第89話 情報を収集しつつ、悪食王を探すぞ
「トーカー、太陽の大海とはどこだ?」
『はい、マスター。太陽の大海とはダイコウカ太陽帝国が面する巨大な海です。七王国のほとんどは大地の内海こそを母なる海と呼んでいますが、それは太陽の大海と比較すればごく小さな地方の海に過ぎません。太陽の大海はこの大陸そのものを包み込む最大の海です』
「なるほどな。大西洋みたいなもんか。で、そのどこかにマロングラーセは己の一部を眠らせたって話だな?」
『その通りです、マスター。マロングラーセは世界から放逐される際、己の一割ほどの分身を太陽の大海に植え付けました。それは眠りながら、世界に己の因子を送り込んでいます。つい最近になって一部の魔人が強力になってきた状況は、このマロングラーセ復活が鍵になっているのではないかと、パスティアン法国は考えていました』
法国、宗教的な国かと思いきや、過去の知識を蓄積して世界情勢を分析したりもしていたのだな。
そしてどうやら、太陽の大海を継続的に観察もしていたようだ。
「パスティアン法国は、七王国の中で特別な位置にいたんだろう? つまり、この国が宗教的頂点だ。アシアライ半島は聖地だった。どうだ?」
『その通りです、マスター。各国には法王によって洗礼を受けた王たちが君臨しており、パスティアンによる太陽の大海調査依頼を毎年受諾していました』
「なんと……私も知らぬことばかり! 驚きの連続ですよ。そしてまさか、伝説の災厄、大魔王マロングラーセが存在していたとは……」
村長も驚いている。
「村長、君は知的に優れているので、トーカーが吐き出す情報から色々分析できるんじゃないかと思う。考察があったら聞かせてくれ」
「分かりました。やってみましょう! 悪食王が君臨するという西の大地に連れ出された時はどうなるかと思いましたが、まさかこれほどの知的好奇心を刺激される旅になるとは……」
村長は学者肌だったんだな。
いやあ、実にありがたい。
俺はそういう分析とか、素人もいいところだからな。
トーカーにしろ、こいつはひたすらに西方地域の情勢を垂れ流すだけの装置だ。
あの爺さんの血筋が知り得た知識まで、ひたすら引きずり出して喋るようになっている。
リメイクしてからさらにいじってみたのだが、枢機卿の家系は流石だな。
直接何十代も知識を遡れたぞ。
車を走らせながら、次に向かう先はブルスト神聖王国。
巨大な軍隊を有していたというかの王国は、やっぱり滅亡しているわけだが……。
『ブルスト神聖王国は、パスティアンに対抗して没落した枢機卿家を抱え込み、それを新たなる法王として擁立していました。国家そのものを破門するかどうかで、パスティアンは紛糾していました』
「めんどくさそうな社会情勢になっているんだなあ」
「七王国は、内憂を抱えていていつ崩壊してもおかしくない状態だったのですな。もしや、悪食王が攻めてきたとして、彼らが手を結べば抗えたのかも知れません。ですが各国がバラバラになっていたから……」
「ありそうー!」
「外の王国群は本当にややこしいことになっていましたのね! うちはカナン帝国という分かりやすい脅威が相手でしたから……。とは言っても、わたくしの国なんてほんの小さなものでしたけれども」
人間同士の争いなー。
なまじ平和になったり、あるいは人間が抗えないほどの強大な魔人が傍観主義者だったせいで、人間たちが敵視する存在は同じ人間になってしまったわけだ。
そこを悪食王が横からガツン!
「頭いいねー。あいつの部下、派手だけどそんな強くなかったし、これはタイミングを伺っての電撃作戦が功を奏した形だな」
「リョウ様が悪食王を侮っていますわねえ」
「まあね、そりゃね」
奴の部下を三体粉砕したけど、どいつもこいつもうちの強めの幹部ならタイマンで楽勝できるレベルでしか無かった。
だが、三人衆とバルログ軍団がやられたからなあ。
俺は首をひねりながら、ブルスト神聖王国に入っていった。
例によってここも瓦礫の山になっており、あちこちに槍のようなものが突き立てられている。
その槍に、人間の骸骨とかバルログの頭とかが刺さっていて……。
なにぃ、バルログの頭ぁ?
俺は車を停めて降りた。
ハンドレッツも一斉に停止する。
「ちょっとバルログ再生させるから、お前ら警備をよろしく!」
「はっ!」
ハンドレッツが四人一組で散開し、周囲を巡回し始める。
そうしたら、当然のように瓦礫の影に魔人が潜んでいたようで、戦闘が始まった。
唸りを上げる、俺謹製の改造武器!
チェンソーブレード!
パイルバンカー!
ウィップソード!
三節棍スピア!
ハンドレッツが誇る俺の趣味武器が大いに暴れ、飛び出してきた獣と人が混じった甲冑兵士をずたずたに切り裂く! 撃ち抜く! 千々に引き裂く! 伸びて刺し殺す!
「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」
ハンドレッツ全員が、俺によって可愛がられてパワーを得た魔人なのだ。
残らず第五位階に達しているので、まさしく選りすぐりの兵士だぞ。
で、俺は彼らがたっぷりと時間を作ってくれたので、槍の一本をポキっと折って突き刺さったバルログヘッドを回収。
周囲の死体やらを使って再生だ。
『うおおおーっ!! あっ!! こ、これはリョウ様……! お見苦しいところを……』
「な? 調子に乗ってると弱い奴らでもひっくり返してくるんだよ。あと、今までの奴らには聞いてなかったけど、言ってみ? どうやってやられた?」
『はっ、この土地に来た魔人は、大地の中にある金属を用いて槍を作り出し、地の底から無限に槍を召喚、当たったものを串刺しにする能力を持っています』
「あ、完全に理解した。串刺し公って感じの能力者なのね。はいはい。ハンドレッツ! 一旦集合! 急速に集合! 敵がいる? ほっとけ! あつまれー!」
俺の号令に合わせて、ハンドレッツがいきなり撤退した。
ソーラーカーを中心に陣形を組む。
そうすると、彼らが一瞬前までいた戦場あたりから赤錆た槍がズドンッ! と生えた。
槍は次々に突き立つ。
そこに悪食王側の魔人がいても構わない感じだ。
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
うーん、いいタイミングだったな。
向こうの魔人将からはこちらが見えているんだろう。
「いいか諸君! 俺が先頭になって歩き、この槍を全て封じる。偉そうにこの状況を見ている魔人将をさっさと片付けるぞ!」
今回からは、悪食王に関するインタビューもやっていかないとな。
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