第67話 寺院の中を勇者が練り歩いてる!
テシウスがぽかーんとしている。
「もしかして、さっきの彼にギフトを感じましたか?」
「い、いえ。オルトさんと同じように全くそんな事は無いのですが……。逆に言うと、オルトさん同様、ぼくが感知できない種類のギフトである可能性が高いです。明らかに新入りですから、昨日のうちに来たのだと思いますが……。あれほど元気で、しかも信じられないような軽装で来る者は初めてです。ただの難民であるはずがない」
だろうな。
あいつはどういうわけか、この寺院に召喚された勇者なのだ。
道着に黒帯にロケットブースターを背負ってるから、まあ現代人だろう。
「それで、どうするんですか? 危険ではありませんか?」
「あ、いえ。力がある者は受け入れるのが寺院の方針ですから、彼もまた中へと招き入れることになります」
な、なんだってー!
いや、そうなるとは思ったけどさ。
俺も同じ方法で入り込んだもんな。
しばらくして、兵士に連れられて勇者がやって来た。
「我々は力ある者を歓迎します。この世界を魔人から取り戻すため、共に戦いましょう!」
テシウスの言葉に、道着の勇者がうむ、と頷いた。
なんかモチベーションが低そうだな。
脅威だと思ったが、やる気がないならば敵対することは無いかも知れない。
「お名前は」
「ゼクウだ。俺は異世界転移をしたようなのだが、おかしなロケットを背中に背負い、不思議な世界に降り立っている。詳しい説明もして欲しい。だが、俺は特に目的らしい目的がないので、何を言われてもあまり心が動かないと思うが……」
なんかブツブツ言いながら連れられて行ったな。
異世界からやって来るやつは、俺も含めて変なのばかりなんではないか?
戻ってきたら、ちょうど牛がフリーで歩き回っているところだった。
後ろにぞろぞろと、学者っぽいのがついてきている。
「うわ、どうしたんだ牛よ」
『やあこれはこれはオルトさん。私は大変賢い牛なので、彼らが研究のために24時間態勢でついてくるのです』
「24時間ってなんだ?」「また新しい単語が出た!」「この牛は明らかに人間よりも賢いぞ」「なぜ賢いのか調べたいな」「解剖できないのか?」
物騒なことを言ってる奴がいるなあ。
俺はと言うと、また監視としてキョンシー化した兵士が戻ってきた。
まだアザレアが怪しんでいるのか。
「バレてないか?」
「まだバレてません。あとは、旦那のお仲間が寺院の中に入り込んでます。すげえべっぴんが二人ですぜ」
「ファルメラ様とオトハ将軍か! 彼女たちなら見つからないように行動もできるだろう。よし、寺院内の好奇の目は、牛が大半惹きつけてくれている。俺は俺で勇者ゼクウの動きなどを探りに行こう」
「あっしにもべっぴんさんを紹介してくださいよ!」
「お前キョンシーのくせに女好きだなあ。そうか、俺がちゃんと魔人化させたから、第三階位くらいにはなってるのかあ。いいか? 二人ともお前より遥かに立場が上の幹部だからな? それに強い。下手に手出ししたら寸刻みにされるぞ」
「うひー」
キョンシーが震え上がった。
ノリがいいやつである。
この寺院ミッションを生き残れたら、名前をつけてやるからな。
俺はこういう賑やかし役が大好きなのだ。
さて、二人で寺院の中を歩き回り、勇者はどこにいるのだろうと見て回る。
なんのことはない。
吹き抜け中央にあるホールで、この間の俺みたいに寺院の代表者に会っていたのだった。
おや、ローデスとアザレアもいる。
みんなゼクウに言葉を掛けているが、イマイチ要領を得ない返答しかないようだ。
やはりあの勇者、やる気がないな……。
「よし、脅威ではないと見た。戻って神聖粒子砲の構造を解析するぞキョンシー」
「へい! あれ? なんかローデスとアザレアがぺちゃくちゃ喋って、なんかアザレアにからかわれてローデスが怒ったら、あのゼクウって奴が身を乗り出しましたぜ」
「お前は何を言っているんだ。ヤツが他人の色恋を眺めて興奮するタイプの変態だとでも言うのか」
全く理解できん。
だが、なんだ。
この妙なモヤモヤ感は……。
一応警戒しておこう……。
まだ、あいつが何をやれるのかとか全く分からないが。
まさか、装備してるロケットブースターを使って凄い空手とかやるんじゃないだろうな?
いや、それはそれで脅威だな。
何せ、何一つ捨てず、消費せずに戦うスタイルだ。
俺の天敵と言っていい。
「ま、そんなバカなことあるはずがないか! どーれ、神聖粒子砲はっと……。同じようなの、サンドパレスに作れないかなー」
ガラス状になった砲口部分から、装飾のような金属の端子が壁を伝い、床を伝い、螺旋状に巡る寺院内部に広がっている。
寺院に住まう人々から因子を集め、あの必殺の一撃を放つのだ。
では、これを発射するスイッチはなんだ?
恐らく、システムからして連射はできまい。
『凄い建造物ですわね……。リョウ様はどこにいらっしゃるのかしら……』
おっと、久々にファルメラの思念が聞こえてくるぞ。
どうやら、螺旋構造のスロープを上がってきているところらしい。
俺が吹き抜けを見下ろすと、螺旋の中程にフードを被った女性二人がいた。
ファルメラとオトハであろう。
声を出したら見つかってしまう。
ここはじっと、やって来るのを待つしかあるまい。
うーん、我軍の課題は、通信手段がないことだなあ……。
それを補う手段が見つかればいいんだが……。
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