第93話 勇者(?)が来たりてお話す
「そのゼクウはここにいるのだった」
「うわーっ」
いきなり横からゼクウが骨付き肉をむしゃむしゃ食べながら現れたので、俺は腰を抜かすほど驚いた。
「なんでいるんだよ」
「そりゃあ、このファラオマンがそのうちリョウが来るから待っててくれって頼むから」
「そうかあ。それじゃ仕方ないかあ。ローデスたちは? カレンは仲間にした?」
「みんな一旦寺院に戻った。カレンは仲間になったぞ。教えてくれてありがとうな。お前への復讐に燃えてた」
「いいじゃんいいじゃん」
いい感じで勇者パーティの仲間集めも進んでいるようだ。
「勇者であるお前、ゼクウ以外はいい感じなんだよな……」
「その話だがリョウよ。俺は恐らく勇者ではない……。いや、勇者みたいなものではあるのだが、お前にカウンターをするために呼ばれた勇者ではないっぽい」
「なにっ」
ここで明かされる新事実!
「なんでそんなことが分かったんだ」
立ち話もなんなので、ジェプティスが作ってくれた金色のソファに腰掛けて駄弁る。
そして横を見たら、ジェプティスがいたので納得した。
「予言かー」
『はい。私は今や、全世界の因子を用いて計算装置とする能力を有しています。これによってもたさられる計算は予言同様の正確な未来予測を可能にします。魔王オルトファースの再来あり。これは魔人の世界と人間の世界をそれぞれ統一し、二分する契機とならん。異界より力あるものの召喚あり。これは世界に残された大魔王最後の因子を打ち消すためにあり』
「ははあ、なるほど」
『リョウ殿がトーカーと遭遇したことで、予言の内容がこのように詳らかになりました。一つ一つの予言が達成されることで、それによって発生する未来が明らかになり、予言に加わります』
「ということで、俺はいざというところでお前に手を貸すためにここにいることになった」
「なるほどだなあ。いきなり出てきた時はたまげたが、話を聞けば納得しかない。つまり俺の登場を境目として、人類同士の戦争は終わる?」
『終わります。それどころではない巨大な脅威、魔王オルトファースが出現しますので』
「なるほどー。で、俺によって魔人全てが統一される?」
『統一されます。リョウ殿は己に逆らい身勝手をする魔人を許しませんので』
「全くそのとおりだなあ。これから軍団を組織して、悪食王と海賊王をすりつぶすつもりだし。こいつらが消えたら、魔人どもの中にはまともに俺に抗える奴は消えるだろう。で、本命はこの二人の魔人に力を与えたマロングラーセだ」
『はい。リョウ殿の望みの通り、予言が発展しました。ただ……まだ、マロングラーセを倒した先の予言が出てきません。勇者との決着をつけるのか、はたまた……』
「ふんふん」
肉を食べ終わったゼクウが、お掃除ロボに骨を手渡した後、顎を撫でた。
「多分、今の代じゃお前は倒されないんじゃないか?」
「お? それはどういうことだ?」
「ギフト持ちってのがこの世界に生まれてくる、勇者の素質を持った人間なんだろう? 多分だけど。ローデスたち以外にもまだいそうなんだよ。そして今、うちは男女が二人ずつ……。純愛が生まれそうだとは思わんか」
「キモいなー」
俺はしみじみ呟いた。
このロケットカラテの男、実に気持ち悪い。
俺に評されて、こいつはニヤリと笑うのだ。
「俺はより多くのカップリングを作る。そして、ギフト持ち同士の子から生まれる才能がある子孫が力を高め、人間たちは力を合わせ、お前に対抗する勢力になる」
「なるほどー! あれか。世代をどんどん重ねて準備を整えていき、俺を倒すというわけか! いいんじゃないの、いいんじゃないの。そういうシチュ大好き」
「そのためには、今ここで人間たちが総攻撃を仕掛けてお前に叩き潰されたら何もかもおしまいなわけだ」
「確かになあ! こちらも急ピッチで戦力を整えたが、この大陸だと今くらいが頭打ちな気がしててな。内政に力を入れたいなと思ってきてるところなんだ。人間が滅びてしまったら、これはこれで張り合いがない。だが、人間が弱いくせにあまりにも馬鹿な現状だと、ちょっと触れたら滅びてしまう」
「そういうことだ。なので俺は俺で人間を鍛える。そしてたくさんの純愛を作り上げる。お前はお前で、魔人をまとめて統率する。世界地図上で言うとだな。ジェプティスさん頼む」
『了解しました。表示します』
俺達の足元に、世界地図が出現した。
ほうほう、俺達が今までいたところは大陸中央と思っていたが……イチマンジャク山脈を超えたところにも都市が?
そのさらに向こうには、南国って感じの島々が点在している。
「こっちの南の地域を人間の領域、こちらの北の地域を魔人の領域として分けたい。どうだ?」
「あー、いいんじゃないか。今時点で、ただでさえ世界が広くて持て余してるんだ。うちの魔人は数が多そうだが、実のところ全員足しても十万人足らずだ。この世界全てを埋め尽くすほどじゃない。そうだそうだ。魔人も増やしていかないといけないだろう、これは」
「そういうことだ。人間は人口を回復させる。そのために何が必要か? 愛だな。魔人も数を増やして支配地をきちんと管理する。俺は魔人の繁殖に興味がないから知らないんだが、細胞分裂するのか?」
「知らん分野には適当なやつだな……。まあ俺もよく知らんが。うんうん、それだな。よし、その方針で行こう。で……ゼクウは俺達の悪食王退治に手を貸す、でいいのか?」
「いいぞ。本命は大魔王だろう。リョウ、お前を残しておいても世界は滅びない。お前は話ができる相手だし、自分なりの趣味と打算で動いている。だがジェプティスさんの話を聞くと、マロングラーセは駄目なやつだ。何もかもを、搦め手を使って滅ぼすことしか考えていない。こりゃあいかん。世界から純愛が消えてしまう」
おっ、ゼクウが怒りを燃やした!
と思ったら、一瞬だけロケットが展開してゼクウを包み込んだ。
なんかメタルヒーローみたいになったな!?
そしてすぐ戻った。
そっかー。
それがお前の本当の力かあ。
「では、そういうことで……魔王・勇者連合結成だな。マロングラーセがいるかどうかの真実、そしていたら全力で排除! これを最終目的とするぞ!」
「よーし! いっちょやってやるか!」
話がまとまったのだった。
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