第60話 三人目のギフト持ちに遭遇するぞ
「ご注意下さい。この辺りには怪しい気配がします」
冷静な声がする。
俺達の前に向かおうとしていた人間たちが立ち止まり、振り返った。
そこには、まだ年若い少女と呼べるような年齢の女がいる。
白く染められた毛皮のコートに身を包んでおり、フードの奥で緑色の瞳が輝いていた。
ほほーん、ありゃあ、俺の姿が見えているな?
何らかのギフト持ちと見た。
彼女は周囲を怪しげに見回しており……。
ありゃ?
俺を直接的に視認はできてないな?
よし、彼女の疑惑を間違った形で確信に変えてやろう。
俺は地面に手をついて、リサイクルを使用する。
かつて巨岩だった土が、岩が、俺の尖兵として再利用されるのだ。
「!! 何らかの魔力が使われています! 気をつけて!」
『ズモモー!』
すると、人間たちの眼の前に岩でできたゴーレムが出現!
大きさは3mくらい。
こんなもんでいいだろ。
「モンスターだ!」「地面から現れた!?」「ここは氷魔のテリトリーだったはずだが」「なるほど、氷魔が騒ぐはずだ。こんな見たこともないモンスターが出るとはな……!」
「皆さん、迎撃です! 全身に魔力を纏ったモンスターです! いえ、まるで魔力のみで構成されているような……。信じられない。こんなモンスターが存在できるなんて……!!」
鋭い!
岩と岩を俺の力で繋ぎ合わせ、無理やりそれっぽく動かしている存在……それがゴーレムなのだ!
基本、使い捨て型のモンスターなので、一定時間暴れると自壊するぞ。
カザン帝国で使ったやつは、人間を殺すとその魂を吸って魔力化するようになってはいたが。
今回のはそういう設定をしていない。
純粋にパワー型で、ひたすら暴れまわるやつだ。
イチマンジャク寺院から出てきた人間たちは、皆輝く装備を手にした。
おや?
剣だと思ったものがカシャンカシャンと音を立てて展開し、槍になった!
他の連中の武器も、携帯モードから展開モードに変形する。
これが勇者が残した技術というやつだろうか。
あるいは……ガランドーが言っていた、人間の中にいた見込みのある人物の作ったものではないだろうか?
「皆さん、攻撃を! その間に、私が魔力の流れを解きます! このモンスターと正直に戦う必要はありません!」
緑の目の女の分析に、俺は舌を巻いた。
するどーい!!
本当にその通りなのだ。
ゴーレムをまともに相手せず、こいつを構成する俺の力……ジェプティス風に言うなら因子を、バラバラにほぐしてしまえばいい。
恐らく、因子を視認できたり、直接操れるようなやつならそれが可能だろう。
このギフト持ちらしい少女はそれがやれるようだ。
「了解だ!」「行くぞ!」「うおおっ、凄いパワーだ!!」「だが!!」
みんな長物でゴーレムを突っつき、至近距離には近寄らないな。
賢いなあ。
『ずももー!!』
ゴーレムが腕を振り回して暴れるが、ゴーレムが踏み込むと何人かが下がり、何人かはゴーレムの側面から槍でちくちく刺す。
これが馬鹿にならない。
ゴーレムを構成する岩と岩の隙間を突かれると、これもまた因子がほどけるのだ。
ボロボロと岩塊が落ちて、ゴーレムの動きに隙ができる。
「やりますわね」
ファルメラが小声で呟いた。
「少なくとも、カザン帝国の兵士たちとは比べ物にならない練度ですわ。なるほど、かの寺院にいる者たちは相当な手練と見て間違いありませんわね」
「ううむ、仕合ってみたい……!」
オトハ将軍にも彼らの技量が分かるようだ。
一人ひとりが、エルミジャッドにいたウォリアーレベルの強さ。
さらに、チームワークとフォーメーションで相手の動きを制し、確実に戦闘力を削って倒す。
そういう戦い方だ。
「いやあ、強いなあ。派手さは無いが、並の人間が到達する強さの極致みたいな感じだな。一般バルログくらいなら倒せてしまうだろう」
俺の中の強さ基準は、バルログになっているのだ!
1バルログでゾンビが相手にならないレベル。
2バルログで複数人ならうちの幹部相手にちょっと持ちこたえられるレベル。
3バルログでバルログ三人組レベル。
彼らは恐らく、全員合わせて2バルログくらいはありそうだ。
このまま時間を掛ければ、ゴーレムが体力切れで消えてしまうなーと思った頃。
「見極めました。魔力の結び目! はっ!」
緑の目の彼女が、虚空に両手を突き出した。
指先が蠢いたと思うと……。
『ズモモ……ウグワーッ!!』
一瞬で、ゴーレムを構成する因子がバラバラに解かれてしまった。
結合を失い、因子は四方八方に飛び散ってしまう。
やるー!
ゴーレムは完全に力を失い、元の岩塊に戻ってしまった。
「流石は神の愛し子!」「魔術のギフトを持つ、寺院の天才児だ!」「この前、寺院に子どもを連れた若者が来ただろ? 彼もギフト持ちだったな」「一つ所に、ギフト持ちが三人も! これは何かが起きるのかも知れないな」
「戻りましょう、皆さん。これは恐らく、尖兵。これを作り出した恐るべき存在が現れる前に、寺院に戻るのです」
「おう!」「こんな恐ろしいものを尖兵にする輩か」「ゾッとしないな」
去っていってしまった。
「一瞬、ローデスの話をしてたな。そっかー、あいつ上手く寺院に逃げ込めたんだな。良かった良かった」
「リョウ様は人間の命などどうでもいいとお思いのはずなのに、一部の人間には優しさを見せますわね」
「そりゃ、若くて才能に満ちてるやつは生かしておきたくなりますよ。どんだけ強くなるか楽しみじゃないですか」
そして今、魔術のギフトを持つという少女と、糸のギフトを使うローデスが同じところにいると。
そのうち、矢のギフトを使うカレンも合流したりするかな?
それに名前は分からないが、あと一人いるようじゃないか。
次々に現れるギフト持ち。
やはり、ジェプティスが予言した勇者の登場が関係していると見るのが自然ではないだろうか。
さて、まずは寺院に潜入してだな。
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