21話 救いの手を
(ミルシャッ!!急所狙いは止めだ、アーディ師匠を救うぞッ!!)
「うぇえ!?」
今までの行動目標とは打って変わって、アーディの介錯の為の戦いではなく、瘴異化から救う為の戦いへとシフトチェンジさせる。
「あっ..あのっ!救うって一体どうやって...」
ミルシャが疑問を投げかけてくる。
まぁ、それはもっともな疑問である。
治療法の存在しない現象から救うとのたまっているのだ、信じられないのも無理はない。
(今、俺の炎を纏わせた剣で斬った時、身体が焼けていくのと同時にアーディの変異が戻っていた様に見えた。もしかすると、やりようによっては救えるかもしれない..!)
「そ..それなら..!」
(俺は積極的に炎を浴びせに行く。ミルシャは魔法か何かで援護してほしい)
「わかりました!!」
(よしッ!行くぞッ!!)
今までかなり常識外れな力を見せてきた魂の炎。
敵を焦がし、己を癒やすこの炎は、救えぬはずの者にさえその恩恵を発揮する様だった。
「行きます...はぁっ!」
「フゥ゙ゥ゙..〉
ミルシャが風魔法を広範囲に放ち、アーディの行動範囲を狭める。
「ギィィ゙ィ゙..〉
(逃がすかよッ!)
「グ..ググゥ゙..〉
風魔法による広範囲攻撃を嫌がり、距離を取り始めていたアーディへ一気に間合いを詰めていき、剣撃を仕掛けていく。
適度に剣の応酬を繰り広げつつ、本題へと入る。
(こいつを...くらえッ!!)
「ギィゥ゙ッ..!〉
左手を薙ぎ払う様に振るい、掌に溜めた魂の炎を拡散させる。
剣撃の最中に、〝変異を消す〟と強く意識しながら掌に溜め込んでいた炎は一気に解放されると、勢いはそのままに、アーディの身を包んでいった。
「ギィ゙ィィィッ..!!」
全身を炎に包まれ、激しく悶えるアーディ。
しかし、その身体は焼かれつつも、異形に染まっていた部分はジワジワと治っていく様を見せていた。
(よしっ!変異は俺の炎でなんとかできるぞ!)
アーディの状態を確認し、推測は確信に変わった。
ならば後はひたすら炎を当てるのみ!
「………シャッ!〉
(―ッ!うぐっ...くそ..!)
更なる追撃を、と炎を掌に溜め始めた時、アーディが苦し紛れに繰り出した突進をモロに受け、体勢を崩されてしまう。
「ハァ゙ァ...ハァ゙ァ..〉
(やばい、逃げてくぞ!!)
息も絶え絶えになったアーディは風魔法による高速移動で大樹内部への扉を目指すように逃げていく。
「…すみません、アーディ師匠...。逃がすわけには...いきませんっ!」
「ハァ゙ァ...ハ―ガッ..!〉
ミルシャが逃げていくアーディの脚を射抜き、その逃亡を阻止する...かに思えた。
「ガァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ!〉
「(!?)」
突如アーディの背後から強烈な突風が吹き荒れる。
「うぅっ..」
(これっ..は..)
―バキィッ!!―
最後の力を振り絞るように発生させた風に乗って、アーディは大樹内部への扉を破壊しながら内部へと入った。
(まずいぞ、早く追いかけ.....何だ?)
アーディが破壊した内部への扉から大量の黒い霧が、地を這うように流れ出す。
霧はすぐに辺り一帯に広がっていき、足元には黒い地面が出来上がった。
(こいつは...)
地面に広がる、足首にかかるぐらいの厚さを持った黒い霧。
アーディが纏っていたあの霧と同様の物質であろうそれの正体は、すぐに判明した。
「何で...こんな..大量の瘴気がっ..!」
(これが...〝瘴気〟)
この世界に来て初めて瘴気という物に触れる。
おぞましく、不快感を放つそれは、何故だろうか...どこか温かい様な気がした。
(……気味が悪い――ッ!?)
瘴気という物に嫌悪感が湧き出ていると、突然全身を刺すような強烈なプレッシャーを感じる。
そのプレッシャーの発生源へ目を向けると、
「ハァァ゙ァ゙ァ゙ァ゙〉
プレッシャーを発生させていたのは案の定アーディだったのだが、先程までとは明らかに様子が違う。
先程の魂の炎によって変異が戻っていた箇所はもちろん、それ以外のまだ無事だった箇所の変異が目に見えて進行しており、アーディは全身が樹でできているような異形の存在へと姿を変えていた。
「そんな...アーディ師匠...」
もしかしたら助けられるかもしれない...そんな希望は潰えたと言わんばかりの光景を目にし、ミルシャはその場から身動きが取れなくなっていた。
(……鑑定だ...鑑定してみれば、まだ..!)
一縷の望みをかけて、鑑定を使用してみる。
アーディ Lv80
種族:トレント
HP:1092 MP:849 SP:467 DF:556 AT:702 AGI:1895(+120)
スキル
瘴気耐性LvMAX 瘴◆#$化 剣術LvMAX 剣技LvMAX 弓術LvMAX 魔力操作LvMAX 風魔術LvMAX 風魔法LvMAX 水魔術LvMAX 水魔法LvMAX 俊敏LvMAX 教導Lv7
(瘴異化が...終わっている...)
微かな望みは絶たれ、アーディの瘴異化は完了してしまっていた。
ステータスも大幅な強化がされており、もう勝ち目など見当たらなかった。
「フゥ゙ゥ゙ゥ゙―フッ!!〉
(―ッ!?ミルシャッ!!)
「あ...」
予備動作も無く繰り出された音速の刺突はミルシャを軽々と貫き、そのまま広場の外壁に衝突させた。
(ミルシャァッ!!!!)
大声で呼びかけても反応は無く、嫌な考えが脳裏に浮かぶ。
「…………〉
ミルシャの腹部に深々と刺さった細身の剣を静かに引き抜き、アーディはこちらに意識を向ける。
(くそッ...)
戦意を振り絞り、剣を構えようとしたその瞬間、
(がッ...はぁッ...!!)
気づけば大樹へ激突しており、目の前にアーディ、身体には剣が刺さっていた。
(くそ...こんな...)
身体は動かず、意識は薄れゆき、自らの死を悟っていく。
(何も..で..き....)
己の無力を嘆く時間も無く、意識は途切れた。
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《瘴気吸収、変換を実行。対象【オビト ロクロウ】を蘇生します》




