第42話 大いなるヒロピン号出航!
「ここに船の残骸がある」
『ありますな』
「これはなんと風を受けて砂漠を走る船だったんだ」
『なんですと! そんな凄いものが今は残骸に』
「ドラゴン許せないよな。だが、残骸になったからこそ俺がリサイクルできるんだ」
『よっ! 待ってました!』
「もがー!」
「ラッシュとヘッドレスと合流したら、リョウ様が生き生きし始めましたわね。アイハムさんとも仲良しでしたけれど」
「アイハムなあ。あいつはいいやつだったな。あいつの顔を立てて、俺からはこの国を攻撃しなかったくらいだ」
「いつものようにリサイクルで復活させませんの?」
「あいつの尊厳は守ってやろうかと思ってな……。よし、それじゃあ行ってみよう。砂漠の暁号を~リサイクル!!」
残骸となった砂上船が、時間を戻すようにその形を取り戻していく。
だが、完成していくその姿が明らかに禍々しい。
これは……砂漠の幽霊船ですなあ。
『オォォォォーッ』
幽霊船が吠えた。
なんか意思まで生まれたっぽい。
殺されたエルミジャッドの人間たちが怨念となって、この船に宿っているのかも知れないな。
砂漠の王国は今や再生し、俺の軍勢の城になっているしな……。
これはサンドパレスと名付けておいたぞ。
そして新たに生まれた幽霊船の名は……。
「大いなる……大いなるヒロピン号!! お前をそう名付ける!!」
『オォォォォーッ!!』
名称 :大いなるヒロピン号
種族名:ゴーストシップ
階梯 :第八
能力 :地上移動 短時間の飛行 再生能力 建造物への侵食 瘴気によるバリア 幽霊船員の召喚と使役 運搬能力 精神異常無効 肉体異常無効
弱点 :光属性の武器や魔法
「こいつは強いなあ。船員も大量に召喚されてくる。なんかみんな見たことある顔してるんだが」
砂漠の暁号に乗っていた人々が幽霊化している感じかな。
「あっ、トカゲの串焼きくれたおじさんがいる! 死んじゃったんだなあ」
アニタがなんか黄昏れている。
幽霊としていつでも会えるからな。
多分、自律意思みたいなものは大量の怨念が混ざりあい、消えてしまっているだろうが。
人間は儚いね。
「ベスとベランとカイをピラミッドに行かせたのですな? これは間違いない人選だと言えましょう。彼らは閉鎖空間を愛していますから……。おお! 船が蘇っている! これが主様の御業ですか。多くの人間どもの魂を取り込み、怨念を利用して永久に憎しみが連鎖する様を動力として稼働し続ける、冒涜的幽霊船……!! 感服仕りました!」
「えっ、なになに!? そんな風になってるの!?」
カグツチが説明してくれたんだけど、とんでもないものを生み出したっぽいな。
まあいいか。
「では、早速遊牧民にお礼参りをするんで、行くやつ乗り込めー。シエスタのみんなはサンドパレスで待っているようにな」
「ほーい」「家を建て直したりしてのんびり待ってるよ!」「いってらっしゃーい」
数百人のレッサーヴァンパイアがお見送りだ。
「わたくしたち、全く休まずに次の目的地に向かいますの? 生き急いでいません? まあ、わたくしもアニタも死んでるんですけれども」
「おっ、ついにご自分が人間ではなくなっている事に気付きましたか」
「当然ですわ。人間がこんな速さで動いたり、跳躍したりできるものではありませんもの!」
「えっ!? 私も死んでたの!? ショックー!!」
「アニタは気付いてなかったな」
『オォォォォォォーッ!! あのう、そろそろ出航してもいいですか?』
あっ、幽霊船がちょっと正気に帰って言葉を話した!
「ああ構わん。主殿、大いなるヒロピン号の出航ですぞ! 何か気の利いた一言を!」
『神様のちょっと良いところ見てみたいですぞー!!』
「ウボアー!」
「よーし! お前ら、黙って俺についてこい! 遊牧民どもをぶん殴って壊滅させて、気持ちよくなるぞーっ!!」
『オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーッ!!』
ヒロピン号のあちこちから、幽霊船員たちが雄叫びをあげる。
怨念が回ってる~!!
殺された連中の無念と魂を使って復讐を遂げさせ、俺達はそこに乗じて領土を拡大しつつ脅威も排除する。
実にエコな作戦ではないか。
俺から持ち出したものは何も無いぞ!
なんか別にアイハムが訴えてもいなかったし、俺自身別にどうでもいい他人事の復讐心だけがある。
これを火種にして、遊牧民たちドラゴンライダーを放火してやろうというのだ!
大いなるヒロピン号が砂漠を走る。
もう、本当に走るというのが正解な速度だ。
時速80kmくらい出てる。
なお、風はほとんど無い。
無いのに、ボロボロの帆をはためかせ、真っ黒な炎を船のあちこちに灯しながら、ひた走る。
汚いセントエルモの火だねえ。
日差しが強いので、女子たちは船の中に入ってお昼寝するようだ。
俺はラッシュとヘッドレスとカグツチと四人で、船長室の上の第一見張り台みたいなところでお喋りなんかすることにした。
「それでな、もうガランドーを仲間にするついでに、将軍や女王にも声掛けてみようとしたんだが、とにかく話にならなくてな。魔人と言っても、全く話が通じない奴らもいるんだなあ」
「彼奴らは知性よりも本能が勝ってしまっている、獣のような連中です。主様が心を割く必要はございますまい。忌々しき砂嵐さえなければ、我が出向いて八つ裂きにしてやったものを」
『魔人にも色々おるんですなあ! して、遊牧民とやらは話が通じそうなので?』
「もがー?」
「いやあー、俺はこいつらもまた話が通じないと思うんだよな。だから殲滅するしか無いって言ってるわけで」
「基本、見敵必殺で間違いないでしょう。主様はお優しすぎるのです。魔人の相互理解に夢をみておられる」
「そうかなあ」
『神様は性善説で生きてますからな!』
「ウボボア!」
「そうかな……そうかも……」
的確に俺という人格が分析されているな。
確かに一回裏切られるまでは性善説だからなあ。
そのすぐ隣に、殺すスイッチがあるだけで。
とか考えていたら、砂漠の向こうに岩石が現れ始めた。
ここからは岩石砂漠となり、さらにその奥がステップ地帯になるのだ。
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