第43話 岩石砂漠を砕いて進め
今までの砂漠の暁号は、どうやって岩石砂漠を踏破していたのか?
その秘密が今明かされる!
幽霊船員たちがパタパタ動き回り、大いなるヒロピン号の前方を展開した。
なんと、そこに巨大な衝角……ラムが現れる!
これで、岩にぶつかっても砕きながら突き進むのだ。
なんという力技!!
「すごーい!!」
『なんじゃこりゃー!』
「ウボアー!」
アニタとラッシュとヘッドレスが舳先まで走って、最前列でラムと岩の激突を眺めている。
おじいちゃんと孫みたいなもんなのに、なんか精神年齢が近いな。
『オオオ、オオオー』
「あっ、立派な服を着た幽霊船員! もしや船長?」
『オオー』
「ほう、主様に挨拶に来たようですな。ようやく幽霊船の人格が落ち着き、統合されてきたそうです」
「なるほどなるほど。こちらこそよろしくな」
『オオー』
船長は帽子を取って、ペコペコする。
それから、船の仕組みについて解説してくれた。
どうやら砂漠の暁号、びっくり箱みたいな作りになっているらしい。
ラムに、攻撃用の小型馬車。
帆を張ることで風を受けて加速し、船底はモンスターの甲殻で覆われているために岩石にぶつかっても砕けることがない。
弱点はドラゴンの炎くらいだったのだが、幽霊船となった今は、全身に纏う瘴気で火球をも防ぐことが可能になったと。
さらに短時間の飛行をすることで、ワイバーンたちと同じ高度で戦えるようになった。
もうね、恨みの力が遊牧民のワイバーンライダーたちをメタってるじゃん!
今から再戦が楽しみだなあ。
「頑張ってくれ、船長。それから船員のみんな! 遊牧民許せねえよなあ!」
『オオオオオオオオオオーッ!!』
幽霊船員だけではなく、船そのものが俺の言葉に呼応して、怨嗟の叫びをあげる。
汽笛みたいでなかなか風情があるんじゃない?
岩石を砕きながら、砂漠を疾走する幽霊船。
流れていく景色は大変面白い。
一つとして同じ岩は無いんだなあ。
そして一昼夜走り続けたところで、ついに砂漠の終わりがやって来た。
ステップ地帯だ。
まばらに緑が見えてきたと思ったら、あっという間に短い草がちらほら生えた大地に到着していた。
遊牧民はいるかなーと思ったが、それっぽいのはいなかった。
「主様、ステップ地帯は広大です。遊牧民はこの奥地、比較的緑に溢れた地域を拠点としてそこから各地を巡っているのです」
「あ、そうなんだ!?」
「ラッシュが調べてくれましたな。我らバルログは、どれだけ強力だろうが人間風情のことを調べる気にならず」
「そこら辺はバルログ特有の業病みたいなもんだなあ。ラッシュ~」
『呼びましたかな?』
「お前がこの辺り、俺らがいない間に偵察しまくっててくれたんだろ? 教えてくれ」
『いいですぞ! 奴ら、遊牧民とは言いますが、亜竜……神様がワイバーンと呼ぶ連中を手懐けてからは放浪を止め、各地に攻撃を仕掛けては略奪をして暮らしているようですぞ! かーっ! なんたるカスどもか! 山賊のような連中じゃー!!』
山賊はラッシュにとっての地雷だもんな。
しかし、情報収集要員としてラッシュがあまりにも優秀だ。
どうやら砂嵐の威力を利用して、ポーンとふっ飛ばされることで砂漠を横断。
岩石砂漠を超えて、ステップの入口でワイバーンの尻尾にくっついて移動したらしい。
ラッシュの大冒険じゃないか。
『各地から略奪した財宝で溢れておりましたぞ! さらに各地の女も集めているようですじゃ! もしやわしの娘も……。いや、よく考えたらかなり前のことじゃ。娘が今も生きているとは思えぬ……』
「ラッシュがしょんぼりしてしまいました」
「ラッシュ、元気出せ。みんなで復讐に行こうな! 復讐は楽しいぞ。スッキリするからな」
俺はラッシュの頭をポンポン叩いた。
肩を叩くと、そこはヘッドレスの体だからな。
結局、ラッシュはまたこっちに飛んでくるワイバーンの尻尾にくっついて戻ってきたのだが、そいつがたまたまボルカノ山まで遠出する個体だったらしい。
お陰で帰還を果たし、バルログたちとともに改めて俺と合流したわけだ。
波乱万丈過ぎる。
「これは、身内にも遊牧民への怒りを抱く者が出てきてしまったな。全力で戦わねばならなくなった! 船員諸君! 見敵必殺! 出会った遊牧民は全滅させるぞー!」
『オオオーッ!!』
船中から大歓声。
ファルメラが「いいのでしょうか……。これ……」とか言っているが、いいんだぞ。
ちゃんと爆発すべきところで爆発しておく。
これがハッピーに暮らすコツだ。
おっと、そうこう言っていたら、複数のワイバーンを有する砦みたいなのが見えてきた。
砦と街が一体になっているようだ。
爆走する大いなるヒロピン号を見た遊牧民たちは、慌ててワイバーンに乗り込んで飛び立ち始める。
馬鹿め!
「ヒロピン号飛翔!! 飛び上がりたてのワイバーンを空から蹂躙してやれ!」
『オオオオーッ!!』
船長の号令とともに、大きく帆が広がった。
それが瘴気を纏って船の周囲に展開すると……生まれたのは翼だった。
舞い上がる、ヒロピン号!
疾走の勢いのまま飛んだので、猛烈な勢いで空に登っていく。
「武器とかないの?」
『オオ、オオオオ』
「瘴気砲? 船用の巨大ボウガンを応用したやつで、今回は弾丸に恨みとか憎悪を詰め込んだ呪いの大砲? いいねー!! 撃てー!!」
巨大な船であるヒロピン号が飛んだだけでも、ワイバーンや遊牧民にとっては驚きだっただろう。
それが側面を向けて、大砲をぶっ放してくるとは夢にも思わなかったに違いない。
当たりはせずとも、空間で炸裂した瘴気砲は、そこから呪いをばらまく。
ワイバーンライダーであった遊牧民が、これに触れると全身を蝕まれて意識を失った。
制御不能になったワイバーンを、ボウガンによる斉射が襲う!
幽霊船員たちはボウガンも使えるのだ!
うーん、優秀優秀。
「やりますな。我が出るまでも無いとは。主様は人間どもが抱く恨みを利用し、それによって人間を殺すシステムを作るのが巧みでおられる……!!」
「ふふふ、俺はエコな戦い方が大好きでな」
全てのワイバーンを撃ち落とし、船体は街中に急降下。
ありったけの瘴気砲をばら撒き、街全てを呪いで汚染していくのだ!
この船にいるメンバー、全員補給とか必要がないし、領土欲も無いからな!
瘴気に満たされた前線基地は、毒と瘴気と呪いに満ちた廃墟となった。
「やるじゃないか船長。まだ戦いが始まって半日くらいだぞ。あっという間に街を一つ潰してみせた!」
『オオオーっ!』
「我らの憎悪にご期待くださいと来たか! いやあ、なかなかデカいことを言うやつだなあ!」
「なんの。次は我も活躍しますぞ。新参の幽霊船にばかり任せてはおけませんからな!」
健全な部下同士の手柄争いだ。
心強いなあ。
俺はニコニコになるのだった。
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