第50話 ピラミッド地下は広い!
ピラミッド入りしたら、中は石造りの通路なのだ。
なかなか広い。
壁面がどこまでも続いており、そこここにレリーフやら彫像やらがある。
青白い輝きが通路を照らしているのだが、一瞬前まで何もいなかった通路に、ヒョコッ、ヒョコッ、と何者かが姿を見せる。
布を腕から、頭から垂らした者たちが、明かりに照らされながらこちらに歩いてくるのだ。
「マミーだな」
「リョウ様、詳しいですわね……」
『神様は博識でいらっしゃいますな! どれ、わしは天井近くに……ウワーッ! 上からもマミーとやらが来ますぞー!!』
「ほんと? うおーっ、壁と天井を走ってくる!」
四つん這いになった異形のマミーが、凄い速さでやってくる。
通路のマミーは武器を手にしている。
「これは……油断できない相手のようだな。少なくとも、遊牧民の戦士たちよりは遥かにできる。どれ……手合わせ願おう!」
オトハが先に踏み出した。
彼女の武器は人間だったときとは違い、棍だ。
一見すると通路で振り回すには長いかと思ったが……。
「心配ご無用。自在棍!」
オトハの棍がスーッと短くなり、彼女が両手を広げた程度の長さになった。
なるほど、これならいい感じで使えそうだ。
『キキーッ!』
襲いかかってくるマミーの群れを、オトハの棍が迎え撃つ。
武器を弾き、マミーの脛を打って転倒させ、頭を叩いて吹き飛ばし、伸ばして回転させては周囲のマミーをなぎ倒す。
上から襲いかかってくれば撃ち落とし、あるいは突いて落下地点をコントロール。
同士討ちになったマミーが『ウグワーッ!』と転がった。
強い強い。
「純粋に強いですわね……! 身体能力だけではなく、技量がわたくしとは段違いだというのが分かりますわ……!」
「ファルメラ様も腕を上げてるじゃないですか」
「わたくしは速さで誤魔化しているだけですわ。こんな風に」
『姫様ーっ、お助けー!』
マミーたちに群がられて悲鳴をあげているラッシュとヘッドレス。
その真横に、一瞬で到達するファルメラ。
彼女はうちの軍団で一番速いからなー。
振り抜いた剣が、マミーを次々に切り刻んでいく。
『ウグワーッ!!』
ばらばらになって落ちていくマミー。
だが、連中、なんと体を包む包帯を伸ばしてバラバラにされた体をくっつけてしまうのだ。
「そんなのありですの!?」
「ありなんじゃないかなー。新しいタイプの魔人だな。個々の強さはほどほど、高い再生能力ですぐに戦線復帰できると。あ、俺の周りで立ち上がり始めたなー」
ちなみに。
オトハにぶん殴られたマミーは普通にのびており、こっちは戦闘不能だ。
つまり、ファルメラの攻撃は鋭すぎるがために、マミーへの効果がいまいちということになる。
「ファルメラ様! ラッシュ! 俺の後ろに! 一気に駆け抜けよう! オトハ将軍、露払いよろしく!」
「心得た!」
『キキーッ! 先に通すなーっ!』『我らが時間を稼いでいる間に、ファラオがまた魔術でこ奴らを追い払ってくれる!』
なるほど、時間稼ぎだったか!
俺は盾を構えて、トットコ前進する。
マミーたちがワーッと取り付いてこれを止めようとするが、女王や将軍と押しあえる俺だぞ。
止まるわけがない。
『止まらない!』『止まらないぃーっ!!』『ファラオ!』『お助けくださいファラオー!!』
マミーたちの醜態を見かねてか、通路内の天井が光り輝き始めた。
一方通行の通路だと思っていたら、ここって十字の形に道が作られているのだな。
そこに光が降り注ぎ、こちらに向かってほとばしってくる。
これは……。
「光の魔法だ! みんなー! 俺の後ろに隠れるのだ!」
魔法はマミーにも多少は効くらしく、
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
弾き飛ばされていく。
奴ら、死んでないということは、光への耐性があるのか?
いや、光の魔法を使うと同時に、全てのマミーに光魔法への耐性を与えたのだろう。
「だが! 俺もなんか光魔法が弱点だとかそういうのは無い……気がする!」
アダマンタイトの盾を構えながら、光魔法の奔流と真っ向勝負なのだ。
ほほー。
これは、女王よりもさらにパワフルだ。
ファラオとやらは、女王よりもさらに上位の魔人なようだ。
「リョウ様、わたくしたちの盾となって……!」
「しかし、このピラミッドの長はなんとも厄介……!!」
『あれ? わし、光の中でも動けますぞ』
「そりゃ、ラッシュはファイヤースケルトンになったし、ヘッドレスもファイヤーレブナントみたいなもんだから光とは関係ないからな……」
『なーるほど!』
「ウボアー!」
横にぴょんと飛び出したラッシュとヘッドレスが、光の中をダッシュし始めた。
「ラッシュ! この先、十字路のどまんなかに下に降りる階段とかがあるはずだ!」
『承知ですぞー!! うおー!! 今こそ日頃の御恩に報いる時~!! 走れヘッドレスー!!』
「ウボボアーッ!!」
すごい勢いで走るラッシュ&ヘッドレス!
光耐性があるとは言え、魔法の奔流の中で動きづらそうなマミーを次々に回避し、走る走る。
なぜラッシュがあんなにも自由に動けるかと言うと……。
炎の属性ってのは恐らく、光の属性に近いのだ。
それに対して、水の属性は闇の属性に近い。
ラッシュを止めるために水の魔法を仕えば、闇の属性であるファルメラやオトハが動きやすくなる。
どちらが脅威か、考えるまでもない。
『ありました! ありましたぞーっ!! 仕掛けっぽいのが! なお、わし、こういう頭を使う仕掛けが大得意でしてな』
「意外!!」
『年の功ですぞ!』
謎を解くとパカっと開く仕掛けなのだ。
俺はそこを目指して、光の奔流に抗いながらトコトコ突き進んだ。
「結局この人、一歩たりとも止まりませんでしたわね」
「俺、光の魔法も別に効くわけじゃないからね」
「流石は師父!」
ということで、床には巨大な穴が空いている。
そこから石段が、地下に向かって続く。
「よし、行こう行こう」
「参りましょう参りましょう」
「一体どんな事になっているのか……」
『うおおー! レッツゴーですぞ!』
「ウボア!」
どこまでも続く階段からは、地下の世界が見えた。
ほほー。
広い。
どこまでも広がる、地下世界だ。
石の天井がキラキラと輝き、地下世界を照らし出している。
地下世界に広がるのは、地下都市だった。
というか……。
ビルディングとかハイウェイみたいなものがあるんだけど?
「おいおいおい。ここ、ファンタジー世界じゃ無かったのかよ……!」
思わず俺はツッコミを入れてしまうのだった。
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