第76話 湖到着、行ってらっしゃい三人衆
ソーラーカー、光纏うヒロピン号が大地を駆ける。
速い速い。
ソーラーカーがこんな速くていいのかよと思うが、ハイブリッドカーなんだからそんなものだろう。
排気ガスを出しているわけでも、化石燃料を使っているわけでもない。
実にエコである。
リョウ&フレンズ軍のモットーは、多様性とDEIです!!
かなり体現できてると自負してるな。
多様さに迎合しない敵は殲滅しているから、モットーは堅守している!
「はやいはやーい! 幽霊船も速かったけど、あれは空を飛んでたし、あんますごいなーって思わなかったんだよね」
「それはそうですわよ。こうやって大地に近いところを走っていると、速度を体で感じることができますわ。例えば乗馬をしていると、風を全身で受けるから速さを感じますわよ」
「ほえー、ファルメラ様って乗馬してたんですか? いいとこのお嬢さんみたいですねえ!」
クローバーが感心している。
これを聞いて、アニタがぷぷぷーっと笑った。
「ファルメラはお姫様だよー!」
「えっ!? ええーっ!?」
驚くクローバーに、やたら嬉しそうなアニタなのだった。
ちなみに俺は別の事が気になっている。
それは……。
「いつの間にアニタはファルメラ様相手にタメ口になったの?」
「リョウさん気になる? あたしたちって、リョウ&フレンズ軍の幹部っていうか、それぞれの軍団を統率する軍団長なんでしょ? だったらファルメラとあたしは対等だもん。だから敬語はなしで、お互い対等に呼び合おうねって決めたの! ねー」
「ですわよねー」
おっ、女子たちが仲良し!
良き良き。
「えっえっ、じゃあ俺は? 俺もなんかの軍団長だったりするの? ほら、こうやって特別扱いで連れってもらってるから!」
「クローバーは俺が賑やかしとして連れてきているので、別に地位は高くない」
「そんなぁ~!!」
「リョウ様、こういうタイプの方が本当に好きですわよねえ」
大好き!
停滞している状況をかき回してくれるからな。
疾走する光纏うヒロピン号。
日が落ち、夕方になり、夜になる。
ここで、ソーラーバッテリーに蓄えていたエネルギーで走る。
因子エンジンも効率よく使うことで、明け方まで走り続けられるのだ。
そして日が明けたら太陽を受けながらまた走る。
ひたすら走る。
不眠不休でも全く問題がないというのが、俺達魔人のいいところだな!
特に俺とファルメラとアニタは、基本的に体力を消費して疲れるということはない。
体力が無限大なのである。
なお、クローバーはただの上位キョンシーなので寝る。
今も、ぐうぐうと寝ている。
三日三晩走り続けるから、しっかり寝ているがいい。
「えーと、今の速度が時速50kmなので……。これで60時間掛かるわけだろ? 湖までは大体3000kmちょいの距離があるわけか。遠いなー。よくアニタたちは水に乗っただけで帰ってこられたなあ」
「あれはね、シンカイさんが水の中を通してくれてねー。真っ暗な水に乗ってすごい速度で運ばれたの!」
「あー! 地下水に乗って一気に来たのか! というか、アニタはともかく、パパールがそれに付き合って全然元気だったの凄いな。象は強いなあ」
オフロードは速いとは言っても、道路とは全然速度が違うからな。
こうしてガタガタ揺れつつ、後ろにバルログたちを引き連れたソーラーカー。
三日目の朝に湖へと到着したのだった。
うおーっ!
見渡す限りの水!
あれ本当に湖? 海じゃなくて?
「サンドパレスがある砂漠が、まるごと入っちゃう湖だって!」
「でけえ!」
説明を受けて驚く俺。
この世界、何気に色々とスケールがでかいな!
琵琶湖くらいのサイズだと思ってたんだけど、多分普通にカスピ海サイズくらいの湖なんじゃないの?
それはもう、淡水の海でしょ。
ソーラーカーを停めて降りると、背後でバルログ軍団も着地した。
三人衆と、彼らに付き従うバルログの軍勢だ。
総勢五十人くらいいるんじゃない?
『主よ! では我々はここで』『西方で魔王を名乗る不届き者をけちょんけちょんにしてやるぜ!』『最近イケてないバルログの地位を、俺達が押し上げる!』
「おう、頑張ってくれ。無理するなよ? 負けそうになったら逃げてきていいんだからね? 意地を張らずにデータを持ち帰ってきて、再戦してぶっ倒せばいいんだからな?」
『かぁつ!!』『勝つってばよ!』『バルログが負けるわけがぁ、なぁい!』
いかーん!
こいつら冷静さを失っている。
まあ、痛い目を見なきゃ分からないか。
バルログってのは個体は強力だが、基本的に他人を見下して掛かる連中だからな。
痛い目を見すぎた結果滅ぼされる可能性もあるが、一匹位は報告に来るだろう。
自分の力を過信するあまり、俺の話を聞かないんじゃ困るからね。
「いってらっしゃーい」
バルログたちを見送る俺なのだった。
そうこうしていると、アニタが湖にて水魔を呼び出していたらしい。
「リョウさーん! この人が案内してくれるよ」
「あ、どうもどうも! あなたが新生オルトファースと名高いリョウ様! なるほど、そこはかとなく威厳とオーラに満ちておられる……!!」
いきなり現れてヨイショしてきたのは、頭が魚、体が人間の種族だ。
な、なんだこいつー!
人魚のいらん部分を組み合わせたような見た目だな。
腕があるけど。
「あっ、わたくしめ、マンマーという種族でございます」
「マーマンの逆だ!! なるほどなあ! ……待てよ? お前の同類、生前にダンジョン配信者のチャンネルで見たことあるわ。そっか、この世界、あっちと繋がってるんだなあ……」
「リョウさん、この人が案内してくれるから、いこー!」
「ほいほい」
こうして、アニタが制圧したという湖を見て回ることになるのだった。
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