第7話 姫騎士のあてを掴んだら行くしか無いじゃないか
壁の中に入ったぞ。
そりゃあもう、凄い。
何から何まで全部略奪されてて、建物は片っ端からぶっ壊されてて、草木は全部象のご飯になってた。
道端に転がっている街の住民の死体。
「な……なんてこと……! 私の故郷が! 綺麗だったシエスタが!」
アニタが嘆く。
「大丈夫、全部リサイクルできる」
「あっ、そうだった! さっすが神様」
アニタが復活した。
「あとで生き返らせられると知ると、なんか冷静になっちゃうね……。っていうか私、明らかに物事に動じなくなってるかも」
二回リサイクルしたからね。
ちょっとずつ人間では無くなってるかも知れないね……!
なお俺達二人は、カザン兵たちが行き交う街中でまあまあ目立っているが……。
「ゾンビが実にいい仕事をしてくれてるんだ」
街の生き残りを連れ回しているように見えるらしい。
「なんだ、まだ生きてる奴がいたのか? ここはカザンの民が移り住むことになるんだ。異教徒なんか生かしておいても意味ないぞ」
「ウボア」
「変な喋り方するなあ。そんなだっけ?」
はあはあ、なるほど。
人種も宗教も違うから、相手はことごとく滅ぼしてしまう方針なのか。
これは……平和主義では対応できる限界を超えているね!
積極的平和主義で対抗していくしかあるまい。
「それから、捕らえたウェンディゴどもの姫がいるだろ。あいつとうとう死んだらしいぞ。全く、最後は自分で命を断つとかな! 地獄行きに決まってる! わはははは!」
姫が!?
それってつまり、姫騎士がリョナ展開に遭ってたってこと!?
「詳しく……詳しく聞かせてくれないか」
「こ、このウェンディゴ人、俺達の言葉を……!? バカが! 異教徒に教えてやることなんか何もねえよ! お前ら、こいつを殺しちまえよ! 男だろ!? 生かしておく意味ねえだろ!」
兵士はゾンビたちにひどいことを言うのだった。
我が友ゾンビ、怒る。
「もが!」「もがー!」
「お、おい!? 俺じゃねえよ! 何してんだよ! おい! おいー!」
外に音が漏れない物陰に連れ込んで、俺は彼に優しく語りかけた。
「君をゾンビにする前に、教えてほしいんだ。姫騎士はどこにいる? これはとても大事なことなんだ」
ゾンビたちが武器を抜いた。
それを、兵士の体に突き立てる。
「ぎゃあああああ!? やめろ! やめてくれ! なんで!? なんでそんなひどいことをするんだ!?」
いやあ、自分たちがやっておいて自分がされるのは御免こうむると。
通らないだろうそれは。
アニタに彼らの言葉がわからなくて本当に良かった。
「俺は姫騎士の居場所を聞いてるんだ。教えてくれるだけでいい。それだけで君を解放してやろう。生からだけど」
「わ、分かった! あっちだ! ウェンディゴの街のリーダーの家だ! そこにいる……!」
「ありがとう! じゃあゾンビにするね」
「ウグワアアアアアアアアッ!! ウボアーッ」
これで君も友達だ。
分かりあえるって素晴らしいな。
アニタもニコニコしながら、新たにゾンビとなった兵士を迎えた。
「ようこそ、新しい友達! みんなでシエスタを救おうね!」
「ウボアーッ!」
ゾンビは声を揃えて、アニタの宣言に賛同した。
カザン帝国とやらの兵士は、シエスタの街をウェンディゴの街とか呼んでいるようだ。
固有名詞や概念が次々に現れて、俺の頭は爆発してしまいそうだ。
早く話をシンプルにしたい。
そんな切実な思いと、姫騎士がリョナされて自死したという現場が見たくて、道を急ぐ。
明らかに肌の色が違う、俺とアニタはとても目立つ。
だが、この姿は某イケメン特撮俳優の似姿でとても気に入っているんだ。
変装のために髭面のカザン兵士の皮を被る気にはなれないな……!
おっと、そうこうしていたら到着だ。
俺達を怪しむ兵士が後から何人もついてくる。
「攻撃されたらゾンビ爆弾だぞ、お前たち」
「ウボア」
「じゃあ正面から入ろう。すみません、捕虜です。通して下さい」
「まだ生きているウェンディゴ人の男がいたのか!!」「ここは将軍アズハム様がいらっしゃるのだぞ!!」
「通せって言ってるだろ。こっちが下手に出てたらつけあがりやがって。別にそのハムとか言う将軍をどうこうするわけじゃないんだから」
「将軍を狙っているのか!?」「くそっ、暗殺者だ! 兵士を集めろ! 異教徒め! ここはカザンの都になるのだ! 冥府へ落ちろ!!」
「ダメだ、話が通じない。よし、ゾンビ爆弾ゴー!」
「ウボアーッ!」
ゾンビの一人が、可燃性ガスを吐きながら石と刃物をカチカチさせつつ、門番のところに駆け寄っていった。
「お、おいお前何を……」
俺は、屋敷を囲む壁脇にちょっと避ける。
そうしたら、扉の前が大爆発した。
「ウグワーッ!!」
兵士たちの絶叫が聞こえる。
「ウグワーッ!!」
いっけね!
後ろで待機させてたゾンビもゾンビ爆弾化して爆発しちゃった!
爆発命令で、どのゾンビかの指定を忘れてた。
俺を追跡してきてた兵士が全滅したぞ。
ま、いいか。
また現地調達だ。
「神様! す、すっごい音がした!」
「いやあ怖いなあ。爆発に巻き込まれなくて良かったなあ」
俺は笑顔でアニタの肩をポンポン叩きつつ、黒煙を拭き上げ、燃え始めた屋敷の前に立った。
周囲には、辛うじて原型を保っている武器や防具が散乱していた。
これを、「リサイクル! 俺の周囲を渦巻け。アパラチャノモゲータ!」
俺とアニタの周りを旋回する、金属の竜巻に変える。
こいつが引き起こす風で炎を散らし、燃え尽きたり崩れかけたりしている構造物を削り取るのだ。
そして正面玄関から堂々入場。
入口近くで、若い兵士が死んでいた。
頭にガレキが突き刺さっている。
「ラッキー、原型をとどめてるからゾンビを補充できる! リサイクル!」
「ウボアー」
ゾンビが起き上がった。
よしよし。
戦場とか戦いがあった場所は、ゾンビの素がたっぷり転がっていて便利だな。
「お前、姫騎士がいる場所覚えてるか? 案内しろ」
「ウボア」
「ファルメラ様がこの奥にいるのね? あのお方が神様の仲間になるの? きゃーっ! すごーい! 夢みたい!」
「もしや姫騎士ファルメラは、女の子たちにとって凄く人気?」
「憧れの人だよぉ」
「おおーっ! それはますます、姫騎士をリサイクルして仲間にしなければならない。何よりアニタが喜ぶからね」
「えっ、まさか神様、私のために……!? や、優しい……」
うるうるするアニタなのだった。
なお、屋敷の中は吹き抜けになっており、二階の辺りから兵士やでっぷりと太った髭面の男が睨みつけてきている。
今のところは、階段がゾンビ爆弾で破損しているため、降りてこられないようだが。
あれがハム将軍とやらだろう。
お前はどうでもいい。
俺が姫騎士をリサイクルする邪魔をするんじゃないぞ!
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