第64話 寺院の中を練り歩く
「テシウスさんはその目がギフトなんですね。僕のギフトは、壊れたものを元通りに直す力のようですよ」
「あの、あまり喋っていると隊長に怒られますよ……」
「大丈夫。僕の相方の牛が話しかけていますから」
ヘルガーディアンが、先程の口うるさい隊長にやたらと話しかけ、その注意を引いているのだ。
というか、あいつのことだから本当に興味本位で話しかけてる可能性が高い。
矢継ぎ早に繰り出される知的な言葉に、隊長が翻弄されているぞ。
お陰で、俺はテシウスと会話できるというわけだ。
「ぼくは、目と言うか、全身で魔力の流れを感じ、これを操ることができるんです。人の体に流れる魔力を活性化させれば身体能力が上がりますし、回復力も上がります。逆に流れを鈍化させれば、相手の体調を崩して動けなくさせられます」
「なるほどなるほど」
「空に満ちる魔力を使えば、それを直接相手にぶつけて攻撃もできます。そういう力です。オルトさんは、僕と比べると優しいギフトを授かったんですね。物を直す力なんて」
「ええ。世界はラブ&ピース。壊れたものも直して再利用して、エコに生きたいという僕の意思が反映されたのかもですね!」
テシウスと親しく話をしていたら、寺院の中にある広場みたいなところに案内されていた。
本来は狭い部屋で、ギフト持ちの人となりを確認するらしいのだが……。
今回は牛がデカいからな。
俺は聞かれた内容に対し、ごくごく正直に答えた。
山奥の村から出てきて、バルログの山や砂漠、ステップを渡り歩き、とうとうこの寺院にたどり着いたこと。
多くの仲間がいたが、今は離れていることなどだ。
一つも嘘を言っていない。
ただ、詳細を全く説明してないだけだ。
案の定、嘘を調べる魔法を使っている者がおり、そいつの魔法に俺の答えは反応しなかった。
こういう蒟蒻問答めいた屁理屈は得意なんだよな。
牛なんか、何を聞けばいいか分からず、逆にヘルガーディアンからの質問攻めで魔法使いはノックアウトされた。
強い。
『では私は寺院の中をこちら側から巡ってみます』
「ああ、俺は居住区を中心に回ってみる。またな」
二手に分かれる。
さて、寺院の居住区はどうなっているかな……?
広場の頭上は大きく吹き抜けになっており、俺と牛の姿は上の階から丸見えだったようだ。
テシウスに案内してもらいながら、上階にある居住区を見せてもらう。
「外にいる難民の人たちとは違った生活をしているんですね」
「はい。我々はその生活全てが魔人たちとの戦いです。かつて予言のギフトを持った者がこの寺院を開いたのですが、それはいつか、我々を救うために降り立つ勇者を迎え入れるためなのです」
「勇者? オルトファースを倒したというあの?」
「はい。その勇者が残した力が、神聖粒子砲です。この寺院の吹き抜け自体が、粒子砲に魔力を巡らせる装置になっているんです」
「へえー」
神聖粒子砲!
そいつが、俺達を攻撃した神造兵器の名か。
「その他にも、神聖銃が存在します。ありがたい経文を書いた弾丸を装填すると、弾丸が自動的に回転します。一回転ごとに経文を一度読んだ効果が得られ、それと同時に弾丸は浮力を得ます」
不思議な説明を始めたぞ……!
「やがてその浮力が一定値を超えた時、弾丸は己の意思で筒を飛び出し、悪しき存在へと突進していくのです」
「ああ、それがあの光り輝く攻撃!」
「ええ、そうです! ……あれ? どこかでそれを見ていたんですか? まるで攻撃されたかのような物言い……」
「いえいえ、僕は想像力豊かなので、そういうもので攻撃されたらどうなるんだろうとね。想像してしまったんです。それについ最近も、空に向かって使用していましたよね」
「確かに……」
よし誤魔化せた。
居住区は螺旋のスロープとなった寺院内、その二階に存在していた。四人一組で一つの部屋で、ベッドとテーブルだけがある簡素な作りだな。
おっと。
見知った顔だ。
「新入りか?」
ローデスだ。
俺には気づいていない。
「はい。オルトと言います。よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。外の世界、魔人もだけど悪い人間も多い。俺らはそういうの全部と戦わなくちゃいけないからな」
苦労してきたのか、顔つきが大人びているように思う。
背丈も少し伸びたか?
あれから結構な月日が経ったからな。
「ローデスさん、彼はギフト持ちなんです」
テシウスの説明を聞いて、ローデスが目を見開いた。
「ほんとか!? 俺を入れても、三人しかいないからどうなってるんだって思ってたんだ。あの神聖粒子砲があれば魔人とは戦えると思うけど、俺がエルミジャッドを去った最後に見たあれ……。空に突き出した巨大な腕……。あれには通じるかどうか……。道具だけじゃなく、戦う俺達も強くならなくちゃいけないんだ」
「同感です。だからこそ、ぼくたちはオルトさんの参加がとても心強いんです」
「ええ! 全力で皆さんを支援します! 一緒に魔人を駆逐しましょう! 話が通じない人間も懲らしめましょう!」
ということで、大いに盛り上がった。
ここで、俺の寺院内練り歩きにローデスも加わる。
「次は祈りの間へ行きましょう」
「祈りの間? 神に祈るんですか? 世界は神に見捨てられたものとばかり思っていましたが」
「はい。神は世界を見捨てました。ですけど、神が残した力の残滓が、ぼくらみたいなギフト持ちを生み出しています。神がいなくてもこの世界には意思があって、外の世界から来た魔人を倒すために、人に力を与えているんだと思っています。ギフトが無くても、人は魔法や魔法の武器を使って戦えます。祈りの間は、そのために使われる魔力を高め、溜め込む場所なんです」
つまり、魔力貯蔵庫というわけだ。
どれどれ?
足を踏み入れてみたら、最後のギフト持ちがいた。
緑の瞳に銀色の髪をした小柄な女だ。
俺の作ったゴーレムを、見事に解体してみせた女。
これに弓使いのカレンを加えた四人が、当座、俺に対抗しうる人間側の戦力というわけね。
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