二十二人目
夜が明けて、四人は集まっていた。
話題は昨夜の夢で判明した四人の共通点。
即ち、アニマ寄生者は皆アルブス出身だったと言うこと。
「…どう考えても偶然じゃねえよな。七人の寄生者の内、四人が同郷ってのは」
「アニマの起源とアルブスは関係があるってこと?」
ムースに言いながらレプスは自分の手を見つめる。
二年前から発症した悲哀のアニマ。
一人でどれだけ悩んでも知ることが出来なかった、その『ルーツ』がアルブスに関係している。
「…僕らはアルブスに住んでいた頃に『何か』を受けた。それが能力の正体と言うことですか」
人の心を具現化する能力。
その能力を植え付けられたアルブスの住人。
それがアニマ寄生者の正体。
『アニマ』に寄生された元人間。
「…まて、それだとおかしい。俺は五年前にニゲルで寄生されたんだぞ?」
難しい顔をしながらムースが言う。
ムースは生まれこそアルブスだが、十年前以降はニゲルに移り住んでいた。
ムースがアニマを発症したのは五年前。
アルブスに暮らしていた頃は何の能力も持っていなかった。
「例えば、病原菌に感染してしまったとして、すぐに病気が発症すると思いますか?」
医者らしい顔をして、フェレスは得意げに言った。
「どういう意味だ?」
「病気には『潜伏期間』と言う物があります。病原菌に感染したとしても身体に害を成すまでには時間がかかる物なんですよ」
そして、それには個人差がある。
同じウィルスに感染したとしても、別々の人間では症状に違いが出るように、
すぐに発症する者と、数年かかる者がいるように、
アルブスでアニマに寄生されても、それが『能力』と言う形で発症するまでには個人差がある。
「…人を超人に変える病気か。そんな物、自然界に存在するのか?」
「少なくとも、万人か罹る病気ではないことは確かですね」
誰でも感染する病気なら寄生者は七人では済まないだろう。
この奇病に感染したのはたった七人。
しかも、選ばれたかのように七人中四人がアルブス出身者。
もし、『誰か』が人為的にアニマを寄生させたのだとしたら…
「…アルブスにいる『誰か』、か」
「…アニマ寄生者に執着している者達よね」
「…それだけ大きなことをしても自由が効く組織ですか」
三人の視線が一つに集まる。
人為的にアニマ寄生者を生み出したと予想される者達、
話をぼんやりと聞いていたウルペースへと、
「………へ? まさか、私ぃ!?」
「君と言うよりは、君の所属する騎士団ですが」
アニマ寄生者を狙い続けるサンクトゥス騎士団。
化物退治と言う建前だが、もしそれが自作自演だったら?
自らアニマ寄生者を生み出し、それを手中に収めようと動いているのだとしたら?
その可能性は十分に考えられる。
事実、レプスは飼い殺しにされかけ、ウルペースは部下として扱われていた。
「んんー? 流石に騎士団にそれだけの隠し玉はないと思うけどぉ、だってそんなことが出来るなら騎士を全員寄生者に変えればいいじゃない」
「…それもそうよね」
ウルペースの意見をレプスは肯定する。
レプスを追う騎士の目には、確かな恐怖があった。
あの目は人間が異端を恐れる目だ。
アニマを騎士団が自由に操れるのなら、あんな目をしてレプスを追いかけたりはしない。
「それじゃあ、騎士団は無関係?」
「結局何も分かんねえってことが分かっただけじゃねえか…」
疲れたようにレプスとムースは顔を見合わさせた。
そんな二人の傍でフェレスは無言で考え込む。
「………」
(アニマの発端はアルブス。そして、アルブスに存在する大きな組織は『騎士団』)
それは間違いない。
分からないことばかりだが、その二点だけは事実だ。
(騎士団はアニマ寄生者を持て余している。だが、化物扱いする一方でその能力を手中に収めようと躍起になっている)
騎士団はアニマ寄生者を自在に生み出すことは出来ない。
しかし、それだけでは騎士団が無関係と決めつける根拠にならない。
完全に無関係と判断するには、アニマに詳しすぎる。
騎士団について、もっと知る必要があるだろう。




