第58話 イチマンジャクの麓に降りて
「迂回~!!」
ぐるーっと巨大な山脈を回るドラゴンゾンビ。
神造兵器ほどではないが、光の弾が次々と俺達目掛けて追いかけてくる。
追尾式の対空兵装か!
「わたくしも防ぎましょう。リョウ様は体で受けて」
「ええーっ! ファルメラ様、俺に厳しくないですか?」
「あなたが一番頑丈なんですからいいでしょう?」
そりゃそうだけど。
俺とファルメラで、ドラゴンゾンビの尻尾辺りに立って防御に専念なのだ。
空飛ぶローラースケートでジグザグに動き、頭上から飛んでくる光弾を受け止める。
「いて! いてて! いや、痛くないんだけど衝撃はある」
「呆れた頑丈さですわね!! わたくしはこのトゥエルブ・ブレスを使いますわ! はあーっ!!」
ファルメラが、ブレスレットを装着した腕をかざすと、そこから十二の珠が召喚された。
それがぐるぐる渦巻きながら、光弾を次々に打ち消していく。
こりゃ便利。
ファルメラの意思で自由自在に動き回る。
その射程は100mほど。
『うおおー! わしもエンゼルウィングで頑張りますぞー!』
「ラッシュは撃ち落とされそうだから下で見ててなー」
『か、過保護にされてますぞー!!』
「ウボアウボア!」
この中で一番か弱い仲間だからな……!
『そ、そんな事を言ってたら、わしら目掛けて一発漏れた光の弾が~!!』
「ウボ~!」
「私がいるぞ! たあーっ!!」
黒杖が振り回され、光の弾をかき消した。
そう!
最終防衛ラインにはオトハ将軍がいるのだ!
彼女がラッシュとヘッドレスを守ってくれる。
……あれ?
実は攻撃されても失うものは無いのではないか……?
『皆様、お見事、お見事です』
ヘルガーディアンがカシャンカシャンと音を立てて拍手した。
君、余裕じゃあないか。
まあ、実際神造兵器を使われなければ、俺達が防御に徹する限りは余裕だ。
ドラゴンゾンビは守られているので、鼻歌交じりに飛んでいく。
「おいドラゴンゾンビ急げ! お前、守護されてるのを当たり前とか思ってるんじゃないぞ。ぶっ飛ばすぞ!」
『キュオーン』
分かってるのかなあ。
山をぐるりと巡ったところで、油断しきったドラゴンゾンビの尻に光弾がぶち当たった。
いや、俺がサボって当てさせた!
『ウグワーッ!?』
「ほらー! お前油断してるからだぞー! ダメだろー! 着陸だ、着陸! これに懲りたら、攻撃を受けてるのに油断したらダメだぞ?」
『キュオーン』
よく分かったようだ。
ドラゴンゾンビはふらふらと飛びながら光弾を振り切り、イチマンジャク山脈の麓に着地した。
何せ、こいつはデカいので、切り立った山の中腹なんかには降りることができないのだ。
「あの寺院が唯一、降り立てる広い場所だったな。上空から偵察するつもりだったが、それすら許してもらえないとは……。今まで訪れた人間たちの国の中でも、ダントツで守りが堅いぞ」
「ええ。恐るべき攻撃能力でした。生身であれを喰らったら、バルログですらひとたまりもないというのはよく分かりましたわね」
まあ、そのバルログたちの強さへの信頼が揺らぎつつある昨今だが。
『完全にジェプティスとの通信が途切れました、マスター。ここからはヘルガーディアンがスタンドアローンにてナビゲーションを務めます』
いきなりかっこいいこといい始めるじゃん!
「よし、任せるぞ! ドラゴンゾンビはそこで待ってるようにな」
『キュオーン』
俺達は雪山を登り始める。
このイチマンジャク山脈の地形自体は、ジェプティスが把握していたらしい。
そのデータはあらかじめ、ヘルガーディアンに共有されている。
『ここには、アイスモンスターとして識別される、凶暴な現地生物が生息しています。通常であればこちら側からの登山は、彼ら凶悪なクリーチャーに遭遇するため、推奨はできません。ですが』
歩きながら、ガーディアンの頭がくるっと俺達の方を向いた。
こういうところロボットだよなー。
彼は何も言わずに俺達をじーっと見た後、またウイーンと正面に顔を向けた。
『問題なさそうなのでこのまま直進します』
「わたくしたちだったら平気ということですの?」
「ああ。私たちは強いからな」
オトハ将軍はちょっと得意げなのだった。
現在、俺達が登山を始めているのはイチマンジャク山脈の南西麓。
そこから比較的小さめな、標高4000mの山に取り掛かり、これを足がかりとして地上からイチマンジャク寺院へと近づこうという計画だ。
まさか奴ら、俺達がコツコツ山を巡って徒歩で迫ってくるとは思うまい。
例によって、不眠不休で問題ないメンツである。
「遠目に見た時は、雪で真っ白になっていましたのに。全然雪なんか降っていませんのね……。むしろ、黒い岩肌がむき出しですわ」
「それはですね、こういう乾いた気候で寒いと、雪はそんなに降らないんですよ。だがまあ、降ってるところは降ってるので、ちょっとしたことで雪崩も起きるでしょう」
「リョウ様のまた博識なところが」
ガーディアンに案内されつつ、その後ろでファルメラと雑談などするのだ。
なんか最近、彼女が俺を見る目に、呆れだけではなく尊敬の色が混じり始めているのが分かる。
フフフ、好感度が上がっちゃったかな?
彼女が登場するゲーム、好感度システムは無かったと思うんだけどなー。
「もしや師父とファルメラ殿は……」
『ふふふ、お気づきになられましたか。最初は神様からの一方的なアピールでしたが、姫様も今はまんざらでもないご様子……』
後ろ、聞こえてるからな。
『ご歓談中失礼します、皆様』
またガーディアンの頭がぐるりとこっちを向いた。
「どうしたんだい」
『敵襲です』
いきなり!?
イチマンジャク山脈に巣食う氷魔、アイスモンスターとやらとの遭遇戦なのだ。
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