぞで寝落ちを3回繰り返してこのざまです。

最新話はできるだけ早く出すので本当に申し訳ありません。

7月には安定するかと思います

時刻は夕暮れ、場所は大樹根本の広場の一歩手前。

前回の戦闘によって崩れた外壁のすぐ側にいた。


(俺がまずアーディに攻撃。そしてミルシャは弓を回収次第に攻撃開始...だったよな?)

「はい、それで大丈夫です」


アーディとの再戦を間近にし、戦闘を開始する前にあらかじめ打ち合わせていた作戦の内容を軽く確認していた。


(弓の場所に心当たりはあるんだよな?)

「はい、多分...なんですけど...」

(あるだけでも十分だ、せいぜい探す時間ぐらいは稼いでみせるさ)

「すみません、お願いします」

(あぁ、任せてくれ。んじゃ、肝心のアーディは今何処に居るか...)


作戦の確認をしつつ、崩れかけた外壁からアーディの居場所を探る為にほんの少し身を乗り出す。

瘴気で溢れかえり、黒く染まった地面。

その中を悠々と佇む人影が視界に入る。


(……いたな、あの扉の前で仁王立ちしてる)


元は大樹内部へ繋がる扉があった場所、その正面に彼女はいた。

前回最後に見た時と変わらず、瘴異化によって変異してしまい、全身が樹木で構成された人形の様な姿のままだった。


「アーディ師匠...」


現在の目標であり、必ず乗り越えなければならない人物を目にし、嫌でも緊張が高まっていく。


(勝つぞ、今度こそアーディを救うためにもな)

「……そうですね、ロクロー...」


一度は大敗し、敵わなかった相手と再び戦うのだ、ミルシャが不安そうしているのは良く理解できる。


(大丈夫だミルシャ、上手くやってみせるさ)

「……そう..ですね、やりましょう」

(あぁそうさ、やってやるんだ)


身体を巡る魂の炎が熱を持っていくのがわかる。

大丈夫だ、今度は失敗しない、全て救ってみせる。

それを叶える為の力だってある。

俺は.......やれるはずだ、できるはずだ。

何も失わない為に...この手から何も零れない為に。


(……よし、覚悟は良いな?)

「はいッ!」


腰に下げていた少し傷ついている年季の入った剣に手をかけ、鞘から引き抜く。

古ぼけた見た目とは裏腹に、刃は鋭い光沢を放つ程に研ぎ澄まされていた。


(それじゃ、作戦通りに...行くぞッ!!)

「はいッ!!」


ミルシャとタイミングを合わせて、勢い良く広場の中へと飛び出して行き、作戦が開始される。


「シィ...〉

(急いで弓を探せ!)

「頼みました!ロクロー!」


広場へ突入したと同時に、一瞬で臨戦態勢を取ったアーディは強い敵意を放ちつつ、内側から木の根が飛び出してしまっている右眼とは違って、まともに原型を残していた碧眼でこちらを虚ろに睨みつけてきた。


「ハァ゙ァ...〉

(……怯むな、俺...!)


ひりついた空気が流れ出す。

理想としては正々堂々といきたい所なのだが、前回の戦闘でアーディとの圧倒的な力量の差は嫌と言う程に自覚できている...というかさせれている。

だから、少しでも対抗できるようにする為の手段を考えていた。


(ぶっつけ本番になるが...〝瘴気吸収〟!)


まずはその為の下準備。

能動的に発動させた事が無い瘴気吸収というスキルを発動させると、地面を覆っている黒い霧...瘴気が自分の心臓付近を目指して集まっていき、そのままゆっくりと浸透していく。


(……よし、できてるみたいだ!)

「アァァ゙?〉


使えるかどうかあまり自信は無かったが、スキルは使いたいという意志にしっかりと応えてくれた。

ならば、この調子でもう一つの重要なスキルも発動させることができるはずだ。


(いくぞ...〝瘴気変換〟!)

「…アァァ゙?〉


対抗する為の手段として考えていたスキルであり、今回の切り札の一つ。

瘴気で満ちたこの場において、最強の性能と言える瘴気変換を発動させる。

すると...


(――ッ...!!)


スキルを使用した途端、心臓付近を中心にして身体全身が一気に蒼い炎で燃え盛り、これまでに何度も経験してきた全身を灼かれる様な感覚に襲われる。


(うぐぅぅッ....!)


熱く苦しいのだが、不思議と嫌じゃない。

今まで扱ってきた魂の炎を軽く凌駕する膨大な量の炎に包まれ、全能感に満たされる。


(こ...こりゃ..すごいな..!これなら――ッ!?)


―ガキンッ!―と剣同士が激しくかち合う。


(そりゃ、来るよなッ!)

「ガァァ゙ァ゙ッ!〉


おそらく危険を感じ取ったのだろう。

アーディは一瞬にして自分に向かって距離を詰め、鋭く斬り込んできていた。

我ながらよく咄嗟に受けれたもんだ。


(く...ぐっ...)

「ハァ゙ァァッ!!〉


絶え間のない流麗な剣撃を間髪入れずに繰り出し、容易に不利な状況へ追い込まれてしまう。

だが、気後れは無い。

何故なら、


(こっちは制限無しの炎があるんだッ!!)


迸る魂の炎を惜しみ無く剣に纏わせ、これまで幾度も交わしたアーディとの剣戟が始まる。

鉄と鉄が激しく何度も打ちつけられる金属音が大樹が見下ろす大地で響き続ける。


(ふッ!――手応えが…違って…きたぞッ!)

「クグゥ゙...〉


何度も斬り結んでいくと同時に、徐々にアーディの持っている細身の突剣が、自身が持つ古ぼけた剣が纏う溢れんばかりの蒼炎によって融解されていき...


「グゥゥ゙...〉

(オラァッ!!)


ついにはその形を保てず、焼き切れてしまった。

得物を失った、アーディからは気後れを感じる。

今が攻める絶好の好機である。


(はッ!せいッ!!)

「ク...グゥ゙ゥ...〉

(どうだッ!)

「ガァ゙ァ゙ッ!!〉


自らの剣を失っても尚、残っている刃と柄を用いてアーディはこちらの斬撃をいなし続ける。


(やッ!せやッ!!)

「チィィ゙......ハァ゙ッ!〉


攻勢に出ていたその刹那、激しい突風が吹き荒れ、襲いかかってくる...のだが、


(ぐっ...効かん!!)


不利を強いられ続け、痺れを切らしたアーディが、苦し紛れに放った風魔法は、無情にも溢れる魂の炎によってかき消されてしまう。


(いけてる...いけてるぞ!!)


瘴気吸収から瘴気変換により生じた膨大な魂の炎、その攻防一体の性能によって、本来敵わないはずの強者相手に優勢でいられている。

ただただスキルに物を言わせて戦っているだけで、卑怯と思わなくもないが、今はこれのお陰でかなり勝算が見えてきた。


(この調子で―)

「ギィィ゙ィ゙ッ!〉

(うごっ...)


仕切り直すかのように放った苦し紛れの蹴りを諸に受けて体勢を崩されてしまい、その隙にアーディが素早く距離を取る。


(……どうだ?今の俺は立派な脅威だろう...?)

「...フン〉


念の為一応用意していた奥の手を出すまでも無い。

もしかすれば、ミルシャが戦闘に参加してくる前に勝ち切れるんじゃないかと期待感が高まる。


(勝つぞ、このまま一気に攻め――がッ...!)

「……〉


突然だった、更なる攻撃をと一歩踏み出した瞬間、脇腹に強い衝撃を受け、そのまま真横に吹き飛び、地面に倒れ伏してしまう。


(なんだ...?今の――ッ!?)


先程まで自分の居た場所へ目を向けてみる。

すると視界に収まってきたのは、地中から飛び出し螺旋を描く様に幾重にも絡み合う太く重厚な木の根の集合体があった。


(おい...これまさか...)


この木の根が出現した原因は、深く考えずとも推測することができた。


(……はぁ...やっぱそうだよなぁ...)


その推測は的中し、アーディの足元には何かしらの植物が育ったような痕跡が残されていた。


(くそ...まだ底があるのかよ...)


まだ見ぬ力を見せられ、この瞬間まで自分は未だに手加減されていたと理解し、自身の慢心を恥じる。


(一体どうすりゃ――ッ!?危なっ!?うわっ!)


地中からする音と気配で木の根の集合体を紙一重で躱す。

しかし、集合体は幾つもあるらしく、次々と自分を狙って勢い良く生え続けていた。


(くっ...どこまで...――おごッ...!)


襲いかかる木の根の集合体を時々かすりもしながら躱し続けていたが、ついに腹部に直撃を受け、地面に倒れ伏してしまう。


(ぐ...がッ...!)


直撃を受けた腹部を見てみれば、白色だった衣服は鮮血の赤で染まっており、衣服に空いた穴から内蔵が見えてしまう程深い傷であることが確認できた。

そしてこの有様は、木の根の初撃を受けていた脇腹も同様だった。


(こいつは...かなりまずいな...)


救いとしてはこのデュラハンの身体には痛覚がないという点だろう。

普通はもがき苦しむだろうこの傷でさえ、ちょっと見るのが嫌だな程度で済ませられている。


(う..ちょっと身体の動きが鈍い..?)


痛覚は無い...がしかし、どうも重症を負うと身体の動きが鈍くなってしまうようで、それがこの身体の弱みであるらしかった。


(傷を...治さなきゃ...)


魂の炎を攻撃を受けた箇所に送り込む。

傷がじんわり熱を持ち、塞がっていく感触がする。


(よし、これで......何だ?――あ)


周りが薄暗くなっていくのに違和感を感じ、辺りを見回してみれば、アーディの周辺にその背丈を軽々と追い越してしまう程に巨大で極太の木の根の塊達がいくつも生え揃い、その全ての鈍い先端が自身に向けられていた。


(え...っと、あの...それもうちょい待てません?)

「………〉


アーディは右手を挙手する様に上げる。

すると木の根達がざわざわと蠢き出し、


「………〉


右手を一気に振り下げると、それに合わせて木の根が自分に向かって一斉に襲いかかってきた。


(ムリムリムリムリッ!!今無理避けれな――)

―ドンッ!―

(うおっ!今のは...!?)


後数秒であの大質量達に押し潰されんとし、天命を待つしか無かった次の瞬間、目にも止まらぬ速度で木の根を貫通した何かによって半ばから切断され、木の根達はその動きを止めた。

どうやら九死に一生を得たようだ。


(さっきのは...?ていうかあれ抜けるって何...?)

「ロクロー!大丈夫ですか!?」

(おぉ!ミルシャ!)

「遅れてすみません!ここからは私も戦います!」

(ミルシャさん...!!)


どうやら先程の高速飛行の物体はミルシャの放った矢だったらしく、どうやら助けられたようだった。


(すまん、助かりました...)

「いえ、間に合って良かったです!」

(……あの高速で矢を撃つやつ、やっぱ威力ヤバいんだね...)

「エルフ族相伝の技ですから!」


ミルシャは軽々と言うが、あのいくつもの極太の根を矢一本ですべて何とかできてしまってるの普通にヤバいよな...


「それでは...どうしますか?」

(え、どうって...)

「今の攻撃ってアーディ師匠なんですよね...?」

(たぶん...そうだな)

「何とかできそうですか?」

(……ちょっと厳しいかも)


魂の炎を纏わせた剣で斬り込み、懐まで潜り込む事も一瞬考えたが、あの速度で、あの量で来られるとたぶん途中で詰んでまた重傷を負う羽目になる。


(ミルシャの援護でどうにか...)

「……あのロクローへの攻撃を見まして、反射的に撃ちましたが、かなりギリギリです。矢をつがえる時間をロクローが耐えれるのかと考えたのですが、厳しそうなんですよね...?」

(……それくらいだったら何とか...?いや、やっぱ駄目だ、リスクがでかい)


そもそも、あの極太を斬れるかと言われたらそんな自信は何にも湧かない。

絶対斬る前に吹き飛ばされて終わると思う。


(う〜ん、なら...〝アレ〟をやるか...)

「〝アレ〟...?」

(奥の手ってやつさ...!)


隠していた力を出してきたアーディ。

それに対抗するには、出し惜しみなんてできない、こちらも全身全霊を懸けなければいけない。

だから、用意していたもう一つの奥の手を出す。


(ちょっと離れてたほうがいいかも……)

「え?何をするつもりですk―」

(はぁぁ...)

「―ッ!?」


瘴気吸収の出力を上げる...イメージをする。

すると、辺りの一面の黒い霧が自身に渦を巻くように大量に集まっていき、すべてが自身の心臓付近に浸透していく。


(うぉ...うぇ...)


身体の内側に濁った泥のようなモノが溜まっていく不快感が込み上げる...が、それを必死に押し殺し、


(……――変換ッ!!)

―ゴゥッ!!―


それは蒼い炎の火柱だった。

蒼白く煌々と輝き、一つの極致を感じさせる様相。

瘴気吸収のスキルで大量に集めた瘴気を一気に魂の炎へ変換させた者の成れ果て。


(……………)


灼かれる感覚はなく、炎に融けていく心地がする。

自身の境界が曖昧になり、このまま消えてしまうとどんなに良いだろうか...


(........)


莫大な魂の炎に包まれ、自分が無くなっていく...


「ロクローッ!!」

(―――ッ!!)


ミルシャの呼び声で意識が覚醒する。

炎に飲まれ、溺れて終わっていく所だった...


(――...すまんッ!!助かったッ!!)


ミルシャが居てくれなければ、このまま自滅という形で終わってしまっていた...情けない。


(ぐ...ぐぐぐ...くっ)


気を抜くとすぐにまた持っていかれそうになるが、そこは気合で耐える。


(うおぉぉぉぉッ!!)


魂の炎に意識を傾け、炎をすべて〝剣の形に成形〟する事を深くイメージする。

すると、火柱がゆっくりと解けていき、星のような粒子が空中を漂い、その一つ一つがより合わさって何十本もの蒼白く輝く剣が生成されていく。


「こ...これは...」

(はぁ...はぁ...さぁ、行くぞッ!!)

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