17話 始まりの大樹
ふと作品情報眺めたらいつの間にか評価ptとかリアクションがむっちゃ増えててビビりました。
ブクマもしてくれた人もいて、ものすごく嬉しく思います!!
この作品を評価してくれた方達に深い感謝を!!
わだかまりも無くなり、ミルシャとの結束も、氏族救出への士気も高まった後。
あれからしばらく歩き詰め、夜が明けかけて、周りがほんのり白みがかってきた頃。
(……ん?)
「どうしました?」
(あぁ、いや...)
体の内側にある魂の灯から小さな欠片が剥がれる様な感覚がした。
急いで焚べる者を確認すると、
EXスキル
焚べる者〈77〉
すると、やはりLPの値に変化があった。
(う〜ん、まぁ、予想してなかったと言えば嘘になるが...)
「どうしたんですか?」
(いやぁほら、俺の焚べる者ってスキルあるだろ?それにLPって呼んでるポイントがあるんだけどさ)
「LP...ですか?えっと..そのポイントになにかあったんですか?」
(そうそれがさ、今1減ったんだよね)
「そんな..どうしてですか?」
(いやまぁ、ただの予想なんだけどさ、このLPってやつは俺の寿命じゃないかと思ってるんだよね)
「寿命...」
(まぁ、俺は見ての通り純粋な人間じゃない訳だが、ここに来てから結構経つけど、眠くもならないし、腹も減ってこないんだ。そこで多分なんだが、焚べる者の説明欄に魂の灯ってやつがあって、その魂の灯の残量がLPなんだと思ってるんだ)
「はぁ..」
(まぁ、つまりLPが無くなれば、たぶん俺は死ぬと思う。使わず過ごしても一日で1消費していくから定期的にプラスになる物を燃やす必要があるんだ)
「なるほど...?」
あっ...一気にペラペラ喋りすぎてしまったか...?
考察とか話すと止まらなくなる時あるからなぁ...。
「それで、あの..ロクローは大丈夫なんですか?」
(…ん?あぁ、まぁ平気だと思うよ。今のところ苦に感じてないし)
「あの...何か辛かったら言ってくださいね?」
(わかった、その時は頼らせてもらうよ)
ミルシャが心配してくれている。
困った時に力になってくれるというのは素直にものすごく嬉しい。
確実に三大欲求の内の二つをなくしている訳だが、今のところはなんとも思わない。
意外と普通に過ごせているし、案外大丈夫なのかもしれない。
残りの性欲がまだどうなってるかわからないけど、多分この調子だと無いのだろうなぁと思う。
欲求が無くなるってこれ、デュラハンになったからなんだろうなぁ...人やめたよなぁ...俺...。
まぁ本来は死んでるはずだったから妥当なのか..?
「あっ!見えてきましたよ、ロクロー!」
(…マジで?……おぉ!あれが..)
自分の現状をうんうん考えていたらどうやら目的地へとやっと到着したらしい。
目(?)を凝らしてみると、木々の間から村の防壁であろう壁と尋常じゃないくらいデカい木の幹が見えてきた。
(デッッッカ!!)
「あれがクエルタム大森林の原点。始まりの大樹とその下に広がるクエルタム氏族の村です」
(はぇー...すっごい)
話に聞いていた始まりの大樹は遠近法が通用しないくらいの相手だった。
村の防壁まではまだいくらか距離があるのがわかるのに、あの樹は...なんだろうか、近くにある感じがしてくる。やばすぎだろコレ。真上を向いて見れば、埋め尽くすような緑の葉っぽいのがわさわさと揺れている。意外と葉っぱはちっちゃいのか。
……なんか某クエストに生えてる世界の樹みたいに見えてきたな...。
(ミルシャ、マジで関係ない質問だけど良い?)
「何でしょう?」
(あの樹ってさ、葉っぱに傷を癒すとかの効果ってある?)
「ん〜...そんな様な話は聞いたことないですね...。大樹の葉は枯れることが殆どなくて、落ちてきたとしても火種として使うか住居の保温材に使用するくらいですかね?」
(あっ...そうなんだ...うん、ありがとね)
「?」
まぁ、そんなうまい話はないよな...。
ああいうファンタジーのアイテムを実際に使うのに憧れてたんだがなぁ...。
―はっ!いかんっ!気が緩んでいるぞ!
ここには人命がかかっていると言うのに!!
(よしっ!―パン―あっ..やべ)
「えっと..ロクロー?」
(ごめん、気にしないでくれ...)
いつもの気合入れる時の癖で頬を叩こうとしたらただの拍手になってしまった...。
そうだよなぁ...こういう癖、治していかないとなぁ。
「ええっと..それじゃっ!気を取り直してましてっ!まずは、村の門近くまで寄っておきましょう。精霊さん達に中の様子を見てもらいますので、それから侵入しましょう」
(OK、わかった)
緩んでいた気持ちを切り替え、早速ミルシャの提案通りに村の門近くまで寄っていく。
門番や見張りがおらず、あっけないくらいすんなりと近づけた。
「…………」
門前まで来るとミルシャが跪いて、祈る様にして手を組み、目を閉じる。
たぶん精霊とのやり取りの最中なんだろう。
「なに?....嘘..」
ミルシャが動揺を口に出す。
(どうした?)
「……あっ..えっと..。中に見張り等は全くいないらしいんですけど、その..とても怖い人が一人だけ居るって...。それで精霊さんが怯えちゃってて...」
(精霊が怯えてる?)
「はい、これ以上は村の中に入るのを拒否しているくらいに怖がっているんです...」
(ふむ...)
何故か見張りも門番も誰もいない村。精霊が怯えるぐらいのナニカ。
事前情報だけで大いに危険を感じさせてくれる。
やはり敵の本丸はそう一筋縄ではいかないよな。
そうなると次の一手は、
(…危険は承知で村の中に入る)
「そうなりますよね..」
これ以上村の様子は探れず、ミルディア氏族のいる場所を特定できない。得体の知れないナニカの脅威があるが、ミルディアの民族を助けに行くには村の中に入っていくしかない。
「とりあえず俺が様子を見てくる。ミルシャはここに残ってくれても―」
「いえ、そういう訳にはいきません。私もロクローと一緒に行きます。ルエルタを目指していくとなると、あの何かは避けては通れないと思いますので、討伐を視野に入れて向かいましょう」
(…そうだな。お互い気をつけていこう)
「はいっ!」
変な心配をしてしまったようだ。
そうだよな、今までこの大森林を護ってきた護り手なんだもんな。
俺より何倍も強いだろうし、変な気遣いだったよな。
(ミルシャ、そのナニカの場所はわかるか?)
「はい、教えてもらってます」
(先導頼めるか?)
「任せてください!」
(よし、行こう!)
ミルシャを先頭に門から村へと入っていく。
中には住居や畑が大樹を囲うように配置されていて、内容的にはミルディアの村とそう変わらなかったのだが、
(何だ...これ?...不気味だな)
「一体何が起こっているのでしょうか...?」
精霊からの情報通り、人の気配は全く無い。しかし、所々生活感というか...突然人がいなくなってしまった様に物が投げやりに放置されていたりしていた。
(…今考えても仕方ない、目的の方を優先しよう)
「そうですね。後でルエルタ本人を問いただしましょう」
とりあえずは目の前の問題だ。
村がこうなっているのも、十中八九ルエルタの仕業だろうし、後から嫌でもわかる事になるだろう。
◇◇◇◇◇◇
不気味で謎が残る村の中をミルシャの案内で移動する。
ナニカがいるというのは大樹の根本付近らしい。
「始まりの大樹の内部には、祭祀場がありまして。ナニカはその内部へ繋がる扉の前にいるようです」
(そうか...)
姿形のない、実質無敵とも言える精霊に恐怖を与える存在へ段々近づいて来るにつれ、自分の体が少し強張っている様に感じる。緊張...してるよな...。
……もし、焚べる者でもどうにも出来ない様な相手だったら俺には......何ができる?何が残る?
「根本の周辺は壁に囲われていて、中を広場として使っていたり―……ロクロー?」
(………)
「ちょっと、大丈夫ですか?」
(…あぁ、ごめん)
ミルシャに肩を揺すられ、はっと気づく。
そうだ、何をナーバスになっているんだ、まだどうかもわからないのに。
(ちょっと考え事してた、もう大丈夫だから)
「そう..ですか。では、あそこに門がありますよね?あの門の先が大樹の根本の広場になります。ナニカのいる内部への扉もそこにあるので、心していきましょう」
(あぁ、わかった)
ミルシャの指さす方向に、村の外壁と負けず劣らずの高さの門と外壁があった。
懸念を振り払い、門前まで移動する。
「それでは、開けましょうか」
(よし...いいぞ)
「いきますよ、せーのっ!!」
(ふんッ!!)「ふっ!!」
ミルシャと力を合わせて門を開く。
最初はかなりの重さを感じたものの、動き出すと、すんなり開けた。
(ふぅ...よし、ここにナニカが――ッ!?)
「――ッ」
門を開き、広場に足を踏み入れた瞬間、場の空気が変わった。
いる。精霊が恐れた相手はここにいる。
情報で知ってはいたが、今強く実感できた。
正面の大樹に目をやると、その根本には確かに意匠の凝った扉の様なものが見て取れた。
それと同時に、その前を立ち塞がる人影も見えた。
(……アイツか...)
今まで、人の気配など微塵も理解できなかったが、右眼にかかった金髪から木の根が飛び出していて、エルフの特徴である長い耳を持ち、体つきからして女性なのだろう者から強い存在感をひしひしと感じる。
(ミルシャ、いけるか?)
「....いやっ...そんな....」
(…ミルシャ?)
戦闘を前にミルシャへ声をかけると、顔は青ざめ、立つのもままならない程に酷く動揺していた。
(どうした?何かあったか?)
あのエルフの特徴をしたナニカを目にして動揺していると予測し、ミルシャに事情を聞く。
すると、ミルシャはゆっくりと口を開き、悲しみを含んだ言葉を発した。
「アーディ...師匠...」
師匠と書いてせんせいと読みます。
後出しで申し訳ないです。




