第94話 出発、リョウ&フレンズ大軍団
ゼクウがピューンと空に去っていった。
奴は独自に動いて、魔人どもと戦うらしい。
悪食王相手は別に加勢は不要だが、本当にマロングラーセが出てきたら手を借りたい所だなあ。
いやあ、出ないといいな。
トーカーの一族の杞憂であるのが理想。
外に出てくると、もう明け方だった。
ゼクウと一晩中軍議みたいなことをしてたようだな。
「カグツチ!」
「ここに」
「次の夕暮れに出発する。それを通達しておいてくれ」
「かしこまりました」
カグツチが空気に溶けるように消えていった。
自己演出するやつだ。
俺はのんびりと夜明けを眺めた後、朝の光を浴びながらサンドパレスをぶらついた。
拡大された城壁は、既にファラオシティ全土をも飲み込んでいる。
あちらこちらに緑があり、この都市の中は緑あふれる空間だな。
パパール率いる戦象軍団もここで養えているらしい。
砂漠の緑化が成功すると、象たちは外に飛び出していくことができるな。
キョンシーやマミーたちがわいわいとあちこちを歩き回り、商店街が店じまいしている。
そう、朝になると店じまいするのだ。
アンデッドが多いうちの軍団は基本夜型なので、夜に商店が開き、昼は店が閉まるのだ。
こうして、シャッター街になった商店を歩き回る。
ここを運営しているのは、マミー。
買いに来るのは、マミーと吸血鬼村の面々。
魔人である以上、外界とは没交渉な我が国だ。
内需オンリーで回すしか無いよな。
だが、これも将来的には解決する予定だ。
ここから遊牧民帝国、湖から西方に掛けてを魔人の領域にするからな。
ターカス帝国までを吸収できたら御の字としよう。
西側の国々は取り戻し、人間たちに渡してもいい。
いい感じで棲み分けができるだろう。
つまりだ。
魔人たちが安心して住める土地ができる。
これで、魔人間の流通網が生じる余地が生まれるわけだ。
うんうん、この未来のためにも、俺は今起きている面倒くさい案件を片付けておかねばな。
「あらリョウ様。話し合いは終わりましたの? あの恐ろしい男が飛んでいったのが見えましたけれど」
「ファルメラ様待っててくれたんですか。いやあ、俺が今後やるべき道が見えてきましたよ。魔人の将来を考えてですね。それから人間との棲み分けを行うという方向で話をまとめました」
「なるほど……。つまり、魔人は魔人で、人間は人間でお互いの領域に籠って数を増やす……ということですのね? そして、増えきったところで……」
ファルメラが両手をパン、と合わせた。
「お察しの通りで」
「やっぱり。あなたにとって、世界の繁栄も何もかも、最後は自分が楽しむための余興なのでしょう?」
「そういうことです。人生というのは死ぬまでの暇つぶしですから。それに俺達魔人は子を生み増えていくものばかりではない。そして睡眠も食事もいらず、永遠に生きる者もいる。退屈で退屈で仕方ない」
俺の暇つぶしの過程として、魔人や人間が繁栄するのは一向に構わない。
むしろ大いに増えて、さらには戦う術をガンガンに伸ばしてくれた方がありがたい。
それだけ、将来巻き起こる大戦争がエキサイティングになるからだ。
それこそがやがてくる、魔王と勇者の戦いになることだろう。
いや、実に楽しみだ。
「悪い顔をなさってますわよ? 魔人たちはあなたを信ずべき王だと思ってついてくるのですから、最後までそれを演じて下さいませ」
「はいはい。努力しますよ」
こうして、ファルメラと並んでのんびりと都市を歩き回った。
邪悪粒子砲はもうすぐ外観が完成する。
中身はこれからだが、それにしたってサンドパレスの象徴となるようなオブジェとしての存在感がある。
本来は俺の居城であるはずの塔は、この国に貴重な日陰を作っている。
眠りも食事もしないと、住まいがある意味がなくなるんだな。
これは計算外だった。
旅をしていないと、退屈で仕方がない。
「いやあ……早くその時が来ないかなあ」
無双している間に昼が終わり、夕方になり、そして夜になった。
本日からしばらく、商店街はお休みだ。
あちこちの家や隙間や、はたまた塔から魔人たちが次々に集まってくる。
あ、今は塔が宿みたいになってて、そこに遊牧民帝国から来たキョンシーが宿泊してたのか!
次から次に出てくるなあ。
一万人くらいいたんだっけ?
あとはほとんどマミー。
吸血鬼村の人々はしばらくサンドパレスで待機していて、決戦時にアニタが呼ぶことになっている。
キョンシー軍団を率いるのはオトハ将軍。
彼女がドラゴンゾンビに乗り、選りすぐりのキョンシーを連れて先遣隊となる。
さらには、大量のワイバーンゾンビ、ゾンビホースを駆り、機動力も抜群だ。
続いてマミー軍団を率いるのはヘルガーディアン。
ファラオシティの技術を用いて、大量のソーラーカー軍団を結成した。
なんかやたらとトゲが生えてたり、操縦席むき出しだったり、火炎放射器が装備されてたり、後部には捕虜を貼り付けにする十字架が立てられたりしてない?
凄く……凄く世紀末だ。
そして俺。
ソーラーカー、光纏うヒロピン号に俺とファルメラとアニタ。
あとラッシュが乗り込む。
今回、大型のキャリアビークルを用意したので、ここにカグツチを乗せていくつもりだ。
途中でクローバーも拾うぞ。
パパールは戦象軍団と遊撃隊をしながら、森を突っ切っていい感じのところで合流。
こんな感じで総攻撃行ってみよう!
「では諸君!」
俺は土から拡声器を作り上げて、言葉を発した。
「時は満ちた! 西方をいい感じで征服し、大魔王の力を使って仮初の魔王ライフを謳歌している連中をわからせ! 我ら魔人のための王土を築き上げる! これはそのための遠征である!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
軍団が大いに盛り上がった。
「この軍団が向かうための道は俺が作る! そして魔人の未来は俺が切り開く! 黙って俺についてこい!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
軍団のボルテージは今、最高潮!
カグツチがなんか感動している。
「これは楽しいことになりそうだねー!!」
『うおー、なんだか盛り上がってきましたぞー!』
「ウボアー!」
アニタとラッシュとヘッドレスもウキウキだ。
なお、俺の内心を知っているファルメラは、そんな事をおくびにも出さないのだった。
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