第72話 全速力で帰還した!
おお、遠くに寺院が見える。
神聖粒子砲があそこから放たれたのだが、見た感じ、射程は数キロといったところか。
多分、発射されてからものすごい勢いで減衰していくのだな。
使い勝手が悪いというか、だからこそ数キロの範囲内ならば最強の兵器だと言うか。
「いやあ、参った参った」
ドラゴンゾンビの背中に乗り、今回の寺院での反省会を始める。
「勇者が出てしまったのは計算外だった。オトハ将軍の自在棍も折られてしまったし」
「いえ師父、これは伸ばせるので折られても何の問題もないのですが、私の心が大変なショックを受けました。あんなに強い人間がいるなんて……。まさに、次元が違うというものですよあれは……。なんなのだあいつは」
「恐ろしい一撃でした。明らかにわたくしを攻撃する時、あの男は手加減をしましたわ。お陰でわたくしはこうやってここにいますもの」
「なにーっ、あいつ手加減してたのか! ありがとう」
俺は遠くにいるであろうゼクウにお礼を言った。
お前が手加減してくれたお陰で、ファルメラはこうやって元気でいられるからね。
『神様はあの男を勇者と呼んでいましたな。勇者というのはつまり、魔王オルトファースを倒したという勇者ですかな?』
「おう、その二代目と見ていいだろう。何の繋がりもないだろうが、この世界が俺のカウンターとして呼び出した男だ。つまり……あいつ一人で、俺と俺の軍団に対抗しうると判断されたということだ」
あるいは、世界が残された力を振り絞って呼んだのかもしれないが。
その戦闘力の一端は、ここにいる全員が目にしている。
うちの幹部が相手にならない。
あの次元の戦闘になると、素手だとか武器だとかリーチだとかは全く意味がないのだ!
俺の全権能とあいつのロケット空手、これが対等ということであろう。
「油断はできないな。今まで楽しみながら、その場の勢いで状況を進めていたが、細かく計画を立ててやっていくぞ。きちんと軍団を組織し、各地を支配して勇者パーティに備えるわけだ」
『おやマスター。その程度のことで、彼をどうにかできるとお思いですか? あなたと拮抗できるこの世界唯一の存在である彼を』
「無理だろうな。だが、やるのとやらないのとじゃ話が違う。いやあ、今になってゲームに出てきた魔王たちの気持ちが分かってきたよ! 倒されると分かってても、各地に支配地は作っておかないといけないよなあ」
ちょっと楽しくもあり、大変でもあり。
そんな俺達を乗せたドラゴンゾンビは、サンドパレスに到着した。
サンドパレス中央のタワーに、ドラゴンゾンビが着陸できるドラゴンポートが設けられている。
ここにこいつが着地した後、俺達はワーッと降りた。
すると、サンドパレスでは大量のマミーたちがひしめいているではないか。
マミーが家を作り、マミーが商店を作り、マミーが労働をしている。
大マミー社会だ。
「あっ、リョウ様が戻ってきたぞ」「おかえりー!」「おかえりなさーい!」
ワーッと歓迎される。
俺はその辺りのゴミから拡声器を作り出し、彼らの歓声に応えた。
「ありがとうありがとう! ひとまず帰還した! 今回の旅の成果と言えるものは間違いなく持ち帰れていると自負している! それは神聖粒子砲なる、勇者の遺産である神造兵器の設計である! これよりサンドパレスに、諸君らの因子を用いて近づく外敵を討ち滅ぼす、最強の兵器たる邪悪粒子砲の建造を始める!」
宣言をすると、マミーたちがワーッと盛り上がった。
だが、今日は宣言だけ。
仕事は明日以降になる。
まず、主な作業要員である太古の超高性能AI、ジェプティスと話さねばならない。
しばらく待っていると、ピラミッドの方から光の帯が出現し、こちらに伸びてきた。
ファラオのような姿をしたジェプティスが、光の上をスーッと滑ってくる。
『帰ってこられましたねリョウさん。あなたが旅立った後に因子の動きが活性化し、私の予言の内容が変化しています。それなりの後に勇者が現れるはずだったものが、あなたの寺院到着の直後に勇者が現れる形に修正されたのです。ははあ、その顔。出ましたね。遭遇しましたね』
「遭遇した。戦ってきたぞ。いやはや、とんでもない相手だった。ジェプティスに予言してもらって、心の準備ができてなかったら俺の冒険はあそこで終わってたかも知れん」
『ええ、ええ。無事に戻ってきて本当に良かった。どうです? ヘルガーディアンは役立ちましたか?』
「大活躍だった。こいつの中に邪悪粒子砲の設計データがあるので、建築を始めていきたいんだ。俺達も勇者に対抗して防衛力を強化したいからな」
『いいでしょう。今、私の中にヘルガーディアンのデータが転送されて来ています。なるほど、なるほど。因子を用いた超大型光学兵器ですね。これならば、ファラオシティに存在する資材で十分に作成が可能となります。スケールアップも可能です。では、やっていきましょう。ヘルガーディアン』
『了解です』
完全にジェプティスの端末となったヘルガーディアン。
メカ二人でトコトコと去っていくのだった。
うーん、SFサイドの奴らが本当に頼れるんだよなあ。
あとは、魔王サイドであるうちの仲間たちを強化するか……。
いや、十分に強いから、これ以上手を加える必要はない。
うちの幹部がゼクウにこてんぱんにされた理由は明らかだ。
「慢心……だな。弱い人間や魔人と戦いすぎた。本当に強い相手を知った今こそ、戦い方を見直す時だ!」
まだ、水魔攻略に向かったアニタたちは戻ってきていないが。
俺は邪悪粒子砲の建造と、リョウ&フレンズ軍の戦術的強化を果たすべく、頭を働かせ始めるのだった。
今まで俺が最前線で仕事してきたからな。
ここからは部下に任せつつ、人材育成モードよ。
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