第5話 伝説の勇者と、伝説の魔王の伝説
『はあ、魔王教団!? そんなもんがまだおったんですか!?』
ラッシュが驚いて、顎をカタカタ言わせている。
表情豊かなドクロだなあ。
「そうなの! それで私、村の人達から生贄にされちゃって、それでひどい目に遭わされて最後は殺されたんだけど……。神様が生き返らせてくれて、村の人達からも守ってくれたんだ」
『はあー! リョウ様は本当に神様じゃったんじゃなあ! わしが物心ついた頃から、ファールディアは神に見捨てられた世界なんて言われておりましたが、神はいらっしゃったんじゃ! ありがたや~』
空飛ぶドクロ、手足があったら拝んでるなこれは。
「神に見捨てられた世界ってなんなんだい?」
『ああ、それはですな! 古い古い時代、わしのひいひいひい……とずっと続いた後の爺さんの頃には、人間は狭い空間に閉じ込められて生きていたんだそうですじゃ。それで、人間を飼っている偉い存在がいて、しかしそこに災厄がやって来たんですじゃ。災厄は偉い存在を全て滅ぼして、そうして人間の先祖はこの世界に出てきたんですな』
「へえー、変わった伝説だなあ……」
『神様はご存知ないのですな?』
「この世界来たばっかりだからね。で、その災厄はどうなったの?」
『三柱の竜が、災厄を追い払ったと言われてますな。そしてその後で……新たな災厄が降り立ちましたのじゃ! それはわしのひいひい爺さんの時代なんじゃが、魔王オルトファースを名乗ったそやつは世界を荒らし回り、人々を恐怖のどん底に落としたんですじゃ』
「それ、私も知ってる! でも魔王オルトファースを倒すため、勇者が立ち上がったんだよね。勇者たちは世界に後押しされて、不思議な力を使って魔王と戦ったの。それで、ついに魔王は倒されたんだって!」
「へえー! 魔王は倒されたのか……。良かった良かった。世界は平和になったんだ」
平和になったら、人間同士が争い始めたってこと?
楽しくお喋りをしながら、道無き道を行く。
アニタだと荒れ地を歩くのが辛そうので、ゾンビ達に輿を作らせ、その上に彼女を乗せた。
そうかそうか。
魔王が倒された後の世界で、魔王教団はその魔王こそ世界を見捨てた神だとして、復活を画策している一団というわけなんだな。
あれ?
その世界で神を名乗ってる俺は、逆説的に魔王ってことになるのでは?
ハハハ、まさか!
『どれ、わしはちょっと偵察に行ってきますぞ!』
「頼むぞラッシュ! いやあ、本当に空を飛ぶドクロって便利だなあ……」
「私も楽しちゃってる! 神様は歩いてていいの?」
「ああ、全く問題ないよ。この体、どれだけ歩いても疲れないからね」
「さすが神様! あ、そう言えば昨日、目を傷つけられたでしょ? まだ穴が空いてるけど大丈夫なの……?」
おっと!!
鏡がないから、今の自分の顔を確認していなかった。
ええと、顔を見れるもの、見れるもの……。
「ゾンビ! 刃物持ってきて!」
「ウボア!」
バタバタ走ってきたゾンビが、リサイクルしてピカピカになった刃を見せた。
これを鏡代わりにして……。
ああ、確かに穴が空いてる。
この皮の中の俺は、意味の分からん化物だからな。
何かで塞いでおきたいところ。
「ちょっと目をくれ」
「ウボア」
ゾンビから目を受け取って、「リメイク! アパラチャノモゲータ!」
顔に空いた穴にスポッとはめ込んだ。
よーし。
完全に一体化した。
「直ったよ」
「わっ、いつの間に!? 神様、右目と左目の色が違う! 不思議!」
「ハハハ、神秘的でかっこいいだろ? 目の色までは確認してなかったな。ま、いいや」
「うん、かっこいいからいいと思う!」
イケメンは得だな……!
少しすると、ラッシュが戻ってきた。
『ありましたぞーっ!! 街ですじゃ! 戦場にされた跡のある街がありましたぞーっ!』
「あっラッシュ! お前、頭から矢が生えているじゃないか」
『はっ。わしが飛んで行ったら、見張りの兵士らしきやつが「化物ーっ!!」って言って矢を射掛けて来ましてな。あの鎧の形式は……王国ではないですな』
「そっかー。よし降りてこい。リメイクしてやるからな」
俺のリサイクルは、それが完全に破壊されたり死なない限りは使用できない。
一応、そのものの人格や性能が失われる代わりに、まだ生きてたりする状態でリサイクルすることもできる。
「これを、完全リサイクルと半端リサイクルと名付ける……!! だがラッシュは仲間だし、半端リサイクルは可哀想だからな。リメイクしてやる。おいゾンビ、こっち来い」
「ウボア?」
「お前の体をラッシュのヘリポートにする。頭をリメイク! アパラチャノモゲータ!!」
「ウボアーッ!」
ゾンビの頭が吹っ飛んだ。
これがリメイクされ……首のところに目玉がついた姿になる。
骨が伸びており、ここにラッシュを装着できるわけだ。
「ラッシュ、一旦降りてこい」
『ははーっ! お気遣い感謝ですぞーっ』
ストンと降りてくるラッシュ。
接合面はバッチリだ。
合体完了!
『うおーっ! 体じゃー!!』
「ウボアーッ!」
一つの体に二つの意識!
スケルトンヘッド・ゾンビボディなラッシュの誕生だ。
なんかピカピカ光ったな。パワーアップした?
頭に刺さった矢は、そのまま骨の一部になるようにリメイクしてやる。
鏃の金属を伸ばして、パチっとはめ込む感じで……。
「もう少し矢が集まったら、ラッシュに翼を付けてやれるな」
「えーっ、それってラッシュに羽根が生えて飛べるってこと!? あのね、神様は、天使っていう翼が生えたお供を連れてたんだって。つまりラッシュは天使だったんだよ!」
『えっ!? わしが天使!? うわーっ! そ、そうじゃったのかーっ!!』
「いいねー。仲間がいると、どんどんアイデアが出てきちゃう。旅が楽しくなっちゃうね!」
俺は大満足。
みんなでキャッキャとはしゃぎながら、一路、ラッシュが見つけた街を目指すのだ。
木々が途絶え、草原になった。
その先に、城壁が見えてくる。
ファンタジー世界っぽい街だ。
「あれだ! 私の故郷! 戦場になって、多分今は、帝国に占領されちゃってる故郷!!」
「やっぱりそうか! よし、それじゃあみんなで、アニタの故郷を取り戻すぞーっ!!」
『やりましょうぞーっ!! 皆の者、行くぞーッ!』
「ウボアーッ!!」
俺とアニタとラッシュとゾンビたち、やる気十分。
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