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デュラハンが行く!! 〜異世界漫遊記〜  作者: 八嶋ユナ
第一章 クエルタム大森林編
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16話 最良へ向かって

(ありがとう、話してくれて)

「いえ...そんな..」


クエルタム氏族の村へ向かう道中、ミルシャに俺と出会うまでに何があったか事情を尋ねると、ゆっくりとだが話してくれた。

村の一大事に突如としてやって来て、村人達を人質に脅迫し、厄災を鎮める為だという理由でミルシャを生贄にした族長ルエルタ。

偽エルフ達や、無事を約束したミルディア氏族達の誘拐、魔物を従える存在の事を考えると何か怪しい目論見すらも感じれる。


「……ごめんなさい..」

(...え)


知り得た情報を咀嚼していると、ミルシャに謝られてしまった。

何かあったかな?と考えていると、


「あの時私....何もできなくて....婆様がいなくなるのも、護り手の役目を棄てるのも怖くって....アーディ師匠がルエルタへ反抗している時も、私はただただ見ているだけで...」


ミルシャが、か細い声でぽつりぽつりと話す。


「結局ルエルタの甘い言葉に乗って、生贄になることを認めて...。それで、ロクローに助けられた時、無理やり自分を納得させて諦めた事、全部やり直せるんじゃないかって...それで勝手に恩人であるロクローを強引に私の悪足掻きに巻き込ませて...」


ミルシャの弱音から自責の念が感じ取れる。

出会ってからハキハキとして、活気ある様子だったが、どうやら気丈に振る舞っていた様で、心の内では後悔に苛まれていたようだ。


「今まで...隠していてすみませんでした...」

(ミルシャ...)

「軽蔑しますよね..?不都合な事を隠して勝手に自分が招いた結果の尻拭いをさせて...」

(……)


ミルシャは、自分が抱えていた苦悩を吐き出した。

俺はその苦悩を晴らせるなんて到底思えない...が、少なくとも、自分の率直な気持ちは話しておくべきだと思い、ミルシャに向かい合い、語りかける。


(ミルシャ)

「...はい」

(確かに君は、抵抗もできず、ただ相手の口車に乗るしかできなかった)

「...っ、はい..」

(自分の背負う役目も、守りたいと思う人達を守れず、相手の掌の上で転がされてしまった)

「...っぅ...はいっ...」

(そして俺を巻き込み、その後始末を手伝わせようとした)

「...ぅ...っはい..」

(そこで、今、ミルシャに伝えたい事が三つある)

「...ふ...ぅ..はい..」


苦悩を抱え、涙を流している少女に伝えたいこと。


(一つ、君は決して悪くないこと。誰かを守るためにした決断を後悔する必要はない)

「....ぇ..?」

(二つ、ルエルタのクソ野郎に未来は無いこと。俺が一発ぶちのめしてやる)

「...ぇ...え...?」

(そして最後に...)


守りたい者達の為に全てを棄てた少女に、俺が今、一番言ってあげたいこと。


(三つ。俺は絶対にミルシャの味方だということ)

「...っ!」

(ミルシャが、どんなに自分を責めようと、どんな問題を抱えていようと、俺が力になる)

「ロクロー...」

(ミルシャはこうして生きている。まだ終わっちゃいないんだ、最後まで足掻くくらい、普通のことだろ?)

「……」

(それに、言ったよな?最後まできっちり救いきるって。俺で良ければ、いくらでも巻き込んでくれ)

「……」


とりあえず、俺がミルシャに伝えたいことはこれで言えたと思う。


「...なん...で..」


うつむきながら、ミルシャが俺に問いかけてくる。


「何で..私にそんなに優しいんですか..?こんな無謀な事に付き合わせてるのに...」


ミルシャは、自分に向けられた過剰と言える善意に疑問を抱いているようだった。

その問いは深く考えずとも答えにできた。


(さっきも言ったが、救ったからには救いきるっていうのも、目の前で困ってる人をほっとけないっていうのもある。けど俺さ、ミルシャに同志って言われた時、めちゃくちゃ嬉しかったんだよな)

「え...?」

(知らない場所に一人で飛ばされて、彷徨って、心細かったんだ。そんな時、たまたまミルシャと遭遇して、助けて、どう見ても異形と言える俺を頼りにしてくれて、同志とまで言ってくれた。あの時に、俺はこの世界で独りじゃないってすごく救われた)


これは嘘偽りない気持ち。

デュラハンとしてこの世界に来て、魔物やモンスターとして扱われるだろう俺を仲間と言ってくれた事が深く心に沁みた。


「あれは...反故にされないようにと...」

(それでも、あの時確かに俺は救われた。ミルシャにどんな思惑があったとしてもだ。だから俺はミルシャに力を貸す)

「...こんな...自分勝手な私をロクローは許すのですか?」

(もちろん)

「もしかしたら、死んじゃうかもしれないんですよ!?」

(元から死んでるようなもんだし、もし仮に死んだとしても、ミルシャの為に命を賭けるのなら悪くはないかなって)

「―ッ!?」

(だからさ、ミルシャと一緒に俺も足掻かせてくれ。俺はミルディア氏族も君の師匠もこの森も救う為に力を尽くす!まぁ、つい最近まで戦いとは無縁だったけどね)

「ほんとうに...すみません...何から何まで...」

(いいんだよ。さぁ行こうか、一緒にね?)

「っ...はいッ!!」


涙を振り払い、苦悩を越えたミルシャの瞳に覚悟が宿る。

自らが招いてしまった現状を早く挽回しようとしていた時の焦りは消え、この大森林を、守りたい人達を救う者として、元凶へと向き合う。

互いの結束が強まるのを感じて、始まりの大樹へと歩みを進めた。

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