第75話 幽霊船無き今、いかにして旅立つか
旅立つに当たって、大きな課題がある。
大いなるヒロピン号を湖に置いてきてしまっているということは、移動手段の一つがないということだ。
またドラゴンゾンビで行くか?
『キュオーン』
「今は無理? というか邪悪粒子砲建造に手を貸しているので、しばらくは飛べない? そうかそうか。頑張ってくれよな! 帰ってきたら名前も付けてやるからな」
『キュオオー』
嬉しげに鳴いた後、ドラゴンゾンビは作業現場に加わった。
その巨体を大いに活かし、邪悪粒子砲建造を手伝うらしい。
これは重要な任務だから、徴集するわけにはいかないねえ。
「じゃあリョウさんどうするの?」
「そうですわよ。流石にこの距離を横断していくのは、いくら時間があっても足りませんわ。わたくしたち、せわしなく大陸のあちこちを行き来していますけど、移動手段を用意してすらもう半年近く経っていますからね」
「そんなに!?」
一箇所当たり一日とか二日で済ませてる気がしたけど、行きと帰りの長さとか、地元で過ごす時間とか合わせるとかなりの月日が経過しているのだった。
その間に、リョウ&フレンズ軍の噂は大いに広がっているようで……。
「何と呼ばれているんだろう」
「魔王軍だねー」
「なんと風情のない!」
アニタに教えてもらって、俺は天を仰いだ。
ありきたりなのがよくないと思ったのと、みんなに支えられての俺なので、リョウ&フレンズ軍としたのに。
これは俺達がただの魔王軍ではなく、名実ともにリョウ&フレンズなのを知らしめねばなるまい。
「ということでだな、移動手段はジェプティスと相談して用意することにする。あれ? ファルメラ様ついてくるんですか? 確かについてきてくれると嬉しいですけど」
「あなたを野放しにしたら好き勝手やりますから」
確かに。
彼女がいることで、俺の中に、彼女を守らねばという気持ちで一本背骨が通るのだ。
これによって愉悦と嗜虐の化身にならずに済んでいるところはある……。
「三人衆とバルログ軍団は何をやっても、空を飛んだりしてついてくるだろうから……あとは四人くらい乗れる乗り物を作ればいいんだな」
「四人なの?」
「ああ。今回はクローバーを連れて行こう」
サンドパレスにて、俺がいない間の名代はラッシュに任せることにした。
『はあー!? わ、わ、わしですか!? もっと強力な力を持った者たちがおると思いますが!?』
「力が強かろうが、判断がアホだったらおしまいだろう。その点、ラッシュはビビリだからいい感じで防御的な判断をするだろう。お前に従わずに攻撃に出るやつがいれば、それはそれでいい。お前に従う魔人たちはきちんとサンドパレスの防御を固めるだろう。それでいい」
俺は常に、勇者による攻撃を想定しているのだ。
腰が引けてる感じで防御を固めれば、いかに勇者であろうと攻めきれまい。
これはそういう確信がある。
逆にあいつは、攻め攻めで押し込んでいくとカウンターで致命的な一撃を決めてくるタイプだ。
「で、今回はクローバー、お前が来るんだぞ」
「へい! 任せてください旦那!」
見た目は精悍な男なのに、物言いとか態度が三下なキョンシーだ。
一応、寺院で作られた強力な因子式の携行武装と、それを使いこなす熟練の戦闘技術を持っているぞ。
そう。
こいつは別に弱くないのだ!
アニタとファルメラとクローバーを連れて、ジェプティスのところへ。
もうファラオシティに行っちゃう。
『ふむ、移動用の手段ですか。確かに砂漠が緑化される前ですと、そのままでの移動は難儀しますよね。幽霊船は湖の統治のために必要でしょうし。では、これを使って下さい。大型ソーラーカーです』
「科学的な物が出てきた!!」
『フフフ、当時のものは劣化して壊れてしまっていますので、素材をマミーたちに集めてもらい、この場で新たに組み立てました。因子とソーラーエネルギーの双方で動きますので、昼間は内蔵バッテリーにソーラーを溜め込み、因子とのハイブリッドで走行します。夜間はソーラーエネルギーを解放して走り続けられるわけです』
「凄い」
『問題は、運転が少々癖がありまして。ハンドルとシフトレバーとアクセルにブレーキは使いこなせますか?』
「生前は運転免許持ってたんだ。いけるぞ」
ここで生きる、俺の普通免許取得という能力!!
ちなみにソーラーカーはマニュアル車だった。
この世界、硬派なまま発展したんだな……。
「まあ、車輪がついた箱ですわね? 柔らかそうな座席があります」
「へえー、面白そう! 今まで乗ってたのと全然違うー!」
「少々窮屈そうですが……」
『因子エネルギーで車内に冷房がかかりますので』
「すごい!!」
俺は素直に感心した。
なお、このソーラーカーはバルログたちから見ると、
『貧弱!』『こんな小さな箱で砂漠を!?』『冗談でしょ』
そんなレベルの話らしい。
種として強い連中はこれだからなあ。
バルログ最大の武器でもあり、弱点でもあるよな。
こうしてソーラーカーはエレベーターに載せられ、大型エレベーター内の通路に出た。
既に、運転席には俺。
助手席にアニタ。
後部座席に、ファルメラとクローバーがいる。
全員シートベルトを締めているぞ!
「前方よーし!! 右よし、左よし、後方……よーし!」
「よーし!」
アニタが真似してきた。
「これより、ソーラーカーは光纏うヒロピン号と名付ける! 光纏うヒロピン号、出発!!」
ブオーン!!と因子エンジンが唸りをあげた。
走り出す、光纏うヒロピン号!!
なかなかの初速だ。
外に飛び出し、階段を駆け抜けていく。
太陽光線を全身に浴びると、ソーラーバッテリーのメーターがちょっぴりずつ動き出した。
溜まれ溜まれ……!
ノンストップで湖まで走るんだからな!
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