第04話【拡張】
日に日に部室にある備品が増えている気がする。
ホットプレートと炊飯器はこの間怜が持ち込んでいたが、さらにオーブンレンジやトースターの類まで、いつの間にか新品のラックと共に増えていた。
「なんか圧迫感を感じるな」
「狭く感じるっすね」
元々そこまで広い部屋ではない。
これだけの家電や食器が並ぶと、さすがに狭い。
怜は少ないスペースで色々工夫して配置してはいるが、元の広さばかりはどうにもならないらしい。
「今日は春野菜と鶏肉をいただいてきました♪」
いつも通りの弾むような声で、怜が嬉しそうに調理の準備を整えていく。
小さなリュックから次々と新しい道具を取り出す。まだ増えるのか……。
「今度は何を作るつもりだ」
「天ぷらにしようかと♪」
「……すごいな」
文芸部の文化レベルの進歩はすさまじい。
この間まで飯といえばカップ麺かレトルト、もしくはたまに理心が持ち込む学食の飯くらいだったのに、天ぷらと来たか。
「最高だな」
「よかった♪」
机には、到底あの小さなリュックに入っていたとは思えない量の家電と食材が並んでいく。
IH卓上コンロ。
温度調節機能付きの鍋。
未開封の植物油。
菜の花、たけのこ、たらの芽、ふきのとう、人参、玉ねぎ。
おまけにえびやいかなどの魚介。さらにしいたけ、えのき、しめじまである。
多いな……。
一回あのリュックの中身を覗いてみたい。どこぞの猫型ロボットのポケットみたいに、際限なく詰め込める新技術でも俺の知らない間に発明されたんだろうか。
あの中なら洗濯物くらい干せるのかもしれん。
「揚げ物っすか」
読書中の理心が、ようやく目の前の異様さに気づいたらしい。
「はい♪ すぐお作りしますので少々お待ちください♪」
怜は使い捨て手袋を取り出し、手と手袋の両方に消毒スプレーを散布してから食材の切り分けを始めた。
色々と行き届いた配慮がすごい。
「種類豊富っす」
卓上に並んだ食材を、理心がじろじろと観察する。
「先生はお飲みになられるので、色んな具を楽しめた方がいいかなと思いまして♪」
気が利きすぎている。
「理心さんには天丼をお出ししようかと思っているんですが、嫌いな食べ物とかありますか?」
「ここにあるのなら大丈夫っす」
「よかった♪」
配慮がすごい。
てきぱきと食材を切り分けていく。その間に、鍋に入れた油の温度を上げておくのも忘れない。
なんとも気の利くポニテ娘である。




