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まだ使える!~可哀想は可愛いをモットーに、転生魔王はダークな異世界をリサイクル能力で蹂躙する~  作者: あけちともあき
対決、西方の悪食王

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第86話 海を渡って行くぞ

 朝になった。

 ターカス帝国は賑わいを取り戻した。

 朝の街に、蜘蛛人間となった帝国民たちが繰り出していく。


「我々は何をしたらいいんだろう?」「我々には記憶がない」「記録がない」「ではイベントを作っていこう」「そうしよう」


 同じ母体から生まれた蜘蛛を使って生み出した、全員が兄弟のような彼らだ。

 三千人がすぐに意思を疎通し、今後の方向性を決定した。

 とりあえず全員で体操みたいなことをやるらしい。


「みんなで文化を作り、帝国を盛り立てていってくれよな!」


「はい」「お任せ下さい造物主よ」「我らが帝国は太陽のごとく輝くでしょう」「ご照覧あれ」


「感情があるっぽく喋る練習もしなね」


 そう告げて、俺達は旅立つことになった。

 目覚めた村長たちはびっくりだ。


「帝都に人が戻ってきています……! これは……これは凄い……。天地創造だけではない、人を作ってしまわれた……!」


「うむ、俺はまあまあ全知全能だからね。ちょっと歪めた悪意のある形で神の御業を体現できるんだ。じゃあ二人の朝食が終わったら、海を渡ろう。次の国に行くぞー。毎日一体魔人将を倒すぞ」


「なんですとーっ」


 村長と少年にはちょっとハードな旅に付き合ってもらうことになる。

 頑張ってついてきてくれよな!


 蜘蛛の残骸を利用して、海を渡るための巨大なイカダを作った。

 これを用いて、内海を渡ろうという寸法なのだ。


 ハンドレッツが乗り込む蜘蛛型マシンは、アメンボのように水上を走れるからね。

 ソーラーカーをイカダに組み込み……。

 これで、太陽エネルギーを後部に設置したスクリューへと伝えることができる。


 果たして、イカダは動き始めた。


「リョウさん、昨日からすっごいアイデア満載のリメイクしてる! すごーい!」


「現代知識無双というやつだよ。ハハハハハ。今までは人間が相手だったからな。こういうのをやるとオーバーキルになるじゃない。だけど今度は魔人が相手だし、そのボスは魔王を名乗ってる。つまり何をやってもいいってことなんだよ」


「なるほどー」


「リョウ様の自制心が吹き飛んでしまいましたのね。ですが、そのきっかけは仲間の死だったわけですから、同胞を思っての行動と思うと悪いものではない気がするのですわよねえ」


 ファルメラは難しく考えるなあ。

 村長と少年なんか、海を渡るというので大興奮しているではないか。

 落ちないようにね。


「そうだ、せっかくだからシンカイを呼んで露払いさせよう。おーい、シンカイ!」


 彼の名を呼んだ瞬間、全身に白い炎を纏った船団が出現した。


『がははははははは! 大地の内海は我らが海賊王の領海! 許しもなく船を出すことはならぬぞーっ! 貴様らの命という税を払ってもらわねばならぬなあーっ!!』


 船団の先頭に立つ、骸骨の鎧をまとった巨漢の海賊。

 そいつが不敵に俺を見下ろし……。


『お呼びに応えて参上致しましたぞ、主よ!』


『なっ、なにぃーっ!?』


 船団の先端にいる船を叩き割りながら出現したグレーターマーマン、シンカイによって出鼻をくじかれた。


「おうシンカイ! ちょっと海を渡るんだが、邪魔してくるやつが出てくるだろうから蹴散らしてくれ……って言おうとしたら、本当に邪魔するやつが出てきた上に蹴散らしてくれてるな。よろしく」


『任されました。主と共に戦うのは実に久方ぶりのこと! 腕が鳴ります!』


 言葉を口にしながら、船の一隻を殴りつける。

 すると、船が先頭から船尾まで一気にひしゃげ、爆縮してから海に沈んでいった。


『なんだーっ!? なんだこいつは! なんだお前はーっ!! 俺を海賊王の第七船長スカルガイストと知っての狼藉かーっ!!』


『知らんなあ。海賊王がどうこう言おうが、水のある場はこの我の世界と決まっている!』


 シンカイはまた一隻の船を片手で受け止めた。

 手首をひねると、船はめちゃくちゃに拗じられて圧壊していく。


 おほー、強い強い。

 シンカイがめちゃくちゃ強いぞ。


 彼がスカルガイストの船団をたった一人で蹴散らしている間に、俺は海をピューッと通過した。

 ついでに、砕かれた船の残骸とか、乗組員の死体をリサイクルしてシンカイの手下にしてやるのだ。


「じゃあなシンカイ! また水があるところに行ったら呼ぶから!」


『かしこまりましてございます! 主よお達者で!』


『ぬおおおおお! 行かせるか! 行かせるかぁぁぁぁぁ!! 我らが海賊王が、神より賜ったお力が、貴様程度に通じぬなどとあってはならぬことぉぉぉぉ!!』


『我は海の王である。そう定められている。故に海賊王などの力は我に通じぬ!』


 シンカイがまた一隻をスクラップにする。


『誰だ! 誰がお前を海の王だなどと決めた! 神は海賊王をこそ大地の内海の王だと決定されたのに! その権能を我々七船長も受け取ったというのに!! 誰が貴様を、海の王と任じる資格を持っているのだ!!』


『我が主、リョウ様がそう定めた。故に我は水の中では負けぬのだ』


 シンカイは静かにそう告げると、


『さて、リョウ様とお供たちは無事にこの海域を抜けたようだ。では……手加減をやめよう』


『手加減……!? ぬわあああああああああああっ!?』


 スカルガイストの悲鳴が聞こえたのだった。

 いやー。

 シンカイの五感を共有して状況確認してたけど、熱いことになってるね!


 なんか俺を持ち上げてくれて嬉しいよ。

 おうおう、向こうでは巨大な竜巻が発生し、全ての白い船団を巻き込み空に向かって打ち上げている。


 ところで、海賊王に力を与えた神とかいう存在はなんだ?

 ここに来て新勢力登場かあ?

 いや、いきなり力を増した悪食王もくさいな。


 おっと、向こうでは爆発の後、急に静かになった。

 少ししたら、粉々になった船と乗組員が雨となって降り注ぐことだろう。


「ということで、何事もなく内海を横断成功! ターカス帝国と対岸は、内海ではかなり狭くなっている場所だからね。楽ちんであった」


「シンカイさん凄かったね! リョウさんの前だから、すっごく張り切ってたよ!」


「だろうねー。嬉しいねー」


「しれっと重要な話も聞こえましたわね。神を名乗る何者かが、この西方にいるということでしょうか」


 そうっぽいね。

 悪食王を蹴散らしがてら、その辺りもちょっとは突っ込んでみたいな。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
>ちょっと歪めた悪意のある形で〜 これが偽悪でも照れ隠しでもないところが実に魔王w しれっと神と名乗ってる何か、強弱はさておきリョウの同類っぽい気がしますなあ
海の王vs内海の王の配下ってw 内海って帝都ロボと巨大蜘蛛が水遊びしてた海かw 海賊王が内海の王って規模小さいなw
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