第8話 姫騎士をリサイクル
上の階でわあわあと騒いでいるうちに、俺達は屋敷に設けられた牢獄に到着だ。
というか、客間だったものを監禁部屋に利用したんだろう。
扉には鍵が掛かっていたので、ゾンビに叩き壊させる。
穴が空いたところをリサイクル、リメイクすればほら簡単。
鍵のない扉になって、ガチャッと開いた。
その中では……。
無惨な有様になった女性が事切れていた。
死んでそれなりに時間が経過したのか、虫がたかりはじめている。
「うっ、ひどい……。誰が誰だかわからなくなってる……」
アニタが顔をしかめた。
「うんうん、実にひどい……ひどいな……。ま、まだ使え……いやいや」
『くっころ姫騎士と遭遇する実績を解除しました。新しい能力、リ・イマジネーションを解放します』
おっと、魔王スキルに新しいものが追加された。
これは……その場に存在する過去の記憶を見るものだな。
どれどれ……?
うおおおおおお!
リョナ!
ハードリョナ展開!!
うおおおおおお!!
「神様? 神様ー!」
アニタに呼ばれて戻ってくる俺だった。
危ない危ない、大変なものを見てしまった。
心に満ちる充足感。
「よし、じゃあリサイクルしよう。姫騎士ファルメラを……リサイクル!」
俺が手をかざすと、そこに力場が生まれる。
こいつに触れられた存在は、死から生へと状況が書き換わる。
リ・イマジネーションをマスターしたせいか、姫騎士ファルメラの記憶や感情が俺には見える。
怒り、絶望、戸惑い。
肉体が人間の形を取り戻し、ボロボロだった衣服が再生し、美しい髪が彩りを増す。
うーん、金髪碧眼の美少女になった!!
彼女はハッと目を見開く。
「何かおぞましいものが、わたくしの心を覗いていたような……。!? わたくしの体が、服が元通りに……!?」
どうも、そのおぞましいものが俺です!
「ファルメラ様だー!!」
戸惑う姫騎士の前で、アニタがぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。
憧れのお姫様なんだなあ。
ファルメラはこちらに気付き、起き上がる。
復活後はしばらく動けなかったアニタと違い、よく鍛えられているようだ。
彼女の目が、はしゃぐアニタに向けられた。
「あなたは……?」
「私、アニタです! このシエスタ出身で、疎開してたんですけど、色々あって疎開してた村が無くなっちゃったんですけど、神様と会えたので故郷を助けにここまで来たんです! ねー神様!」
「ねー」
俺もニッコリ笑ってアニタに合わせた。
彼女を見るファルメラの目も優しくなる。
それはそれと、
(この子、何を言ってるの?)
と戸惑っている。
常識人だ。
それから俺を見たファルメラが、表情を強張らせる。
おおっ、意識が流れ込んでくるぞ!
俺は、能力の支配下にある存在の意識を読み取れるようになったようだ。
便利~。
(おぞましい……! 人の皮を被っているけれど、この男は人間じゃない……! カザン帝国など比べ物にもならない、恐ろしい存在がここにいる……! こいつを敵に回したらだめ……!!)
的確に俺という存在の本質を見抜いている。
もしかして目に見えないものが見える系?
強気な姫騎士が恐怖を感じてる姿、とてもいい……。
眼福……。
ここで彼女は恐怖を振り払い、口を開いた。
「あ、あなたはどなたですか?」
「俺はリョウです。リョウ・ナラ。アニタに請われて神様をやってるんですよー。仲間たちとともに、シエスタを解放に来ました!」
(良かった。わたくしの表情には気付かれていないみたい。それにしても……神様をやっている……? この恐ろしい男が……? 何の冗談なの……? それに、こんな男の仲間とは……)
ずっと考えてる人だ。
アニタは言っている事と考えている事が完全一致なので、考えを読んでも意味がないぞ。
おっと、ここで上にいたカザン帝国の将軍が降りる手段を見つけたようだ。
バタバタと部屋に駆け寄ってくる足音がする。
「侵入者を殺せ! 我らが同胞の命を奪った異教徒を殺せ! ウェンディゴの下僕どもめ! 聖なる神の名のもとに、この土地を奪還に来た我らの邪魔はさせんぞ!!」
将軍のものらしき、怒りに満ちた声がする。
彼に命じられてか、部屋の中に武装した兵士たちが駆け込んでこようとした。
だが、彼らは運が悪かった!
このタイミングで、俺が外に置いてきたゾンビたちが行動を開始したのである。
城壁が爆破される音がする。
ここまでハッキリ聞こえてくる爆発音に、グラグラと揺れる地面。
一体、何人のゾンビが爆発したことやら。
あまりの衝撃に、兵士たちが一瞬放心状態になった。
ファルメラも、目を見開いて硬直している。
俺がいないから、ラッシュが気前よくゾンビをぶっ飛ばしたのかも知れない。
そもそもラッシュは、あのゾンビたちの元になった山賊に殺されてるんだからな。
内心で山賊を憎んでてもおかしくない。
「なんだ! なんだーっ!!」
髭面のでっぷりした将軍が、慌てたのか、のこのことこちらの視界に入ってきた。
「よし、いけゾンビ! ファルメラ様にいいとこ見せるんだぞ! 将軍を分からせしてやれ!」
「ウボアー!」
曲刀を抜いて、将軍に斬りかかるゾンビ。
まさか同じ服装の軍人が寝返るとは思っていなかったらしく、他の兵士たちの反応が一瞬遅れた。
ゾンビの剣が将軍を斬りつける。
「ウグワーッ!! 貴様! 乱心したか!!」
将軍は素早く剣を抜き放ち、ゾンビを切り捨てた。
「ウグワーッ」
崩れ落ちるゾンビ。
ほうほう、ゾンビを一撃で真っ二つにするとは!
将軍、やるなあ。
ゾンビの上半身と下半身が別々に動いている。
「ばっ、化物!」「人間じゃない!!」「こいつ、いつのまに変わっちまったんだ!」
変わり果てた仲間に動揺している兵士たち。
その間に、背後の窓を破って、ゾンビたちが突入してくる。
『神様ーっ!! 助けに来ましたぞーっ!』
おお、ラッシュ!
ドクロの男となっている彼が、破れた窓から顔を出して叫んでいる。
『ゾンビども突撃しろー!! 全員爆発! 全員爆発じゃーっ! くそ山賊ども、せめて少しは役立ってから死ねーっ!!』
「ウボアー!」
ゾンビが突入してくる。
「なに……!? なんなのですか!?」
さらに混乱する姫騎士。
ここは俺がエスコートしてあげねばな。
優しく手を取る俺なのだった。
「仲間が助けに来たんですよ。これからここは爆発で焦土になるんで、急いで逃げよう。こっちこっち」
「手……手を離して下さい……! な、なんという力! 振りほどけない!」
「神様、待ってー!」
『神様! アニタ! こっちですぞー!!』
壁には、脱出にちょうどいい大きな穴が空いていたのだ。
景気よくゾンビ爆弾を使ったなあ。
ラッシュに導かれ、見事に脱出!
そして俺達が屋敷から少し離れたところで、背後で大規模なゾンビ爆弾の爆発があった。
ラッシュめ、ここで山賊ゾンビを使い切るつもりだな?
空を飛ぶドクロになっても、恨みは消えないのだろう。
ま、それはどうでもいい。
お目当ての姫騎士を確保できたからな。
満足感に浸る俺をよそに、周囲はどんどん騒がしくなっていく。
シエスタ中のカザン帝国軍が、ここに集まってきているのだった。
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