第92話 ようこそサンドパレスへ
俺が連れてきたハンドレッツを、リョウ&フレンズ軍の仲間は盛大に迎えた。
まあ、俺が帰ってきたのを祝うついでみたいなもんだが。
それでも、みんなおおいに喜んでいるな。
新しい同志が増えるのだ。
我軍はめちゃくちゃな種類の魔人たちの集まりで構成されている。
ファールディアでもっとも多様性のある場所だと自負しているぞ。
「ではハンドレッツたちよ。観光行ってらっしゃい。君等、睡眠も食事も不要になってるからね。朝と昼と夕方と夜で、サンドパレスは全く違った表情を見せるぞ。存分に楽しんでもらいたい」
ハンドレッツは俺に敬礼した後、出迎えに来た吸血鬼村の面々に案内されて散っていった。
どちらもヴァンパイアではあるからなあ。
なお、強さで言うともちろん。俺の肝いりであるハンドレッツの方が上なのだ。
だが、リョウ&フレンズ軍は関係性重視。
強さが全てでは無いからね。
「お待ちしておりましたリョウ様」
「おおカグツチ。俺の意図することは、多分ジェプティスが読んでくれてない?」
「はっ、予言されていますな。リョウ様のご帰還を待ち、いつでも出撃できるよう、リョウ&フレンズ軍の準備は整っております」
「いいね!」
自分のこととなると傲慢で慢心するバルログだが、その一方でカグツチは俺の忠実な片腕だ。
俺の命令において慢心するということはない。
「どんな感じ?」
「遊牧民帝国より呼び寄せた武装キョンシー大隊と、マミー師団が待機しております」
「バルログは?」
「あの三馬鹿めが五十人も連れて行ってしまったので、帰ってきた者も合わせて三十人ほどでしょうか。全く、情けない……。この我が出ていれば」
「まあ、悪食王以外には全然勝てただろうな」
「師父! 私が武装キョンシー大隊を率いて参戦します!」
「オトハ将軍! これは心強い。うちも、俺直轄のハンドレッツという親衛隊が生まれてな。さらに、象のパパールも連れて行こう。ほぼリョウ&フレンズ軍のフルスペックだぞ。海からはシンカイと水魔の軍勢だ」
海賊王側も同時進行で攻めちゃおう。
面白くなって参りました。
なお、この軍勢確保のために邪悪粒子砲の仕上げ作業は一次中断。
それどころじゃないからね。
悪食王を放っておいたら、ろくなことにならない予感がするのだ。
あいつが使ってるマロングラーセの一部とやらが、本物になってしまう可能性だってある。
「だよなあトーカー」
『はい、その通りです』
「うわっ、なんですかなこやつは」
「師父が変なのを連れてきていますね」
「リョウ様ったら、調子に乗ってまたあたらしい部下を増やしたのですわ。ただ、彼はマロングラーセに関する知識を口にするしかできない存在ですけれども」
そういうことだ。
パスティアンの枢機卿家が有していた、魔王マロングラーせに関する知識群と考察。
これを全て俺のものとするための部下なわけだ。
『大魔王マロングラーセは、かつての人間たちの世界を破壊するため、己の身を幾つにも分けたと言われています。それぞれが意思を持ち、人間たちの中に入り込み、同族間での対立の激化、そして戦を引き起こしました。同時に、戦いに加わらぬ国々には強烈かつ潔癖な規範をもたらし、彼らを自縄自縛に。社会活動を制限して緩慢に滅ぼしていきました。世界は争いの中と、平和の中、二極化しながらともに消えゆくことになったのだと言われています。これはパスティアンが有する資料にも記されています』
「な? 使えるだろ」
「我は人間の歴史などどうでもいいのですがな。だが……バルログとしての本能に任せていては、この言い伝えの中にある、マロングラーセが己の身を分けたという言葉すら聞き逃していたことでしょう」
おお、流石カグツチ。
ちょっと成長しているな。
「そういうことだ。奴は意思を持って己を分身させて、その分身が世界を惑わせて滅ぼした。ってことはだ。マロングラーセがその一部を切り離して太陽の大海に沈め、それを悪食王と海賊王が見つけ出して力を得たというのは……」
そこに金色の骸骨が走ってきた。
『マロングラーセの復活ですかな!? 神様ーっ!!』
「ウボアー!」
「そういうことだ、ラッシュ!! ヘッドレス!! 留守番ご苦労!」
ラッシュの頭をぺちぺちやり、ヘッドレスとハイタッチなどした。
『そう言えば神様。わしらがサンドパレスにこもり、建設と緑化作業に勤しんでおりましたら、人間どもが一度仕掛けてきましてな』
「なんだって。思ったより対応が早いな」
『戦闘にロケットを背負った男と、少年少女たちがいたのです。あのまま攻め込まれていたら危ういところでしたな! わしらは籠城し、城門にてジェプティス殿が彼らと交渉しました』
「ほう、ジェプティスが!」
『詳しい話は御本人からどうぞですぞ。こちらですぞ』
ラッシュが俺をこの場から連れて行く形になったのだが、カグツチもオトハも全く文句はないらしい。
ラッシュめ、彼らの信頼を掴んだな?
俺はファラオシティに入った。
その中心にあるタワーで、ジェプティスと話す。
「勇者と交渉したそうじゃないか。どうやったんだ?」
『その前に、お帰りなさいリョウ殿。予言が可能な身とは言っても、西方の地は予測が乱れるようになっています。心配していました』
「おっと、ただいま。それで……どうだった?」
『マロングラーセの復活。私が予測した一つの結果を彼らにお話しました。その結果……。勇者と目される男、ゼクウの協力を引き出しました』
「な、なんだってー!!」
とんでもない話になっているじゃないか!
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