第87話 アシアライ半島のレジスタンスたち
パスティアン法国に到着!
案の定滅んでいたので、ここを支配していた偽神を名乗る魔人将デミウルゴスを撃破したぞ!
『ウグワーッ!? 聖なる都ごと包みこまれて……圧縮されるぅーっ! 我が魔法が全て返ってくる! こんな、こんなぁーっ!! あのお方から力を授かった私がぁーっ!!』
ということで、パスティアン法国を解放したのだった。
魔法を使うだけの奴が俺と勝負できるわけ無いだろうが。
「本当に身も蓋もありませんわねえ……。そしてたった三日間で三つの王国を解放してしまいましたわ」
「俺が本気になるとこんなもん。移動ばっかりだと村長と少年が疲れちゃうでしょう? なので、さっと移動してその土地に半日留まって休む時間を作ってます。はい、パスティアン法国リサイクル」
この国はかなり原型が残っていた。
デミウルゴスの趣味だったんだろう。
お陰で再生が容易だ。
都市の中心にある大神殿が新品同然になり、町並みもキラッキラの新品だ。
「おお……! 街が蘇る……のはいいんですが、リョウさん、パスティアン法国といえば西方国家群でも最も歴史が古く、旧時代から続く町並みが看板のようなものだったのですが……」
「えっ、そうなの!?」
博識な村長に教えられ、驚く俺。
振り返ると、新品同然の法国の姿があった。
「俺さ、なんでもリサイクルできるんだけど、全て新品に変えちゃう能力であって、古さの微調整ができないんだよな」
「リョウさんにも苦手なことが……」
「割と雑な性格なので、こういうところに反映されたのかも知れない」
俺にも無理なことがあるということで勘弁してもらった。
なお、少年は生まれて初めての遠出で、美しい法国の姿におおはしゃぎである。
「あたしと一緒に見て回る?」
「うん!」
アニタに連れられて行ってしまった。
俺は何気に、アニタは少年たちの初恋泥棒だと思っているんだよな。
「リョウさん、私もちょっと見て回っていいですか? 本物のパスティアン法国に来れたのだと思うと、例えそれが新品になってしまっていても知的好奇心を抑えきれなくて……」
「分かった! じゃあハンドレッツを一人護衛でつけるから、存分に見学して行ってくれ」
「ありがとうございます!」
村長はハンドレッツを連れて、いそいそと大神殿に消えていった。
都市の中心になる場所を最初に選ぶとは、流石だな村長。
「さて、それではどうしますの? この国の民を復活させるのですか?」
「うん、それなんだが、ここはデミウルゴスの手下を使うとしても、そいつらが無機物みたいな連中なんだよね。つまり素材がない」
「あら」
デミウルゴスは、言うなれば魔人の魔術師であり、それが力を極めた存在だった。
彼の軍に生命あるものはデミウルゴス一人であり、他は彼による被造物の集まりだったわけだ。
つまりゴーレムみたいなのしかいなかったのね。
「どこかに肉が落ちてないもんかなあ」
「物騒なことをおっしゃいますわねえ……。ですけど、そう都合よく死体が転がっていたりはしないものですわよ。かの魔人将が、聖都に住む人間を一掃してしまったそうではありませんの」
「そうだなあ。本当にもったいないことをするやつだ」
悪食王の軍勢には、エコとかDEIとか言った概念が存在しないようだ。
遅れている軍勢だ。
俺が啓蒙してやらねばな……。
その前に滅ぼすが。
そんな事を考えていたら、あっという間に夕方になった。
アニタたちと村長たちが戻ってくる。
村長と少年に食事をしてもらい、寝心地が良さそうな家で寝てもらうことになった。
俺達やハンドレッツは睡眠が必要ないので、まったりする。
「人間を連れていると、地獄のような強行軍にならなくなるからまったりした感じだな」
「そうですわねえ。これくらいのペースでもいい気はしますわよ? どうせ悪食王はこちらを侮っているでしょう。逃げることはありませんわ」
「言われてみればそうかもなあ」
ファルメラと喋っていると、真っ暗闇な聖都の先でチラチラと炎が見えた。
なんだなんだ。
結構な数の人影が見えるぞ。
完全な闇を見通せる、俺の目を侮らないでもらいたい。
あれは……。
人間だ。
パスティアン法国の住民は全滅したのではなかったのか?
「怪物どもがいない! 今だ! うおおおーっ!! 俺に続けーっ! パスティアン法国を取り戻せーっ!! アシアライトライデント、ゴーゴーゴー!!」
粗末な武装に身を包んだ人間たちが走ってくる!
ここがまだデミウルゴスの手の内だったら、こいつら死にに来たようなもんだぞ。
「待て待て」
俺は彼らの前にトコトコ現れた。
「!? な、なんだお前は!!」
アシアライトライデントを名乗る連中が立ち止まる。
なんだ、そのアシアライって。
「村長が言ってましたけど、この周囲がアシアライ半島というそうなのですわ」
「そうだったのか! じゃあ、この半島に潜んで悪食王と戦うレジスタンスが君たち? ああ、俺はリョウ。敵ではないぞ。冷静な交渉を望む」
アシアライトライデントは、俺とファルメラを見た後、毒気を抜かれたようだった。
「確かに……人間嫌いのデミウルゴスが、自分以外の人間を置いているとも思えない……。あんたたち、なんでここにいるんだ? そして、嘘みたいに法国が静かだ」
「そりゃ、デミウルゴスは俺が滅ぼしたからな」
「な、なんだってーっ!!」
静かな法国の夜に、アシアライトライデントたちの叫びが響くのだった。
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