第78話 幽霊船も出てきた
『おおおおーっ』
「あ、大いなるヒロピン号じゃん」
俺がふわ~っと浮かび上がると、やってきた幽霊船から水夫たちが一斉に手を振った。
「ここでヒュドラたちを従えて、頑張って統括してるらしいじゃない。どう?」
『おお、おおおー』
船長が身振り手振りで説明してくれる。
シンカイの三面六臂の大暴れでヒュドラは倒されたと。
で、ヒュドラの眷属連中はアニタがまとめてなぎ倒した。
パパールは水魔たちをそのパワーでふっ飛ばした。
ということで、水魔たちは完膚無きまでにやられて、リョウ&フレンズ軍に降参したということだった。
「なんか来てみた感じ、科学的なものが何もないんだけど。なのに、あっちだと砂漠緑化作戦みたいなのが行われてたでしょ。なのにここに来たら、普通の水っぽい魔人がいるだけでさ」
『おお、おおおー』
「あっ、湖の沿岸に人間が住んでて? 魔人たちと戦ってたと」
「その人達ね! ジェプティスさんに似た感じだったから、あたしが行ってお話したんだよね。そしたらヒュドラが、生贄をよこせって言ってたから戦ってたらしくって」
「ほうほう」
アニタもふわ~っと上がってきて、説明を補足してくれる。
なるほどなるほど。
「それで、シンカイさんがヒュドラをやっつけたでしょ? そしたらその人間の人たちが敵の敵は味方だって言ってね、話を聞いてくれて。サンドパレスは砂漠の真ん中にあるって言ったら、その人達のご先祖様が、砂漠を草原に変えたりしてたんだって言って、やり方を教えてくれたの。魔法みたいだよね!」
「あー、なるほど! 話が通じる人たちがいたわけね」
この世界、交渉不能な人間ばかりではなかったのだ。
会ってみたいなあ。
『おおおー』
「なに? アニタが人間の女の子の外見だから、向こうも気を許したっぽい? シンカイが現れたら警戒モードになった? いやいや、それでも人間っぽい外見なら話ができるなら何よりじゃないか。行こう行こう」
俺の一存で、湖のほとりに住むという人々に会いに行くことになった。
「えっ、今度はこちらが魔人だと知っていても、交渉できる人間ですの!? あの寺院ですら無理でしたのに」
「ですねえー。俺も寺院にいましたが、あいつらは魔人は敵だーって言って譲りませんでしたぜ」
「怖いですねえ」
驚くファルメラ。
寺院の内情を話すクローバー。
無表情で相槌を打つマンマー。
『おおお……?』
「濃いのが増えただろ。どんどん賑やかになって、俺は実に楽しいんだ」
こうして幽霊船は湖の中を進んでいく。
途中で、ヒュドラの首の一つと遭遇。
『あっあっ、これはリョウ様! お勤めご苦労さまです』
「おう、お前も生贄なんか取らずに頑張れよ。そもそも人間から生贄を取るなんて、魔人側の自己顕示欲とか嗜虐心を満たす以外の意味が無いだろうが」
『ぐぐぅ』
ヒュドラが悔しげに、水中へ没していった。
「あいつ裏切るぞ」
「リョウ様、突然何を仰るのです!? いえ、でも、あなたが言うことがでたらめだったことはありませんわね……。一見して意味不明なことでも、後にはその通りになりましたわ。皆。警戒をするようにして下さい」
『おおおー!』
幽霊船軍団が了承した。
ファルメラ、流石のカリスマである。
基本、軍団員を持たない彼女だが、俺の右腕みたいなポジションになってるんだよな。
彼女の言葉は、俺の言葉として捉えられている節がある。
間違ってない。
俺の言葉は色々分かりづらいらしいので、彼女というフィルターを通して易しく翻訳された方がいいだろう。
ヒュドラの裏切りに注意しつつ、人間の街に行くことにした。
来た。
幽霊船はやはり異常に速いな。
因子を使って水の流れを無視して進むからかな。
見えるのは、防壁に囲まれた港だった。
思った以上に科学っぽい壁じゃないか?
「傷んではいるが、この世界の技術レベルで作れる防壁じゃないな。その奥には牧歌的な村が見える……。そして村の中心にドームがある……。おーい、おーい」
「おーい、みんなー!」
俺が舳先に乗って手を振ると、アニタが股の間をくぐってさらに先に出て、声を張り上げた。
そうしたら、防壁の影からひょこひょこと顔を出す人間たち。
「アニタちゃんじゃないか」「なんだ、幽霊船に魔王が乗って攻めてきたのかと思った」
半分合ってる。
だが、アニタの顔が通じるのは強力だな。
「みんなー! あたしのとこの一番偉い人連れてきたよ! リョウさん! ええと、一応王様?」
「王様みたいなもんだな、うん」
「なるほど……理性的な方々ですわね」
ファルメラも顔を出したら、向こうの緊張感もほぐれたようだった。
俺達、見た目だけならかなり人間だからな。
クローバーも連れて、わいわいと降りて、彼らとおしゃべりすることにするのだった。
クローバーも見た目人間だもんなあ。
あっ、マンマー降りてくるな!
お前、何当たり前みたいな顔して降りてきてるんだよ!
「わたくしめはずっとこんな顔ですが」
「うわーっ、露骨に魔人なやつと一緒に!」「だけどあんまり怖くない外見だな……」「魚の頭をしただけの人間だもんな……」
あっ、イケるっぽい。
「じゃあこいつはこのまま連れてきていい? 悪いことしないから」
「あたしが保証するよ!」
「アニタちゃんが言うなら信用するかー」「よし、どうぞどうぞ」「何せ、あのヒュドラを倒してくれた英雄様なんだ」
彼らは俺達を通してくれる。
向かうのは、村の中心にあるドームらしい。
砂漠緑化作戦ご協力のお礼を、是非伝えねばな。
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