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溺愛している地味な妹を磨こうとしたら、何故か学園の宝石達に絡まれてしまった件  作者: かわいさん


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第10話 猫目石と原石

 猫宮を必死に追いかける。


 見失いこそしないが、追いつくことができなかった。生徒の数が多くて思うように身動きが取れない。

 

「っ、早く追い付かないと」


 猫宮は迷わず中庭に向かった。こちらのことは調べてあるらしい。


 まずい、本当にまずい――


 あの瑠璃がいきなり勝負を挑まれたらどうなるだろう。きっとガクガクブルブルと震え、変な声を出すに違いない。


 しかも猫宮の登場で周囲から注目を集めるだろうから、その情けない姿を多くの生徒に披露するハメになる。


 瑠璃を晒しものにするわけにはいかない。


 人の群れを抜けて中庭に到着すると、いつものベンチに白銀と瑠璃の姿があった。他の生徒の姿は見えない。


「っ、猫宮――」

「……」

 

 その猫宮だが、何故か少し離れた場所で立ち止まっていた。その表情はさっきまでと異なり、どこか惚けている様子であった。


 何があった?


 視界を追っていくと、白銀が瑠璃の髪の毛に触れていた。


「ホントに可愛い顔してるね。前髪は絶対カットして顔をよく見せないとダメだね。それから、コンタクトに変えるのも絶対だよ。それだけでも十分話題になる。スタイルのほうは問題ないけど、猫背はどうにかしないと」


 どうやら容姿面を改めて確認しているようだ。


 他の生徒がいないので声が風に乗ってこっちにまで響く。


 素顔を見られた瑠璃は「はわわっ」と可愛らしい声を出している。


「反応も可愛い。これは夢原君が必死になるのも無理ないね。最初はシスコンだと思ったけど、これは納得だよ。瑠璃ちゃんみたいな可愛い妹がいたら絶対輝かせたくなるもん。このまま埋もれるのはホントに勿体ないよ」

 

 ほう、白銀はよくわかっているじゃないか。


 シスコンは事実なので訂正しないが、瑠璃の可愛さに気付いてくれるのであれば別に何を言われても気にはしない。

  

 瑠璃は可愛い。


 しかも可愛いだけじゃない。何というか、守ってあげたくなるオーラが全身から出ているのだ。


「あ、あの――」

「急に無理いってゴメンね。瑠璃ちゃんの顔が見たくなって」


 白銀が手を離す。瑠璃は慌てていつもの地味子に戻る。

 

「い、いえ」

「でも、素顔を見た後だと本当に勿体ないって感じるわ」

「……」


 白銀は優しい顔で微笑む。


 その光景に俺の心はほっこりした。


 まる女神姉妹の憩いではないか。瑠璃のことをしっかり可愛がってくれている白銀も俺の中で評価急上昇だ。


「……」

「猫宮?」


 意気揚々と飛び出した猫宮は微動だにせず、ジッとその光景を眺めていた。目は完全にロックオン状態だ。


 まずいな。


 姉妹のように仲良くしている場面だ。白銀に惚れている猫宮がこの場面を見たらどうだ。嫉妬に狂って瑠璃に何かするかもしれな――


「と、尊い!」


 へっ?


「えっ、ちょっと待って。美少女がイチャイチャしてる場面とかマジで尊いんだけど。というか、知らない子がいるんだけど」


 猫宮は震え声で口にする。


 その後、何かに気付いたように勢いよく振り返った。急にこっちを向いたものだから驚いた。


「夢原君っ!」

「な、何だよ」

「あの可愛い子は何だい。もしかしてだけど、あれが夢原瑠璃君の本来の姿だったりするのかい?」


 可愛い子――


 その一言は俺の意識を大きく変化させた。


「お、おう。世界一可愛いあの少女は俺の自慢の妹だ!」

「遠くから見た感じだと地味な子だから完全にノーマークだったよ。まさか隠れてた顔があのクオリティだったとは!」


 猫宮は再び瑠璃に視線を戻す。


「確かにあの可愛さなら世界一と言われても納得だ!」

「うむ」

「モジモジしてる姿が凄い何かこう、物凄くそそる!」

「うむうむ」

「遠目からなのに守ってあげたくなるオーラを感じる。庇護欲を駆り立てる魔性を秘めているようだ。こう、上からぎゅっと抱きしめたくなったよ!」

「うむうむうむ」

 

 猫宮と俺の感覚は似ているのかもしれないな。


「素顔を見た瞬間に全身に電流が走った」

「……」


 どうやら瑠璃の可愛さに気付いてしまったらしい。


 素晴らしいじゃないか。


 正直、さっきまではモデルみたいな外見だけの痛い奴だと思っていたよ。しかしさすがは宝石の称号を所持するだけある。瑠璃の可愛さに気付けるのは見事だ。洞察力を自慢していたが、確かな目を持っているようだ。


 まあ、一番凄いのは宝石姫にここまで言わせる瑠璃だけど。


「僕としたことが失態だった。顔を隠してるだけでその事実に気付けないとは。それだけのことで判断を誤るとは我ながら浅かった。まさか運命の相手は虹海ではなく、彼女だったとはね」

「……?」


 急にどうしたよ。


「夢原君!」

「どうした」

「僕に瑠璃君を紹介してくれないかな?」

「……えっ」


 困惑した。


 先ほどの白銀に対する気持ちを聞いたからだ。それに今の猫宮の顔は少しばかり恍惚の笑みで気持ち悪かった。目だって血走っているし。


「ああ、変な勘違いをしないでくれ。お義兄さん」

「……勘違いはしていないと思うが」

 

 うん?

 お義兄さん?


「紹介してくれと言ったけど、まずは僕の目的を言おう。ここで言葉を濁すと面倒なことになるから、はっきり宣言しておく。君の妹である夢原瑠璃君がとても好みだ。一目で恋に落ちた。彼女と結婚したい!」

「……」


 ダメに決まってるだろ。


 こいつは何を言ってやがる。大体、さっきまで白銀に夢中だっただろ。


「白銀はいいのか?」

「……良くはない。虹海が可愛いのは間違いないからね」

「はぁ?」

「しかし僕は運命の相手に出会ってしまった。こればかりは理屈じゃないんだ」


 いやいや、勝手に運命の相手にするな。

 

「瑠璃を紹介するのはダメだ」

「っ、どうしてだい?」

「最愛の妹だからな。それに、瑠璃と付き合うなら厳しい審査が必要だ」

「……内容は?」

「瑠璃を自分のモノにしたいなら戦って俺を倒してからにしろ!」


 猫宮は驚愕した後に、笑った。


「さっきと逆になったね」

「俺を倒せない弱者など論外だ。その程度の雑魚に瑠璃をくれてやるわけにはいかない! 守り切れないだろうからな!」

「気持ちは痛いほどわかる。僕も同じだったからね」


 俺の言葉に猫宮が同調する。


「でも、僕は欲望に忠実だ。どんな障害があったとしても必ず乗り越えてみせる。それが愛に生きるということだから!」

「いいだろう。ならば俺の屍を超えて――」


 などと頭の悪いやり取りをしていると。


「お兄ちゃん?」

「彩夢!?」


 白熱して声が大きくなっていたらしく、二人に見つかった。

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