第51話 その名はファラオシティ
「リョ、リョウ様! わたくし、こんな都は見たことがありません! なんですか……!? なんなのですか、これは!」
「ああ。私が見てきたどのような都市よりも高い建物が立ち並び、まるで巨大な墓石のようだ。これは、伝説に謳われた黄泉の国というものか……!?」
『まさに死後の世界というやつですな!? 全ての生者が住むという死後の街は、現世よりも人の数は多いですし、全ての時代の建物が存在すると言われておりますぞ!』
「ラッシュの説明が一番らしかったなー。だが、残念だが外れだ。こいつは過去に存在していた、超文明が作り上げた地下都市だな」
どこまでも続く階段が、気づくとエスカレーターになっていた。
俺達を運んで、自動で下っていく。
そのうえで俺達は歩いているのだから、物凄い速度で降りていっている事になる。
これに、ファルメラが気づいてパニックになった。
「か、か、階段が動いていますわ! みな、気をつけて! 何者かの罠かも知れません!!」
「むうっ、立ち止まっても動いている……!? 戻ったほうがいいのか……?」
『空を飛ぶと問題ないですな……あーっ! ヘッドレスが運ばれていく~!!』
「ウボアー!」
ヘッドレスが必死にエスカレーターを逆走して、ラッシュと合流。
またバタバタと走って戻ってきたのだった。
「まあまあみんな落ち着こう。このエスカレーターの先に、侵入者を噛み砕くゲートでも無い限り、乗ってれば自動的にあの都市に到着する」
「なんで不安になるようなことを言うんですの!?」
「そういうのがあっても、俺が対処できるから」
「まあ……それはそうですけれども」
ということで、不安がる女子たちと、なんかわちゃわちゃするラッシュ&ヘッドレスを乗せてエスカレーターが行くのだ。
俺は前世で慣れてるからね。
平然としたものだ。
むしろ、長さ数キロはあるエスカレターすげえなあと思いながら乗っていた。
これがゆったり降りていっても、地下都市の果てが見えない。
一体どれだけのスケールなんだ。
下手をすると、この砂漠はまるごと、地下都市を覆うドームの上に積もった砂なんじゃないか。
「ファールディア、とんだSF世界だぞ。どこがダークファンタジー世界だ。ラッシュ、この世界の人間は千何百年前とかにこの世界に来たんだったっけ?」
ラッシュに以前聞いた、世界の成り立ちの話を確認してみる。
『何年なのかは定かではないですな。ですが人間はみな、狭いところに閉じ込められて暮らしていたそうですぞ。それが、人間を飼っている偉い存在……きっと神様のようなものでしょうな。その者たちが滅びたので、わしらのご先祖様が世界に溢れたのですな』
「その偉い存在とやらを滅ぼしたのが、ちょこちょこ聞くマロングラーセとか言う魔王か。大魔王みたいなもんだな。つまりだ。この世界の人間は恐らく……人間じゃない」
「何をおっしゃっていますの?」
「師父の話は難解だな……」
『わしらは今、確かに人間ではありませんがな』
「そうだなあ。噛み砕いて俺の予想を説明すると……。君たちは多分、本来人間であった連中が作り出した、ヒューマノイドとかホムンクルスと言った存在だ。それが繁栄し、世代を重ねて人間として暮らしている。多分そうだと思うな。で、この世界はただの人間は生活できない過酷な環境になっているわけだ」
まだ納得できない様子のファルメラとオトハ。
ラッシュは『ほほー! そういう話もありですな! だってわしら、神様の力でリサイクルされたらあっという間に人ではない何かに変わってしまいますからな!』とか言っている。
理解があるのか適当なのか。
「こう言う時、言葉は無力だと感じるな。なので俺はこれ以上何も言いません。自分の感じる悪夢を信じるんだ」
「リョウ様! いきなり突き放さないで下さいませ! 不安になるから!」
「そ、そうだ! そうですよ師父!」
なんて身勝手な女子たちだ!
散々俺の話をそんなバカなと言ったじゃないかー。
とかやってたらエスカレーターの終わりに到着した。
無数に続くビル街の中央。
綺麗に舗装された、未知のコンクリめいた道の中央にエスカレーター用のステーションがあったのだった。
どうやら他のピラミッドは、エレベーターだったようだな。
一番ゆっくり下る道を選んでしまったらしい。
俺達が降り立った場所の眼前には、大型のディスプレイがあった。
周囲は大変に空気が乾いており、これは何百年前とかのまま、空気が動いていないのだなと思わせる。
だが、ディスプレイは埃一つない。
何者かが掃除しているのだろう。
で、そのディスプレイが点灯する。
『ようこそ、人類最後の楽園、ファラオシティへ! この都市では、やがて来る滅びを最後まで遅らせ、皆様の快適な安楽死を約束致します』
「ろくでもないこと言ってる」
ディスプレイに映し出された、立体映像の女。
SFっぽい服装をしていて、髪が緑だったり耳からアンテナが生えてたりするので、アバターみたいなもんだろう。
「な、何を言っているのですかこれは」
「なんだか根源的な恐怖を感じる……!」
『かわいいおなごですなあ!』
「ウボアー」
おっと、ラッシュとヘッドレスは呑気だぞ。
「ファラオシティというのがピラミッドの地下にある街の名だってことだ。マミーたちがファラオがどうとか言ってただろ。それがこの街全てを現してたわけだ」
つまり、遊牧民の一派はこのファラオシティまで入り込み、どうにかしてあの契約書を盗み出したということだ。
ガッツあるなあ!
まあ、ただの人間であれば弱点というほどのものはないので、マミーの大群をくぐり抜けることさえできればここにたどり着ける可能性は高い。
「俺はなんだかワクワクしてきたぞ。先文明の人類の痕跡を見たうえで、トンデモアイテム群にも触れられるかも知れないのだ。よし行くぞみんな。黙って俺について来い!」
『イヤッホウ! さすが神様! 頼れる~!!』
「ウボアー!」
ノリノリのラッシュとヘッドレス、そして不安そうなファルメラとオトハを引き連れ……。
俺はファラオシティに繰り出すのだった。
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