第88話 法国は任せる……
遅れてやって来たレジスタンス組織、アシアライトライデント。
デミウルゴスが滅ぼされたことで、やる事をすべて失った彼らである。
「そんなあ。俺達は山中に潜み、神の遺産と呼ばれる兵器を復活させて戦いに臨んだのに!」
「おっ、神造兵器!?」
俺は俄然興味が出てきた。
「見せてもらっていい?」
「構わんと言うか、すぐそこに持ってきているが」
どーれどれ。
ほほう、ロボットみたいなのがいる。
話を聞くに、アシアライ半島のとある山が丸ごと旧時代の巨大研究施設だったとか。
ファラオシティと同じじゃないか。
そういうのが世界中にあるんだなあ。
で、レジスタンスたちの中にたまたま、この研究施設に入ることができる鍵を持っていた者がいたと。
そこでアシアライトライデントは、涙あり、友情ありのストーリーを繰り広げながら研究施設を攻略。
ようやくそれをクリアし、ロボみたいなのを手に入れたということだった。
『あーっ、いけませんいけません。魔王種です』
ロボットが俺を見ていきなりそんな事を言うのである。
こいつぅー、ここを血の海にしたいらしいなあ?
外見は、のっぺりした頭部に機械がむき出しのボディ。
両腕がキャノン砲になっている。
そののっぺり頭を透過して、LEDみたいな光がピカピカ瞬いている。
「な、なにぃーっ」「でも魔王ってもう滅びたんだろ?」「別の世界に放逐されたと聞いてるぜ」「そんなことはなぁーい! マロングラーセはその欠片を、太陽の大海に潜ませたんじゃ! 代々言い伝えられておる!」「まーた爺さんの言い伝えが始まったよ」
「凄く気になる言い伝え! おじいさん、聞かせてもらっていいですか? おいロボ、余計なことを言うな。虐殺が始まっちゃうだろ! せっかく話が通じるのに」
『あれえ? この魔王種からは話せる存在の因子を感知します』
「ほうほう、わしの話が聞きたいか。わしはなあ、世が世なら法王じゃったのじゃが……」
パスティアン法国において、法王は複数の枢機卿家から選ばれる。
彼は枢機卿家の生まれだったが、その家は権力争いに破れて没落した。
で、世を恨んでアシアライトライデントを結成、国家転覆を狙うテロ活動に人生を捧げたが……。
そしたら悪食王が急速に勢力を伸ばし、魔人将デミウルゴスを派遣してきて、パスティアン法国は滅びたというわけだった。
人に歴史ありだなあ。
それで、枢機卿の血筋だったからこそ、秘められた知識について詳しかったようなのだ。
なお、最近は歳のせいか記憶や発言が曖昧になっているので、アシアライトライデントを結成した祖であるというのにめちゃくちゃ軽んじられていると。
「ははーん、お前らさてはこの爺さんを持て余しているな? よし、では交渉だ」
「なんだと!」
交渉相手になるのは、現役のアシアライトライデントのリーダーだ。
元聖堂騎士だったという男で、なかなかデカい。
「俺が復活させたパスティアン法国は、丸ごとお前らにくれてやろう」
「な、なんだと!? お前にどうして、そんな事を決める資格がある……!? いや待て、お前が復活させた……!? どういうことだ!?」
「自由に見て回るがいい。誰一人として人間はいない。それに、全ての建造物が新品になっているだろう?」
しばらく彼らを自由にさせた。
彼らはあちこちを見て回り、俺の言葉が真実であることを確認したようだ。
呆然としながら戻ってきた。
「だ……誰一人としていなかった……」「何もかもが新しくなっていた……。全部、今さっき建造されたばかりの作りをしていた……」
「でしょー。なので、ガワだけ完全再生させたけど、ここに住んでいた人間はどうしようもなかったわけ。お前らがここを切り盛りして、新しいパスティアン法国を作ってくれ。あ、権力争いはしばらくやるなよ? それにそのロボがいれば、悪食王の侵略もなんとかなるだろ」
交渉終わり!
こっちの条件は爺さんを連れて行くこと!
「リョウ様、どうしてそのご老人を連れて行くことにしたのですか?」
「この爺さん、明らかに今まで出てこなかった新情報を知ってたからだ。で、アシアライトライデントの面々が耳にタコができるほど聞かされてたということは、ただの嘘とは思えない。悪食王をぶっ倒しつつ検証もするぞ」
「こういうところで、リョウ様はマメですわよねえ……」
「ゲームなら絶対にフラグだからな……」
こうして爺さんを受け取った。
足腰も弱り、目も悪いし耳も遠いし歯もガタガタだったので、彼の頭脳だけ活かしてリメイクしておこう。
「ちょっとリメイクするぞ爺さん。そらっ」
「ウグワーッ! あばばばばばばば」
爺さんの体が真っ黒に染まり、シルエットの中で骨格から大改造が起こる。
これを見て、トライデントの面々が震え上がった。
「ひいーっ」「や、やっぱり魔王だったのか!?」「ロボット、なんとかしてくれ!」
『命に別状なし! 危害を加えられている人間は存在しません!』
「そうだぞー。はい、出来上がり」
爺さんのリメイクが完了した。
泥や土や石を取り込んで、自由に動ける体を作ってやった。
見た目は細身のゴーレムのようだ。
いにしえの名作スペースオペラに出てくる、お喋りロボットにそっくりかも知れない。
「爺さん、今からお前はトーカーと名付ける。パスティアン法国でお前が知る限りの伝承や知識を、全て俺に伝えるように。そして状況に応じ、伝承に沿ったアドバイスをするのだ」
『了解致しました』
「完全に人間ではなくなってしまいましたわね」
「知性と記憶だけあれば良くない? この人の悲願だった法国の転覆は叶ったわけだし。あとは生き残って、他のトライデントメンバーから邪険にされるよりは俺の役に立ったほうがいいでしょ」
「勝手ですわねえ……」
こうして、法国はアシアライトライデントに任せることになった。
俺達は、明け方とともに半島から大陸側へと移動することになるだろう。
この辺りからは石畳で道が整備されていて、大変移動がしやすそうなんだよな。
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