第9話 街が再生する! 人は死ぬ!
「す……すごい数の人が来るよ! どうするの神様!?」
「ああ……。派手に暴れすぎたようですね。これでは逃げることもままなりません……」
アニタが慌て、ファルメラが青ざめている。
なに、せっかくリサイクルしたヒロインたちを殺させるようなことはしない。
アニタが村で死んだのは、あれは俺が不慣れだったせいである。
楽しめるヒロピン(ヒロインピンチ)と、こっちの不手際から起こるピンチは別物だからな。
「アニタ、ここからは街を再生していくぞ。シエスタの街を蘇らせよう!」
「えっ、本当!? 神様、そんなことができるの!?」
「もちろん。行くぞ。リサイクル!」
押し寄せてくるカザン軍の前に姿を見せる俺。
力を使うと、彼らが走ってきていた石畳が次々に元通りになっていく。
剥がれていた石が、砕かれていた石が、どこからか戻ってきて元通りにはまるのだ。
あるいは再生して元通りになる。
ちょうどそこを歩いていた兵士を巻き込んで。
「ウグワーッ!?」「石が飛んできて同僚の頭が砕かれた!?」「ウグワーッ! 足が! 足が石に飲み込まれた!」「なんだ!? なんだーっ!?」
「そおら、リサイクル! リサイクルだ! 破壊された街を、エコに再生させていこう! 元の美しい街へ! シエスタへ! 街は蘇り! そしてお前ら帝国が死ぬ!」
地面に撒き散らされたガレキが舞い上がる。
兵士たちを巻き込みながら。
建物が人間を混ぜ込んで再生し、余計な頭や手足はちぎれて落ちる。
「何が……何が起きてる!?」「あいつだ! あいつがわけのわからない魔法を使ってる!」「異教徒め!」「ウェンディゴの手下め!」
統制が取れていない軍が、俺を標的にした。
攻撃が飛んでくる。
矢の他に、ドーナツ状の刃のリングとか、やたら湾曲した短剣とか。
面白い武器だなあ。
何発かは俺の体に当たる。
服が破けるので、いい気分ではない。
「俺の力は、再生させるだけで直接攻撃できないのが難点だな……。いやいや、だが直接攻撃で殺めてしまっては罪の意識がね。俺は平和主義者だからね。あ、再利用した矢はリメイクして返すね。ドリルアローだ」
「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」
「回転するリングとか、短剣もお返しだ。そーれ!」
「ウグワーッ!」「い、いかん! あいつに通じない!」「象兵はどうした!?」「今こっちに向かってます!」「だったら魔法で……!」
『建造物を再生させる条件を満たしました。リサイクル能力の上限を解除します』
おっ、魔王スキルが成長した!
リサイクルの文字が、白から銀色に変わったぞ。
これ、俺の習熟に合わせて能力が開放されていくっぽいな。
ゲームみたいというか、この体の本来のスペックに戻っていくというか。
「よーし、では一気に再生させちゃおう! シエスタよ、甦れ! あ、人間を雑にリサイクルするとゾンビになるから、人間だけ除外!」
破壊され、燃やされた都市が、一気に元に戻っていく。
俺はシエスタの元の形なんか知らないが、街があるべき姿を記憶しているのだ。
それに任せるだけ。
そして、街は己を破壊した余所者への怒りや憎しみも抱いている。
これが再生するついでに、カザン帝国の兵士を巻き込んでいく理由かもしれない。
街が再生するごとに、兵士の数が減っていった。
彼らに逃げ場はない。
自分たちの立っている場所が、敵の腹の中なわけだからな。
「……!!」
(カザン帝国を立った一人で蹂躙している……! やはりこの男、危険過ぎる……! でも、彼の力を借りることができれば、王国はカザン帝国を撃退できる! わたくしの身を犠牲にしてでも、彼の助力を仰がねば……!)
自己犠牲精神!!
カザン帝国に囚われて、大変な目に遭いながらも未だ尽きぬ黄金の心!
ちょっと感動しちゃった。
俺はこの姫騎士、好きだな~!
「うおおおお! 我が同胞たちが! おのれ! おのれ、異教徒! いや、貴様はもしや、ウェンディゴそのものであろう!!」
リサイクル吹き荒れる街の中で、その男は俺の力を跳ね除けながら立っている。
よく見ると、彼の頭上に半透明の巨人みたいなものが覆いかぶさっており、それに守られた兵士たちはリサイクルで吹き荒れる資材や部品の嵐を防ぐことができているようだ。
あれは、カザン帝国の魔法使いというやつだろうか。
「いかにも! 俺はウェンディゴだ。お前らカザン帝国の侵攻に怒り、こうして現れたのだ! 戦いをやめろ! さもなくば戦って殺すぞ! ストップザウォー!」
俺が適当な返事をしたら、魔法使いは顔を引きつらせて、わなわなと震える。
怒ってる怒ってる。
「あ、あ、あれほどの虐殺を行いながら、戦争を止めるだと!? 貴様自身が戦の震源地となっているではないか!! お前が殺した同胞の血は、一滴一滴が我らが神の祝福を受けたもの! こんな異国の血に無駄に散らしていいものではない!!」
「だってお前らだって虐殺してたじゃない。この町の人間を殺し尽くしてるだろ?」
「異教徒は人ではない! 我らが神の教えは、異教徒と異端の存在を許してはいない! 疾く冥府へと送り、その血を神に捧げるのだ!」
「あー! あーあーあー! 価値観が違うから、俺はいいけどお前はダメってやつね!? 分かった! 分かった分かった!」
俺は納得した。
なーんか言葉が通じてるのに、会話できてないなと思ってたんだ。
彼らの持つ思想は、極めて排他的な宗教によるものだったわけだ。
これは分かり合えない。
いやあ、分かり合うつもりは最初から無いんだけどね?
「リョウさん! 気をつけて下さい! その男は、たった一人でシエスタを防衛していた部隊を全滅させた恐るべき使い手! 油断をすれば、いかなあなたと言えど……」
「ありがとう姫騎士! 心配してくれて嬉しいですよー!」
ファルメラの方を向いて手を振ったら、魔法使いがその隙を突いてきた。
幻の戦士みたいなのが出現し、猛烈な勢いで俺に切りかかってくるではないか。
俺はこいつを、足元に落ちていた武器をリサイクルして跳ね上げ……。
「防いだか!!」
魔法使いが目を見開く。
「折れていた我らの剣を再生し、自由に操る力……! それが貴様の力というわけだな! 冒涜だ! 我らの剣も、衣も、象も、全ては神が下さったもの! 異教徒に分け与えるものなど無い!!」
「そっか。じゃあいいこと考えたぞ。同じ宗教を信じる同士で戦争をしよう! そうだ、そうしよう! リサイクル!!」
俺のリサイクルの力は、おおよそ半径百メートルに影響を及ぼせるようになっている。
その範囲で死んでいるカザン兵だけをチョイスし……。
ゾンビとしてリサイクルする。
彼らは再生し、立ち上がると、武器を手にして「ウボアーッ!」と吠えた。
動揺するカザンの兵士たち。
「ゾンビになったら友達だ! おいお前達! 同じ里の仲間を歓迎してやろう! レッツパーティー!!」
「ウボアーッ!!」
武装したゾンビが、魔法使いと生き残った兵士たちに襲いかかる。
「うわあああーっ! 仲間が! 死んだはずの仲間が!」「どうして! どうして同胞が争わないといけないんだ!?」「や、やめろ! お前、故郷に婚約者が待ってるって言って……ウグワーッ!!」「ひいい、やめてくれ、敵じゃない! 俺は敵じゃない! ウグワーッ!」
「うおおおお! やめろ! やめろやめろやめろーっ!!」
魔法使いが絶叫する。
彼の魔法の守りは、ゾンビには通じないみたいだねえ。
つまり、カザン帝国の人間を守る魔法だから、生前は仲間であったゾンビを弾くことができないと見た。
魔法使いが俺を睨みつける。
彼は血が出るほど唇を噛み締めながら、周囲に幻の戦士を呼び出し、ゾンビたちを切り倒していく。
「許さん……!! 許さんぞ、ウェンディゴ!! バルログから追われ、新たな故郷を求める我らの前に立ちふさがるか、北の妖魔よ!!」
「俺の知らない設定がどんどん出てくる……。とりあえずな、状況を終わらせようと思うんだ」
俺は使えそうなものを探してキョロキョロした。
さっき弾いた、幻の戦士の残滓みたいなのがある。
これが見えるってことはもしかして……。
「魔法をリサイクルだ」
すると……魔法使いが呼び出した幻の戦士が、俺の前に出現した。
ああ、他人が使い終わった魔法も、リサイクルして使い回せるじゃん!
「なっ……!? バカな……!! それは、私が神より賜った神聖なる魔法……! それをなぜウェンディゴが!!」
「これ便利そうだなあ! ちょっと使わせてもらうわ!」
「お前が! お前がそれを使うことは許されない! お前が!! 我らの信仰を愚弄するか! 我らの民を! 同胞を! 帝国を穢すつもりか!! 許さぬ! そんなことは許されてはならぬ! 貴様は我が魔法で……!?」
俺に注目しすぎたな。
忍び寄っていたゾンビの一体が、魔法使いを背後から刺す。
なぜそんな事ができたかと言うと、魔法使いが守っていた兵士たちは、もうゾンビが全滅させたからだ。
で、俺は全滅した兵士を全員ゾンビとしてリサイクルした。
「油断大敵だ。ダメだよー。俺にばっかり注目したら。はい、じゃあ幻の戦士よ、突撃! 首を飛ばしちまえ!」
幻の戦士が走った。
それを見て、魔法使いがなにか呪文を叫ぼうとする。
だが、血が泡となって吹き出し、言葉を紡げない。
怒りと絶望に染まった魔法使いの首は、俺がリサイクルした魔法で宙に飛んだのだった。
「おっし、勝利!! こっちからはなんも出さず、相手の持ってるリソースだけで勝つのきもちー!!」
「神様すごーい!!」
『流石ですぞ神様~!!』
「ば……化物……! いえ、もっと恐ろしい何か……! まるであれは……かつて伝説の勇者が倒したという、魔王……!!」
口に出ちゃってるよ姫騎士~!!
さて、この後は、魔法使いの死体をゾンビにしてみよう。
魔法が使えたりするのかな?
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