第4話 ゾンビを増やし、ドクロをお供にし
「だが俺は平和主義者だし、自らの手を血に染めるのは好きではないのだった。諸君、話し合おう。具体的には俺に都合がいい方に話をまとめてくれ」
「何か言ってやがる! 死ね!!」
「神様ーっ!」
また俺を庇おうとするアニタだが、そこは山賊が彼女を捕らえてしまった。
ナイスプレイ山賊!
毎回死ぬんじゃアニタも可哀想だからね。
山賊の一人が、俺めがけて短剣を振るう。
それは俺の目に深く突き入れられ……るわけではなく、バキッと折れた。
あーっ、せっかく使ってた人間の皮が破けてしまった!
「剣が!? なんで折れたんだ!?」「げひゃひゃひゃひゃ! なまくら使ってるからだろ!」「戦場で使ってた武器がそのまんまなんだ、みんないつ壊れても仕方ねえよ!」
ふむふむ、もしかして彼らは、傭兵くずれの山賊?
劣勢になった戦場から逃げ出した傭兵たちが、ここで賊になって旅人を襲っていると見た。
「それはそれとして、折れた剣をリサイクル。そーれ!」
折れた短剣の切先が持ち上がり、山賊の手から柄がスッポ抜けた。
「えっ!?」
驚く山賊。
短剣は俺の周囲で新品同様の姿に早変わりし、ぐるぐると回転を始める。
これを見て、山賊たちから笑いが消えた。
「なんだ……こいつ……」「化物……!」「化物だぞ!」「帝国の魔法使いか!?」「使わせるかよ!!」「石を投げつけろー!!」
「神様、逃げてー!」
「大丈夫。俺はアニタを必ず救って見せるよ!」
俺はアニタに笑顔を向けた。
その顔に、矢やら石やらが降り注ぐ。
ええい、大事なところで~!
「リサイクルリサイクル!」
俺に当たってへし折れた矢も、砕けた石も、全部元通りだ。
全て俺の周囲をぐるぐる回る、衛星みたいなものになる。
さっき俺に切りつけていた山賊が、この武器の回転に巻き込まれた。
「ウグワーッ!! アババババババ」
うおーっ、人間大根おろし!
半分になってしまった。
山賊たちがこれを見てドン引く。
「ばけ……もの……!!」「逃げろ! こいつやべえぞ!」
一人、また一人と逃げ出す。
そのうちの一人はアニタを担いでいるではないか。
「はっはっは、どこに行こうと言うのだね! アニタを離せーっ! 俺のファーストヒロインだぞ!! 矢をリメイク! アパラチャノモゲータ!!」
矢がぐるぐると捻れ、先端がドリルとなった。
これが猛烈な勢いで回転しながら、アニタを担いだ山賊に迫る!
空気をライフリングとし、矢は正確無比な狙いのまま突き進む。
途中にあった木々や枝をぶち抜き、見事山賊に名中!
「ウグワーッ!?」
脊椎を粉砕しながら真正面に抜けて、その前にいた山賊も貫通!
「ウグワーッ!?」
「リサイクル! ゾンビ三体ゲット!」
半分に削れた山賊は、撒き散らされた肉が戻ってきて人の形に。
そのままゾンビとして動き出した。
胴体を貫通されて死んだ山賊も、みんなゾンビに変わる。
面倒だからまだ生きている内にゾンビにしといたよ!
「ウガガガガガ!! お、俺、の、心、が、消え、消えて……い……ウボアー!」
くるっと振り返った、アニタを担いだゾンビ。
えっほ、えっほ、と走ってきてアニタを下ろした。
「まあ! みんな神様の力で改心したのね!」
「ウボア」「ウボアー」
頷くゾンビたち。
心強い仲間たちだ!
「よーしみんな! 反撃の大義名分を得た! アニタをさらおうとした悪い山賊を退治するぞ! 全滅だー!」
「ウボアー!」
ゾンビたちに、俺がリメイクした武器を持たせる。
石は当たると体内で砕ける投げ槍に、短剣は血を抜きやすい筒状になった刺突剣に。
枝葉は折れて抜けなくなる木製の針に。
「俺が全方位に針をばらまく! それで立ち止まった奴らを、お前らはトドメ刺して回ってくれ!」
「ウボア!」「ウボアッ!」「ウボアーッ!!」
やる気のある仲間たちに囲まれて、俺は幸せだよ!
「アパラチャノモゲータ!」
撒き散らされる、木の針とドリルの矢。
これに貫かれて、「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」と何人かの山賊が動けなくなる。
そこに駆け寄ったゾンビがトドメを刺すのだ。
木々の間に響き渡る断末魔。
「リサイクル!」
昨日の敵は今日の友。
死んだ奴らはだいたい友達。
山賊だった死体は次々起き上がり、ゾンビとなって正義の戦いに馳せ参じるのだ!
「凄い……! 神様の力で、みんなが改心していく……!」
「ああ。人は分かりあえるんだ」
俺はアニタに告げながら、リサイクルを使い続けるのだった。
結局、山賊の八割ほどをゾンビ化したところで残りに逃げられてしまった。
足が早いのがいるな。
だが、それは別にどうでもいい。
「アニタ、ここから君の故郷まではどれくらいだ?」
「ええと……。随分街道を外れてしまったから分かんないかも知れない……。多分、ここからだと一日じゃ到着しないと思う」
「そうか。だったら好都合だよ。おいお前ら。山賊のアジトがあるだろう? 案内してくれ。さっき生きながらゾンビになったやつは、まだ記憶が残ってると思う!」
「ウボア!」
おお、アニタをさらった元山賊ゾンビ!
こっちについて来てくれと力強いジェスチャーだ。
俺はアニタを連れ、彼の後に続いた。
そこは、森の外れに近いところだった。
炭焼小屋があった。
周囲にはテントが建てられ、ここで山賊たちは生活していたようだ。
おや?
近くにある切り株の上に、頭蓋骨が置かれている。
その頭が割られてろうそくが立っているな。
「な、なんてひどい……! 神をも恐れぬ行いだわ」
アニタが怖がった。
「うんうん、ひどいな。よし、リサイクルしよう」
俺は頭蓋骨にリサイクルを使った。
すると、頭蓋骨の目に光が灯る。
頭に突き立ったろうそくが燃え上がった。
『キキキー! 恨めしい……恨めしい……。山賊どもめ、わしの小屋を奪い、娘を連れ去り、最後はわしを面白半分に殺し……決して許さぬ……!』
「まあ! 喋ったわ!」
「ほんとだ! 深い恨みがあったからか、頭蓋骨に魂が残ってたんだな。おい頭蓋骨の人。俺はリョウ。お前を今リサイクルして復活させた者だ。こっちはアニタだ」
「こんにちは、頭蓋骨さん」
『なんじゃお前らは……! わしは今、憎しみに支配されておる……! 恨めしい……あの山賊どもを一人残らず殺してやりたい……!』
「安心してくれ! 八割はゾンビにしておいたよ!」
『えっ!?』
頭蓋骨の顎が、パカーンと開いた。
相当びっくりしたらしい。
そして、俺に続くゾンビたちをじーっと見て、
『ほんとだ!! みんなゾンビになっとる!』
「みんなゾンビになって改心したんだよ。これでこいつらはもう悪さはしない!」
『そうじゃったか……。わしはもう思い残すことはない……』
「あっ、成仏しそうだ。ストップストップ。成仏キャンセル! せっかくなんで俺の手伝いをしてくれないか?」
『手伝いとな? それは一体なんじゃ?』
「ここにいるアニタの故郷を救うんだ。今、戦争の舞台になっているらしくてな。君が飛行できて、意思があるという強みをぜひ活かして欲しい!」
『なるほど……! わしは全てを失ってしまったが、まだ失っていない物を助けることはできる! その機会を与えてくれるというわけじゃな!?』
「手伝ってくれるの!? ありがとうドクロさん!」
『うむ! わしはラッシュじゃ。炭焼小屋のじじいじゃったが、かつては王国の庭師だったこともある。若い娘の願いを叶えるため、新たに得た生を使うとしようぞ! それで、わしを復活させたそこの男、リョウとは何者じゃ?』
「神様です!!」
『な、な、なんじゃとーっ!! こ、これは……今まで失礼な口を利いて申し訳ございませんでしたじゃーっ!!』
ドクロが地面に落ちて、俺に地面を額でこする。
土下座なのか……!?
こうして新たな仲間を得た俺達は、炭焼小屋を一夜の宿とし、アニタの故郷を目指すことにするのだ。
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