第63話 我らこそ選ばれしもの!(偽)
聖餐という名の炊き出しが始まった。
巨大な鍋で、粥がぐつぐつ煮込まれている。
俺にまだ食欲というものがあれば、美味そうに思えたのかも知れない。
見た目的にはおじやだな。
思った以上に具だくさんだ。
「改めてチェック。どうだヘルガーディアン」
『大量の因子が溶け込んでいますね。これを摂取した人間に素質があれば、一時的にでも発現することでしょう。そうした者を選別するためにもとても良い材料となっています。特に光に特化した因子などはありませんので、ファルメラさんやオトハさんが口にしても問題はないでしょう』
俺とヘルガーディアンで、ぴったりくっついてヒソヒソ話をする。
今、こいつは牛の姿をしているのだ。
牛が炊き出しに並んでいるのは目立つからな。
この上、喋って目立つことは避けたい。
「リョウ様、ヘルガーディアンには待っていてもらえばよかったのではありませんの?」
「近づかないと分析しきれないでしょ! あ、俺達の番だ。器は自前で用意するものなのね。よし、じゃあその辺のゴミをリサイクル。全員分の器ね」
「ゴミですの……?」
「ファルメラ様なんて嫌そうな顔を。大丈夫、リサイクルしたら汚いのは排除されてるからキレイキレイですよ」
「気持ちの問題ですわ! まあ、背に腹は変えられませんものね」
なお、俺が力を使う様子を、寺院の一人がじっと見ており、大変驚いている。
いかんいかん。
俺達がギフト持ちを装う前に、見つかってしまうではないか。
牛は注目され、ちょこちょこ難民が寄ってきては、
「た、頼む……! その牛の肉を分けてくれ」
とか言ってくるのだが、ヘルガーディアンはそもそも岩と土で出来た鎧を纏っているのだ。
食えるわけ無いだろ。
食べさせて苦しんでる姿を見るのも一興だが、そんな事をしたら目立ってしまう。
お断りしておいた。
で、俺達の番だ。
粥をよそってくれるのは、俺のリサイクルを目撃した寺院のやつだ。
俺はフードで顔を隠しつつ、口元はちょっとへつらうような笑みを浮かべておいた。
続くファルメラはなんか気高く、オトハ将軍は元気いっぱい。
ラッシュは無邪気に粥を受け取って、じゃあ食ってみようということになった。
「食事を終えたものは立ち上がるように。選ばれしものがいれば、我らが寺院に迎え入れよう」
ほうほう。
何らかの方法で、ギフト持ちが現れたのを察知するようだな。
俺達の場合はどうかな……?
俺はザラザラーっと粥を流し込んだ後、ヒョイッと立ち上がった。
あれ?
誰も立っていない。
みんな、貴重な食事をゆっくりゆっくりと味わっているではないか。
こ、これでは俺が、食事に何の興味もない事が明らかになってしまう!
俺は慌てて、リサイクルを使った。
「あっ、聖餐をいただいたら力があふれる~! ぼろぼろになった布が立派な衣装にリサイクル~!」
普通に力を使って衣類をリサイクルしたところ、難民たちも寺院の人たちも、普通に仰天した。
「な、何が起こった!? おい!」
「あ、いえ、ギフトの反応はあったかな……? 無かったような……」
「だが、見れば分かるだろう! 廃棄された品が新品のように変化した。これほど分かりやすく、そして強力なギフトなど見たことがない! 皆! 神の祝福を受けた者がまた一人生まれた! 我らガルフィーン寺院はお前を迎え入れよう!」
どうやら宣言してる奴が、偉い人のようだな。
俺はへりくだった。
「ははー! ありがたき幸せ」
これで寺院への潜入ができるぞ。
どういう構造なのか、隅から隅まで見てやろう。
なお、その後、連続でギフト持ちが出てもよくないだろうということで……。
俺とヘルガーディアンだけが寺院に入ることにしたのだった。
「この牛、ギフト持ちです!」
『こんにちは皆さん。私はヘルガーディアン。賢い牛です』
「うわーっ! しゃしゃしゃ、喋ったぁ~!!」
一発で通ったぞ。
俺は仲間たちに、
「では俺が潜入して調査してくる。ちょいちょい防衛機構みたいなのに穴を開けておくから、適当に入ってきてくれ」
「分かりましたわ。調子に乗ってヘマをしないでくださいね」
「任せとけ。顔も声も変えて諜報活動をしてやるさ」
久々のほぼ単独行動だぞ。
ヘルガーディアンはあえて寺院連中と対話を行い、そこからの情報収集を試みるとのことだ。
俺は優秀なギフト持ちとして、寺院内で行われている謎の作業みたいなのを探っていこうと思う。
ではスタート!
イケメン特撮ヒーローっぽい顔をササッといじり、ちょっと影のある白人男性俳優の顔にしておいた。
声色も、それに合わせて軽くかすれた感じに。
プロポーションは白人だから、骨格は少し大きめ、太めにデザイン。
これでフードを外して、顔をあらわにした。
難民の女たちから、ハッとした視線が注がれる。
よし。
もしも寺院内でローデスと会うことがあっても、俺だとは分からないだろう。
「君の名前は?」
「はい、僕はオルトです」
オルトファースボディを使ってるからな。
その名の響きに、寺院の男は顔をしかめた。
年齢は中年くらい、髪はすっかり白くなっている男で、髭は整えられている。
俺のリサイクルに気付いた男はまだ若く、黒髪に浅黒い肌で、目が大きい。
じっと俺のことを見て、口の中でぶつぶつ言っている。
声に出さなくても聞こえているぞ。
「おかしい……。全く、全くと言っていいほど、ギフト使いに感じる魔力が見えない。もっと違う、見たことがない魔力がぐるぐると渦巻いてる……。こんなの初めてだ……。すごい人なのか? ひょっとして、もしかして、人間じゃないんじゃないか」
「僕は人間ですよ。安心して下さい」
「!?」
声にならない呟きを正確に聞き取られて、彼は驚いたようだ。
「あなたもギフト持ちでしょう? 僕の魔力を見ていたんだ。そういう目を持ったギフト持ち。違います?」
「そ……そうだけど」
「テシウス! まだ海のものとも山のものとも知れぬ相手に、手の内を晒すな!」
寺院の男に叱られる若者なのだった。
なーるほど、テシウス。
これで四人目のギフト持ちだ。
この寺院、ギフト持ちを集めて、何をしようとしているんだろうな。
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