第80話 帰ろうと思ったら……!
たくさんの資料を読ませてもらった。
俺は大いに満足したのだが、これはあれだな。
後日改めて、ヘルガーディアン連れてこないとだめだな!
恐らくファラオシティにはない知識がここにはあった。
完全に循環可能になった都市システムとか、ラグランジュポイントに設置される海上都市の話とか、軌道エレベーターとか。
俺は面白かったけど、全然覚えきれないな!
「ということでお世話になったな。帰ろうと思う。ついでに村長、仲間を連れて観光に来る?」
「なんと! いいのですかな!?」
「もちろん! その代わりにここにはクローバーを置いていこう」
「お、お、俺を!?」
仲良しのマンマーがいるからいいだろう。
悪いな、ソーラーカーは四人乗りなんだ。
乗れてあと一人、子どもくらいかなあ。
結局、村長以外は村の少年が一緒に来ることになったのだった。
サンドパレスを大いに楽しんでくれよー。
幽霊船を使って湖を渡り、やってきた湖の入口へ。
ここで、大いなるヒロピン号とはお別れだ。
こいつはヒュドラが復活しないよう、目を光らせておく任務があるからな。
ヒュドラを滅ぼしてしまえば話は簡単なのだが……。
あいつ、この湖に長く君臨したことで、その存在が生態系に組み込まれちゃってるっぽいんだよな。
排除すると、しばらくの間は湖の自然環境が乱れる。
エコのために活かしておいてやるのだ。
バラバラにしておけば、生贄を取るほど調子には乗らないし。
こうして外に出た俺達なのだが……。
湖の仲間たちに見送られて走り出したら、向こうから何かが飛んでくるではないか。
なんだなんだ。
あっ、バルログだ!
『リョ、リョウ様~!!』
「おー、俺はここだ。そう言うお前はベランじゃないか。ベスとカイはどうした」
『うう、変わり果てた姿に』
「あっ、生首になっている!! こいつら、フラグを見事に回収しやがった!!」
俺は己の予想の的確っぷりに震え上がった。
調子に乗った強いキャラは、その隙を衝かれて叩き潰されてしまうのだ!!
『面目ない、主ぃ……! 主はずっと、俺達が調子に乗って負けるんじゃないかって言ってくれていたのに……』
「いやいや、慢心するのはバルログの業病みたいなもんだからな。で、どうだった? 何にどうやってやられた?」
『ああ……ありゃあな……。悪食王と呼ばれる化け物だぜ……。俺らの炎を全部喰らっちまいやがった。奴の手下どもはそうでもなかった。序盤は押せ押せで行けてたんだが、悪食王が出てきてから状況がひっくり返ったんだ』
「俺は偵察に行ってきて、戦わずに帰れよって言ったはずなんだけど……」
『ううっ、倒しちまっても構わんだろうって気持ちになって、イケイケになってた! その結果、俺以外のバルログは全滅……!! 面目ない……!』
よよよよ、と泣き崩れるベランなのだった。
これを見て村長が「ふーむ! 悪食王とおっしゃいましたかな!」と唸った。
「知っているのですか村長!」
「ええ。ここより遥か西方の地。乾いた大地に広大な内海を擁する場所にて、巨大なる半島に覇を唱える魔人ですよ」
「ほほー。強いの?」
「かつて魔王オルトファースと戦い、一度は打ち倒されています。ですが時間をかけてその力を取り戻し、最近はこちらへの侵略を試みていると言われています。その他にも、内海には恐るべき海賊船団がおります。魔人船長が統括するという海賊船団が悪食王と拮抗し、こちらまで攻めてこれぬのでしょう」
「なるほど分かりやすい!!」
「村長さんすごーい! 物知り!」
「素晴らしい解説でしたわねえ」
やんややんやと盛り上がる俺達。
緊張していたらしい村の少年も、俺達が村長を大いに褒め称えるので、嬉しくなったらしくて笑顔になって拍手した。
『ぐうう、人間ですら分かることが俺には分からなかった……! もう消えてしまいたい』
「あっ、心が折れている! 人間ですらとか言っちゃだめだぞ。力以外の点で優れてるところも多いんだから。よし、じゃあ三人衆を復活させるか」
『済まねえ……! バルログの戦力を削り、三人衆まで俺一人に……って、えっ!? 復活!?』
「リサイクル!!」
俺は力を使った。
首だけ残ってりゃ、なんとかなる。
周囲の因子や、土や木々を吸い込み……。
ベスとカイの体が再構成された。
「す……凄い!! 無から有を作り出す。まるで、かつて存在したという神の御業のようだ。いや、神を名乗る存在が現れたことは知っているのですが」
神を名乗る存在……?
まあいいや。
それは後で聞こう。
『ウグワーッ俺の体がーっ! ……あれ?』『調子に乗るんじゃなかったー!! ごめんなさい主ーっ!! あれっ!?』
「いよう!」
倒れてのたうち回る二人を見下ろす俺。
ベスとカイは俺を見て、ハッとした。
『あ、あ、主……!』『いや、これには深い理由があって……』『お、お前らー!!』
ベランが復活した二人を抱きしめた。
すごいパワーだったらしく、二人が『ウグワーッ』と叫ぶ。
「ちなみにベスもカイも、ありあわせの素材で復活させたからな。バルログとしての本領を発揮するには数ヶ月掛かるだろう。リハビリしておくようにな!」
『へい』『へい』『付き合うぜ……!』
ここで、ベランから西方の話をよく聞いておく。
なるほどなるほど。
悪食王は、体が巨大な化け物の頭になった甲冑を纏う、異形の将軍か。
で、そいつに付き従う魔将とでも言うべき、武人型の魔人が何体もいると。
こいつらと正面からぶつかったら、バルログ軍団五十体が全滅したわけだな。
強いじゃないか。
バルログをリサイクルするためにも、西方に向かう必要があろう。
「村長。少年。サンドパレスに行く前に、ちょっと西方で悪食王を叩き潰してよろしいかな?」
「なんと!? そのような危険な土地に……!? 私たちは足手まといになりませんか?」
「なに、俺の後ろに隠れていてくれれば安全だから」
目的地変更!
悪食王を蹴散らし、バルログたちを回収に行くぞ!
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