第73話 邪悪粒子砲を建造するぞ
邪悪粒子砲の建造が開始された。
マミーたちがワイワイと集まり、ジェプティスの設計図に従って部品を運んでいる。
現場監督はヘルガーディアンが務めているのだ。
俺は見てるだけ。
「手を貸さなくていい?」
『リョウさんは粒子砲の設計をご存じないでしょう。いかに能力で再現ができるとは言え、知らぬものを見た目と機能だけコピーしては先がありません。ここは、内部まで深く解析を終えた私に任せていて下さい』
ジェプティスが大変頼りがいのある発言をする。
なお、この場にはオトハ将軍に召喚されたキョンシーも集まり、現場作業に加わっている。
数がかなりいるから、こりゃあ順調に進めていけるぞ。
寺院から連れてきたキョンシーは、俺の近くでラッシュたちとお喋りしている。
こいつは見事に生き残ったので、幸運の男クローバーと呼ぶことにした。
名付けたら、第四位階くらいまでレベルアップしたぞ。
『いいかクローバー! いかにお主が寺院で神様のお手伝いをしていたからと言って、侍従の先輩はわしらじゃからな!』
「ウボア!」
「分かってますってー! 俺ぁ兄貴たちの後ろ姿を見て、勉強させてもらいますよー」
『兄貴!? わしらが兄貴じゃと!? き、聞いたかヘッドレス! わしらに弟分が!!』
「ウボアウボアー!」
「お供しますぜ兄貴ーっ」
おっ、なんだか妙な人間関係と言うか、魔人関係が構築されていっているな……。
ラッシュとヘッドレスとクローバーがわちゃわちゃしながら、向こうに行った。
「着実にリョウ&フレンズ軍は賑やかになっていますわね……。ほんと、ああいう賑やかしな方々がお好きですこと」
「俺の趣味みたいなもんですねえ」
ファルメラの言葉に、俺はへらへら笑った。
だって、損得無しの彼らがいると場が明るくなるだろう。
明るいってのはいいことだ。
とか思っていたら、向こうで三人が「ムギャーッ」とか声をあげている。
「なんだ、どうした」
駆けつける俺。
三人は城壁の外を指さして、わなわな震えているではないか。
「た、た、大変ですぜ旦那ーっ!! 砂漠に、砂漠に!」
『砂漠に川が生まれつつありますぞーっ!!』
「ウボアー!」
「なんだってー!」
城壁から身を乗り出してみると、確かに遠方から青い物がするする伸びてくる。
川というか大河だ!!
大量の水が押し寄せてくるぞ!!
砂漠にたまに起こるという洪水か!?
サンドパレス、水に対する備えはしてない気がするぞ!
「バルログどもー!! 高台に上がれー! 水が来るぞー!!」
俺が声を張り上げて叫ぶと、あちこちでダラダラしていたバルログたちが、うわーっと高いところに登っていった。
お前ら弱点が多いんだから注意するんだぞ!
「しかし洪水とは参ったな……。中に入り込んできたら、粒子砲の完成が遅れる。流石の俺も、洪水を食い止めるのはちょっと手間がかかるぞ」
さて、どうしたものか。
考えようとしたところで、俺は洪水の最前線に何かが浮かんでいるのが見えた。
あれは……イカダだ!!
そしてイカダの上に大きな象がいる!
パパール!?
パパールの上に、パラソルを差したアニタが!
イカダの下に、シンカイが!
「リョウさーん!」
「ぱおーん!」
『主よー!!』
「うおおおー! お前らだったのかー!! 無事だったのかー!!」
俺は城壁から飛び降りて、洪水に乗ってやって来る彼らを出迎えた。
押し寄せる水に見えたそれは、城壁の周囲をぐるりと巡ると、そのまま砂を削りながら地中に没していった。
『では、我はこれにて! 砂漠が緑化された時、またお会いしましょうぞ。それまでは地下水の中に潜んでおります』
「ああ、お疲れ、シンカイ!」
シンカイは水とともに、地下に没していった。
アニタとパパールが、イカダから降りてくる。
「ぱおーん」
「おおパパール、元気なようで何よりだ。なにっ、イカダに砂漠緑化の元を持ってきた? どれどれ……?」
「リョウさーん! すごいんだよー。水魔の人たち、あたしとシンカイさんとパパールでえいやってやっつけたら降参して、色々な魔法を教えてくれたの。その一つがこれでー」
「ほうほう、魔法? イカダの後部にはたくさんのイカダが連なっていて、大量のゴミが乗っているように見えるのだが……」
すると、後ろのイカダに乗っていた吸血鬼村の面々が飛び出してきた。
「こうだ!」「おりゃー!」「ぶちまけろー!」
「うわー! 砂漠にゴミを!! ヘドロみたいなのとか、動物の死骸とか、腐った水草とか!」
「これに、オオナマズの皮をなめしたやつを掛けていきます。みんなー!」
「おー!」「任せとけ!」「おりゃー!」
吸血鬼村の面々が動き回っている。
たちまちのうちに、城壁の周りがゴミと、それを覆うオオナマズの皮でいっぱいになってしまった。
どうやらオオナマズの皮は陽の光を通さず、ゴミの水分も外に逃さないらしい。
これではゴミは腐ってしまうのではないか?
「ゴミを腐らせて、そこに集まる生き物が土を作ってくれるんだって。あとはこのヘドロが水分を含んでてくれるから……」
「なるほど、砂漠に強制的に保水性を持たせて、緑化していくわけか……!」
水分はさっき、地中に沈められた。
あれを使って、雨季が来るまでしのぎ、雨季でまた大量に水を補給。
緑が増えると気候が変わるので、雨が来るようになったりする。
こうして、サンドパレス周りを緑豊かな土地にしようというわけだ。
「なるほどなー! 魔法というか科学だ。もしかして水魔は、科学を使う系の魔人だったのではないか……?」
「みんなシンカイさんが従えたよ。緑化したら川ができてこっちまで来れるようになるって。楽しみだねえリョウさん!」
「あ、それは本当に楽しみ! よし、じゃあ張り切って砂漠緑化計画を進めていこうか! ついでに、粒子砲も完成させよう!」
「ぱおぱお、ぱおん」
「なに? パパールは現地の動物から、西方に魔王を名乗る新しい勢力が現れたと聞いたのか。ほうほう……。そっちも要注意だな……」
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