第82話 軍隊がいたが通路と変わらなかった
敵軍は、もう人間の王国どころではない。
一斉に集まってきて、ソーラーカー目掛けて飛びかかってくる。
大変多い。
雲霞の如き数だ。
「まあ一万騎以上はいるんじゃないかしら」
俺が推測を述べると、ファルメラが呆れた。
「多いですねわえ……。どこから連れてきたのでしょう」
「ほんとね。一軍でうちのキョンシーたちの三割くらいの数なんだから大したもんだ。じゃあ蹴散らす」
「お任せしますわね」
「リョウさんどうするの?」
「身も蓋もない攻撃だと俺が一番強いの。そーれ! アタック&リサイクル、高速回転だ!」
巨大ソーラーカーと激突して倒れた敵を、全てリサイクルする。
ゾンビにすると魔人に対抗できないし、俺が一匹一匹関わっている余裕もないので……。
全部、ゾンビミサイルに変えたぞ!
体内のエネルギーを全力燃焼してぶっ飛び、肉の弾丸になってかつて仲間だった連中にぶち当たる。
で、ゾンビミサイルで死んだ奴をゾンビミサイルにして周囲に撒き散らす。さらに死んだ奴はゾンビミサイルにする。
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
俺が通り過ぎる所、死が撒き散らされる。
死が新たな死を呼び、全てが俺の道具になって周囲の命をすり潰す。
「村長、少年、あまり面白いものではないので目を閉じているといい。耳を塞ぐのもいい。なに、ほんの十分程度の辛抱だ」
彼らに告げつつ、ソーラーカーは軍隊の中心までたどり着いた。
既に、連中の八割は死んでいる。
俺は悠然と、ソーラカーから降りる。
眼の前には、バルログの首を突き刺した旗と、それを掲げる屈強な兵士が数名。
そしてケンタウロスと呼ぶにはあまりにも巨大で、腕が四本あるフルアーマーの騎士が一人いる。
『王より賜った我が軍がこのような……!! 貴様! 貴様! 何者だ! 東方にこれほどの力を持つ魔人がいるなど聞いたことがない! これはまるで……』
「いかにも。俺は魔人ではない。この肉体はオルトファースのそれだ」
『オッ……オルトファース!!』
「ま、俺の方が強いが。ゾンビミサイル連打」
俺の背後から、死んだケンタウロスたちが使い捨ての肉の弾丸となり、降り注いだ。
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
旗を持っていた兵士たちは、一発や二発のミサイルは防げても、数十発となるとどうにもならなかったようだ。
すぐにミサイルの仲間になる。
『やめろ! やめろーっ!! 我が同胞の命を愚弄するか! やめろオルトファース!!』
「おっ、バルログヘッドが戻ってきた! ケンタウロスの肉体のいいところをリサイクルして……復活しろ」
バルログの首の周りに、周囲から血と肉が集まる。
えぐられていた目玉が再生し、瞬きをした。
巨体が出現し、俺の横に跪く。
『おお、我らが偉大なる主リョウ様! 我ら、調子に乗りまくっていて大変な不覚を取りました』
「そうだぞ。今後は調子に乗るなよ?」
『はっ、頑張ってみます。ですが種族としての特徴がこの傲慢さなので……』
「仕方ない奴らだなあ」
俺が復活したバルログと話し始めたので、ケンタウロスの将軍みたいなのは目を白黒させた。
『なっなっなっ……!! 我を無視するのみならず、首級であった魔人を蘇らせた!? それも、我が同胞の血肉を使って!! 冒涜……! 全てを冒涜する存在……!!』
「人聞きが悪いな。エコだよ」
俺は腕をぶんぶん振り回しながら、将軍に歩み寄った。
『おのれ! おのれ! おのーれぇーっ!! これより東方に攻め入るはずであった我が軍が! どうして突然貴様のような! 存在するはずのない怪物に……』
「おう、ちょっと力入れてぶん殴るぞ。じゃあな!」
俺は一歩踏み込んで、素人丸出しのテレフォンパンチを放った。
将軍はこれに、巨大な槍を振り下ろしてくる。
俺と将軍のデカさの左は五倍くらいか。
だが、俺の後ろにはオルトファースの影が伸びている。
デカさでも体積でも、俺の勝ちだ。
そして俺は、この体のサイズからも想像できないレベルの力持ちでな。
拳が槍をひしゃげさせ、へし折り、突き進み、将軍の顔面に到達し、一撃で首を殴って消し飛ばした。
『ウグワッ』
最後まで言わせないぞ。
これにて、将軍は終わり。
頭が吹っ飛んだ直後、衝撃波が吹き荒れて奴の全身がバラバラになった。
そこに巻き込まれ、残る軍隊も全滅する。
「よし、リサイクル! 肥料になあれ」
俺がパチンと指を鳴らすと、死んだケンタウロスたちは全て、大地の肥やしになった。
あれ?
残ってる死体があるぞ?
もしかして……こいつらに全滅させられた人間の死体?
「よーし、特別サービスで復活させてあげよう。初回のリサイクルのみなら、人間の因子を残した吸血しなくても平気なレッサーヴァンパイアだからな」
「手伝うね! 集めるよー!」
アニタが死体を拾っては、こっちにポイポイ放り投げてくる。
俺がこれに、空中でリサイクルを使う。
そうすると彼らは再生して息を吹き返し、見事に着地して横に避けていく。
流れ作業だ。
ガンガン復活させるぞ!
およそ百人ばかり復活した辺りで、めぼしい死体はなくなった。
もうちょっと死んでるかもだが、この辺りには見当たらないな。
そうしたら、城壁の方でワーッと歓声が上がった。
壊れかけの門の真上に、人間の将軍っぽいのが出てくる。
「我が国の戦士たちを蘇らせてくれた!? も……もしやあなたは、神から遣わされたお方でしょうか!!」
「そうだ!」
俺は即座に返答した。
俺の能力は神様みたいなもんだからね!
広義の神と言っていい。
俺が今決めた。
ファルメラがソーラーカーの中で、呆れてポカーンと口を開いているのが見えた。
まあまあ、いいじゃないの。
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