18話 瘴異化
ミルシャが呟いた言葉を反芻する。
アーディ...導き手で、ミルシャの師であり、レベリエム氏族のエルフという事だった筈なのだが、
(あれ...本当にアーディって人なのか..?)
顔半分を隠す金髪を掻き分けて、右眼から飛び出している木の根、所々が樹皮と置き換わっている肌、全身から滲み出る黒い霧。
目の前に佇むそれは、話に聞くアーディという人物に到底思えなかった。
「シッ〉
(何っ!―ミルシャッ!!)
「...あ」
アーディと言われた人物が突如としてその手に持つ細身の剣でミルシャへ鋭い刺突を繰り出す。
(くっ..!)
「きゃっ」
すんでの所で、放心していたミルシャを抱えて真横に飛び、その鋭い刺突を避ける。
(無事か?...ミルシャ、しっかりしろ!)
「―ッ!すみません...もう大丈夫です..」
ミルシャを放心から覚まし、無事を確認する。
さっきまでミルシャのいた場所に目をやってみると、地面に一直線に抉れた跡ができていた。
明らかにミルシャを殺すための攻撃である。
そこで一つ、ある考えが浮かぶ。
(……鑑定、試してみるか)
ミルシャに使用して以来、久々に使う鑑定スキルの使用である。
あの時のミルシャの反応もあって、対人で使うのを控えていたが、今のアーディとされる人物の状態はどう考えても普通じゃない。
ミルシャを狙った攻撃、異様な外見。
その糸口が見つかればと試してみることを決めた。
(よしやってみよう、鑑定!)
刺突を繰り出し、門の外にいたアーディとされる人物へ向かってスキルを使う。
「アァ゙?〉
(できたか―ッ)
鑑定を使用した途端、前に体験したようなスキルが体に浸透していく感覚、スキルのレベルが上がったようだった。
最初の頃の様に、そこらかしこに鑑定をしてた時とは違い、使うのも久々な位だったはずなのにレベルが上がった。何を条件にしてレベルが上がるのかは全く検討つかないが、とりあえず鑑定の結果を見てみる。
アーディ Lv76[瘴異化:進行中]
種族:◆レ#$◆
HP:582 MP:748 SP:367 DF:256 AT:492 AGI:1067(+120)
スキル
瘴気耐性LvMAX 瘴◆#$化 剣術LvMAX 剣技LvMAX 弓術LvMAX 魔力操作LvMAX 風魔術LvMAX 風魔法LvMAX 水魔術LvMAX 水魔法LvMAX 俊敏LvMAX 教導Lv7
EXスキル
精霊の森の導き手
(うっわ...これは...)
鑑定を試した結果、ミルシャの言葉通りアーディという人物だった。
大森林の平和を維持するために戦い続けていただけあって、そのステータスは破格の代物だったのだがそれよりも、
(文字化け..?)
今までの鑑定で見たことが無い、文字化けされた部分があった。
(瘴異化?ってのが関係あるのか?)
名前の横にある、おそらく状態異常だろう瘴異化という文字。
ミルシャなら何かわかるだろうか..?
(ミルシャ、瘴異化って何かわかるか?)
「瘴異化..」
(今、あのアーディって人を鑑定したらそう書かれてたんだ。進行中だって)
「……」
(?)
ミルシャに問いかけてみたが、瘴異化という言葉を聞いて、黙り込んでしまったが、すぐにミルシャは口を開き、説明してくれた。
「ロクロー。瘴異化というのは、人や獣等が瘴気によってその身体を作り変えられる現象です。そしてその殆どがアーディ師匠の様に異形と化します」
(…助けられないのか?)
「......瘴異化から元に戻ったという話は聞いたことがありません。アーディ師匠は...もう..」
ミルシャから瘴異化という現象の概要を聞く。
導き手であるアーディはその瘴異化によって変貌してしまっており、治す手立ても無いらしい。
(ミルシャ...)
「はい...わかっています」
そう言うとミルシャは、静かに深呼吸して、覚悟を決めた言葉を話す。
「師匠がああなってしまったのは、私の責任です。ならば私は護り手として、そのけじめをつけます」
ミルシャの金色の瞳に迷いは一切無かった。
恩師に自らの手で決着をつけるという覚悟を宿していた。
(…俺も手伝うよ)
「すみません、お願いします」
(それじゃ、やろう..!)
「はい..!」
俺は剣を、ミルシャは弓を、今は変わってしまった〝導き手アーディ〟へと向ける。
「アァ゙?ガァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ!!〉
正直勝てるかどうかわからない。
しかし、この大森林を救う為には、乗り越えなければならない事だった。
現在のステータスです
オビト ロクロウ Lv7
種族:デュラハン
HP:74 MP:45 SP:87 DF:62 AT:36 AGI:66(+8)
スキル
鑑定Lv3 瘴気変換 瘴気吸収Lv1 俊敏Lv1 突進 剣術Lv7 魔力操作Lv4 弓術Lv3
EXスキル
焚べる者〈78〉




