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デュラハンが行く!! 〜異世界漫遊記〜  作者: 八嶋ユナ
第一章 クエルタム大森林編
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20話 一筋の光明

ミルシャが一瞬の隙を突いた一撃はアーディの身体を貫いた。


「ギィァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ!!〉


アーディは苦悶の叫びを上げる。

ミルシャの放った高速の矢は腹部を貫通し、拳大の風穴からは赤い血が流れ落ちていた。


(効いたかっ!?)

「……あれでは...駄目です...」

(え...?)


ミルシャがそうぽつりと漏らす。

その言葉の意味はすぐに理解することができた。


(何だ...あれ..?)


アーディがその身に纏う黒い霧が、腹部に空く空洞へ集中すると、霧はその空洞を埋めていく様に流れ込んでいく。

流れ込んだ黒い霧はすぐに霧散すると、そこにできていたはずの空洞は無く、樹皮の肌が見えていた。


(おいマジかよ!)


剣術、魔術に秀でていて、それらを扱う戦闘スキルも高いうえに、あの黒い霧による再生...。


「すみません...!」

(ミルシャ...)

「本当は、あの一撃で心臓を穿つつもりでした...。急所以外を攻撃してしまうと黒い霧...瘴気によって身体を再構成し、瘴異化が進みます。もし、瘴異化が進みきってしまうと、私達ではもう手がつけられなくなると思います」

(それじゃ..)

「アーディ師匠を倒すためには、瘴異化がまだ進みきっていない今、急所を一撃で破壊するしかありません」

(んだそれッ!!)


つまりは急所以外は一切攻撃せず、縦横無尽に動く剣と魔法の達人を倒せということ。


(……もっと早く教えてほしかったな...)

「―ッ、すみません抜けていました...」

(いや、いいさ。それなら手早く役割を決めよう)


一応倒せる方法があるのならば、諦めずに努力するべきだろう。


(さっきと同じ様に俺が囮、ミルシャが決めるって事で良いか?)

「はい、もう..外しません!」


ミルシャの気合は十分。

すると、


「ウガァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ!!〉


傷が癒え、万全のアーディが雄叫びを上げる。


(よし、相手も動き出すみたいだ、行動開始!!)

「はいッ!!」

(よっしゃ、いくぞォッ!)


先程決めた役割通りに、俺はアーディの注意を引くために突撃し、ミルシャは弓を引き絞り、今度こそ致命の一撃を与えるべく集中する。


「シャァ゙ッ〉

(くッ..)

「ハァ゙ァ゙ッ!〉

(こんのッ!)


アーディからの剣撃に必死で食らいつく。

剣の達人との激しい攻防を経て、自分自身、剣術というものを身体と頭で理解してくる。


(本当にギリギリだが...何とかできてるッ!)

「グゥゥ゙ゥ゙〉


囮としての役割をしっかりと果たせている。

後はミルシャの為、大きな隙を作って最高のバトンタッチをしてやるのだ。


「シッ!〉

(あっ)

「ハァァ゙ッ!〉

(うぐぁっ..!!)


少しの慢心によって浮ついた刃を掬われ、胴を斬り捨てられてしまう。


(ちくしょう...)


これで今までの攻防と今回でかなりの傷を負ってしまった...。


(ステータス...)


HP:38/74


(まずいな...)


身体に痛みはない...が、関節がギシギシとして動きにくい感触がある。

どうやらHPが低下すると、身体の動きが鈍くなってしまうらしく、立てた予測通りHPは身体の駆動限界の様だ。


(回復ッ..!)


魂の灯からの炎を胴にできた傷に向けて流し込む。

すぐさま傷口は蒼い炎で燃え盛り、最初から傷など存在しなかったかの様に徐々に塞がっていく。

そうすると、あることに気づく。


(...動かない?)


追撃が来てもおかしくない隙。

これを突かず、アーディはただ傍観していた。


(この炎か...?)


そういえばさっき、アーディへ魂の炎を使った際、今までの軽くあしらうようだった対応を変えて俺を強く意識し始めたのはこの炎に触れてからだった。


(多用するのは控えていたが、使ってみるか)


傷も完治して身体のぎこちなさも消えた所で、剣に炎を纏わせ、アーディへ剣撃を仕掛けていく。


(そらッ!)

「グゥゥ゙〉

(ヘイヘイ、ビビってる!!)


剣が纏う魂の炎にアーディはかなり怯んでいる。

このまま一気に体勢を崩させて、ミルシャへ繋いでやる!!


(はッ!よッ!)

「グギィ゙ィ゙ィ゙..〉

(……そこッ!!)

「ガッ..!?〉

(オラァッ!!)

「グギャァ゙ァ゙ッ!!〉


アーディとの剣撃を制し、その身体へ一太刀を浴びせることに成功する。


(よしッ!!このまま一気に...ん?)


纏った魂の炎がアーディの身を灼く。

すると、ある変化が起きた。

魂の炎によって灼かれた部分は切創を残し、樹皮に染まった肌から白い柔肌に変化していた。


(変異が消えてる...?炎で瘴異化を消せる..?)


万物を燃やす魂の炎。

己の傷をも癒すそれは、対処法の無い瘴異化という現象から救える唯一の手立てかもしれないのだ。


(ミルシャッ!方針を変えるぞッ!!)

「うぇっ?」


今まで極限まで集中していたミルシャが呆けた声を漏らす。

申し訳ないが事情が変わったのだ。


(これからアーディ...君の師匠を救うッ!!)

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