第59話 氷魔は話が通じない
いきなり吹雪が発生した。
さっきまで空は晴れていた気がしたのだが、一面の曇り空になっている。
降り注ぐ雪。
というか雹!
吹き荒れる風!
『オォォォォォォォォ!!』『オォォォォォォォォォ!!』
風に乗って叫び声が聞こえてくる。
薄暗い曇天の中、吹雪に紛れて飛び回る影。
氷魔である。
「まあ、俺達は闇を見通せるので全く問題ないのだが。ほうほう、氷魔とは毛むくじゃらのムササビみたいな連中なんだなあ」
「あまり可愛くないですわね……。なんかこう、醜いですわ」
「ねー」
「しかし……この雹が厄介だな。人間であればひとたまりもあるまい。これで獲物を弱らせて、タイミングを見計らって一気に襲いかかるつもりだろう」
オトハ将軍が鋭い目で敵を見据えながら、自在棍を振り回しながら攻撃を跳ね返している。
「トゥエルブ・ブレス!」
十二の珠が飛び出し、ファルメラの周囲を回転しながら雹を迎え撃つ。
『あれっ? これ、わしらノーダメージですぞ?』
「そりゃあ、ラッシュとヘッドレスは氷属性攻撃無効だもん」
『なんじゃとー!』
「ウボアー!」
『こうしちゃおれん! ここはわしらで切り抜けるぞヘッドレスー!』
「ウボアー! ウボボボボ、ボアー!」
ラッシュをヒョイッと取り外したヘッドレスが、首の所からカッコいい剣を取り出した。
「ウボボ、ウボア」
「えっ、ガランドーが作ってくれたの!? いいなー! 専用武器じゃん!」
『わはは! 神様、わしらの活躍を見ててくだされー!!』
ラッシュが飛ぶ!
雹の嵐を全く気にせず飛んでいく!
『オォォォォーッ!?』
攻撃が通じないので、氷魔が慌てているな。
すぐ近くまで、青く輝くドクロが近づき、目からビームだ。
『ウグワーッ!?』
氷魔の一匹が弾き飛ばされた。
さすがに氷属性ビームでは倒せないか。
だが、そこに駆け寄るヘッドレス!
手にした剣が、銀色の輝きを放ったと思ったら……。
氷魔の体が真っ二つだ!
「ウボアーッ!」
氷魔の背後まで駆け抜けて、かっこいいパースの効いたポーズをするヘッドレス。
背後で氷魔が、『ウグワーッ!!』と爆発した。
「かっこいいぞヘッドレス!? なんでいきなりヒーローみたいなアクションができるようになったんだ!?」
俺は驚きながら、氷魔の一匹を掴んでは捻り潰す。
『ウグワーッ!?』
ヘルガーディアンも雹による攻撃を無視しながら前進し、的確に氷魔の一体を捕縛。
『ヘル・コレダーッ!!』
『ウグワーッ!!』
一瞬で黒焦げになる氷魔なのだ。
うーん、強い。
何が強いって、こいつ、アホみたいに防御力が高く、さらに相手の動きを一瞬で分析して即座に捉える。
そしてコレダーの威力はなかなかのものだぞ。
女子たちが防御に回り、敵を牽制する。
ラッシュがビームで氷魔を弾き、戦場を駆け回るヘッドレスがこれを次々に切り裂く。
どうしてしまったんだヘッドレス!
お前は愉快なラッシュの土台ではなかったのか。
気がつくと氷魔が全滅し、吹雪が止んでいたのだった。
『交渉できる知性を持っていなかったようです。実は私は、持てる限りの言語を使って彼らに語りかけていたのです』
「な、なんだってー! 優秀だなあ。そこまで手を尽くしたけど、意思の疎通ができなかったなら殲滅も仕方ない」
新たに加わった、ピラミッドの超文明軍団。
実に強力だなあ。
『ちなみに彼らが移動してきた痕跡はこちらでサーチしています。巣に向かいますか?』
「いいね。協力を得られないなら、サクッと排除してそこを拠点にして寺院を目指そう。それとヘッドレス」
「ウボ?」
『今じゃあ! ヘッドレス、合体じゃ!』
「ウボアー!」
ガシーンと合体する、ラッシュとヘッドレス。
「なんかその剣、凄く強くない? なんでそれ持った瞬間にヘッドレスが強くなるの?」
「ウボボ、ウボアー、ウボウボ」
「えっ? エルミジャッドにいたウォリアーの魂を封じ込めた魔剣? 切った相手の魂を吸って、その戦い方をコピーできる? なんとー!」
驚きだ。
賑やかし要員だったヘッドレスが、あっという間にかっこいい戦力になってしまったではないか。
しかも分離状態であれだ。
ラッシュと合体するとヘッドレスはパワーアップするので、まだまだ伸びしろがあるわけだ。
「うーん、これは楽しみすぎる。我が軍の伸びしろ、すごすぎ……?」
感心しながら、ザクザクと雪山を上がっていく。
氷魔とは遭遇しないな。
倒した後の姿を検分してみたが、雪山に生息する動物がモンスター化したものらしかった。
「多分、単体だと弱いな。復活させても、雪山から降りたら戦力にならないと思う」
「再生させないのは、リョウ様なりに見て厳しいと判断されたからですの?」
「そう。マミーより弱いのはちょっとねえ……。しかも復活する力もないし。こいつらは恐らく、マロングラーセやオルトファースに関連した魔人じゃなく、地元の生物が変異したものだろうなあ」
『我々のデータからは出てこない考察。頂戴致します。通信が繋がったら、ジェプティスに共有させてもらいます』
ヘルガーディアンがメモを取るような仕草を見せた。
ものすごく知的なやつだ……。
安心感が凄いぞ。
俺が頭を使わなくても考えてくれる、そんなどっしりとした存在感を覚える。
と、歩いていく最中、突然ラッシュがピョーンと飛び上がった。
『注意ですぞー! 人が来ますぞー!』
「なにい」
「リョウ様」
「師父」
「うむ、人間も神造兵器持ってたらかなり怖いからな。一旦隠れてやり過ごそう。リメイク!」
地面が変化し、俺達を包み込む岩と氷の隠れ家みたいなものになった。
少しして、眼前を人間たちが通過していく。
ふむ、キラキラと輝く装備を身につけているな。
あれは見たことがないぞ。
ヘルガーディアンが目を光らせて、装備を分析している。
じっくり見て、俺に色々教えてくれよな!
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