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メトゥス  作者: 髪槍夜昼
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26/73

二十六人目


「改めて自己紹介もしておこうか、俺はアングイス。そっちのチビッ子はラーナだよ」


満面の笑みを浮かべながらアングイスは自分と隣にいる少女を紹介した。


「………」


紹介された少女は無口なのか、一言も喋ることなくフェレス達を見ていた。


そんな態度に慣れているのか、アングイスは気にした様子もない。


「僕はフェレス。この村の医者です」


「私はレプスよ」


「フェレスにレプスか。なるほど」


確認するように繰り返しながら、何がおかしいのかアングイスはへらへら笑う。


そのまま機嫌良くラーナの頭に気安く手を乗せ、跳ね除けられていた。


このコンビ、あまり仲がよろしくないようだ。


「と言うかそちらの子は以前会ったことあるんだけどね」


「え? そうかしら?」


突然の言葉にレプスは首を傾げる。


これが初対面だと思っていたが、どうやら違うらしい。


レプスは自分の記憶を振り返る。


「声をかけた訳じゃないから、忘れても無理はないけどね。悲哀ちゃん」


「ッ!」


その呼び名にレプスは目を見開く。


フェレスも微かに警戒を見せ、アングイスへ目を向けた。


その不穏な様子に気付いたのか、アングイスは慌てて両手を上げた。


「待って待って! 馴れ馴れしく呼んだのは謝るよ!」


的外れな謝罪にレプスは違う意味で眉を動かす。


「そこじゃないわよ。どうしてアンタ、私のことを…」


「あ、そこ? それなら薄々感付いているんじゃないかな?」


アングイスはフェレスを一瞥すると、レプスへ顔を向ける。


「俺は『三人目』のアニマ寄生者。君らのお仲間さ」


気安そうに両手を広げ、アングイスは答えた。


自身もまた、アニマ寄生者の一人であると。


「…騎士団関係者には見えなかったので、そうじゃないかと思ってましたよ」


警戒は解かないままフェレスは言う。


それから一度も口を開かないラーナの方を向いた。


「それで、まさかその子が二人目とか言わないですよね?」


だとしたら存命中のアニマ寄生者が全て揃ったことになってしまう。


そのなると、流石に話が出来過ぎている。


「違う違う。残念ながらこの子はルーベルで拾った孤児だよ。ルーベルのことはもう聞いた?」


「何のこと?」


「あらら、流石に西は情報が流れるのは遅いようだね。ルーベルが壊滅的な被害を受けたって話。噂じゃ獣の類に襲われたらしいけど」


西の果てにある田舎、カエルレウスにその噂は流れてきてなかったので二人は目を見開いて驚いた。


ルーベルと言えば、アルブスの次に発展した地方だった筈だ。


そのルーベルが壊滅状態。


それは二人に十年前の災厄を思い起こさせる。


「酷い有様だったよ。生き残ったこの子も、ショックから言葉が出ないんだ」


声を一切出せないラーナの頭に再びアングイスは手を乗せた。


「………」


相変わらずラーナは何も言わないが、それが一層憐れに見えた。


レプスよりも年下に見える幼い年齢で声を奪われるのは、どれほどの苦痛だろうか。


「俺はこの災厄の原因を探る仲間集めをしているんだ。君らもそうなんだろ? ここには沢山仲間がいるみたいだし」


「もうムース達と会ったんですか?」


「いや、直接会ったことはないけど近くにいることは分かるんだよ。今度見せてあげるけど、それが俺の能力でね」


アングイスは靡く黒マフラーを弄びながら余所を向いた。


その方角は丁度、フェレスの家がある方角である。


そちらにいるムースとウルペースを探知しているのだろうか。


「それにしても、一人二人三人…俺も合わせると四人も揃っている訳か。ここは凄い所だね」


「え? 四人?」


驚いたようなアングイスの言葉に、レプスは首を傾げた。


指を折りながら口を開く。


「五人じゃないの? だって、ムースとウルペース、私にアングイスにフェレス…」


「…何だって?」


フェレスの名前が出た途端、アングイスの顔色が変わった。


ずっと浮かべていた気安げな笑みを止め、真剣な顔でフェレスを見つめる。


フェレスは勝手に秘密を暴露された為か、幾分機嫌悪そうな表情だ。


「アニマ寄生者は六人で、一人は死んで現在五人の筈でしょ?」


「…僕はどういう訳か、その序列から外れた能力者なんですよ。未だ騎士団に発見されていないだけかもしれませんけど」


「…それは、不思議だね。どんな能力なの?」


「君が教えてくれたら教えてあげますよ」


「それもそうだね。なら、お披露目会をいつかしようね!」


年齢はフェレスより上に見えるのに、かなり子供っぽくアングイスは笑った。


アングイスもまた変人奇人が多いアニマ寄生者の例を外れないようだ。


「それで、俺の仲間になってくれない? それとも俺が仲間に入ろうか?」


「…ま、まあ、元からそのつもりだったんだけど」


「何その煮え切らない態度」


戸惑うレプスに逆に戸惑うアングイス。


ムースにウルペースと、どちらも協力を得る為に一悶着あったものだから素直に安心できない。


まさか、向こうからやってきた上に無条件で協力を得られるなど夢にも思わなかったのだ。


「…取り敢えず家へ向かいましょう。いつまでも雨の中にいると風邪引きますし」


そう言うと、フェレスは足を進めた。

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