第41話 ここを砂漠拠点とする!
「決局……大きいドラゴンはいなかったな。バカにしやがって」
「た、た、た、助かった。ほ、ほ、本当に助けてくれたんだな」
岩石みたいなのがコロコロと転がってきた。
「あーっ、ガランドーさん、慌てて走るから転んでしまったではありませんか」
「あの転がってるの、移動じゃなくて転倒してるの?」
巨大な腕型オブジェから降りる俺とアニタ。
広場には、ドラゴンと遊牧民の死体が積み上がっている。
まあ、来たやつは九割殺したよね。
一割くらいが真っ青になって逃げていった。
ドラゴンと言っても、ちっちゃい連中ばかり。
ワイバーンと言ったほうがいいのかも知れないなあ。
俺はコロコロ転がるガランドーをキャッチした。
すると、岩石の塊がカチャカチャカチャと変形して、岩でできた髪とヒゲとチョッキ姿の男になった。
背丈は俺の腰までしか無いが、太さが二倍くらいある。
「最後の古いドワーフというわけか。エンシェントドワーフ、ガランドー。俺は君を歓迎するぞ」
「ど、ど、どうもどうも。と、と、ところでその盾も槍も、ひ、ひ、ひどい造形だ。そ、素材は良くても、そんなんじゃ少しも力を発揮できない。お、お、俺に貸してくれ」
ガランドーがどこからか槌を取り出した。
俺が渡した盾をひょいっと持ち上げると、ガランっと転がした。
あれを持てるのは、とんでもないパワーだな。
そしてガランドーの口から猛烈な炎が吹き出す。
赤い炎じゃない。
青い炎だ。
アダマンタイトの輪郭がゆるくなったところで、槌が振り下ろされ、形を変えていく。
あっという間に、黒い盾はめちゃくちゃかっこいい盾に変わっていた。
いくつもの手のひらが合わさり、その中心に目玉がある。
オルトファースの盾じゃん!
かっけー。
「すげー」
俺は心の底から称賛した。
「リョウさん、それかっこいいねー。ねえねえガランドーさん、私の斧もかっこよくして!」
「おうよ。ま、ま、任せておけ。こ、こ、こいつはなかなかの業物だなぁ。ち、ち、稚拙とは言え、人間が作るものの中では最高峰の一つだろう。どーれ。あ、あ、甘いところを直してやる」
ガランドーの青い炎が、槌が斧を鍛え直す。
金属の色一色だった斧に赤い色が生まれ、金属とは思えないような優美な線で形作られていく。
「かわいいー! ありがとうガランドーさん!」
「すげー」
キャッキャとアニタが喜び、俺は感嘆した。
ファルメラもこれには驚いたようだ。
「人智を超えた鍛冶の腕です……!! 巨大な斧や盾が、飴細工のように形を変えたと思ったら美術品もかくやという美しい武装に……。あの、わ、わたくしの剣も」
「ま、ま、任せろ」
ファルメラの剣が鞘ごと打ち直された。
細く鋭く、薄い刃。
鞘から抜いた瞬間に長さ変わらなかった?
新体操のリボンのような剣が、ファルメラの手の返しに合わせて太さから厚さから長さまで自在に変わる。
「あ、あ、アダマンタイトを固体のまま液体にしたんだ。う、う、腕がないと、剣の形にもならないが、た、た、大したもんだな」
「驚きました……。わたくしの理想の剣です! 素敵……」
そこへ、ワーッと駆け寄ってくるシエスタの人々。
全員が、ワイバーンの血を吸ってパワーアップしたレッサーヴァンパイアだ。
「いやー! 広い街だねー!」「えっ、ここに住んでいいの!?」「砂漠の真ん中にねえ!」「街のみんなでやって来ちゃったよー」「あれ? シエスタは空っぽってこと?」
おじさんおばさん、お兄さんお姉さん、じいさんばあさん、少年少女、赤ちゃんに犬まで。
シエスタにいた全ての住人がレッサーヴァンパイアとしてエルミジャッドに降り立っている。
この町の住人が完全に入れ替わってしまったなあ。
そんな話をしていたら、さらにこちらにやって来る連中がいる。
遠く、ボルカノ山が噴火したと思ったら、火山弾が幾つも放たれる。
それらは狙いあやまたず、エルミジャッドの壁に着弾、それを粉砕する。
崩れ落ちる岩壁の中から立ち上がるのは、バルログたちだ。
その中で、岩を溶かし、ガラス状にしながら姿を見せたのはカグツチ。
「主よ! 見事に砂漠を制圧されましたな! このカグツチ、感服仕りました!」
「おーう! なんとかやれたよ! まあ、遊牧民がワイバーンに乗って攻めてきたから国が滅びたというのが正しいけどな」
『ほおーう! 人間の気配が全くありませんぞーっ! これほど巨大な都が無人! いや、我らしかおらぬということですなー!』
ラッシュがヘッドレスと一体になりながら飛びまわっている。
「そうだな! よし、ここはいっちょ……作り変えるか! リサイクル……アンドリメイク!」
破壊され尽くしたエルミジャッド全土を、俺の力で作り変える。
巨大な腕の形のそれを中心とし、大地は深く深く掘り下げていき……。
網目状の都市として作り直す。
余った素材をボルカノ山まで伸ばし、道にした。
「あっ、地下水が溢れてきた」
「主よーっ! ようやく合流できましたーっ!!」
「シンカイ! シンカイじゃないか! お前、地下水からも来れるのか」
なお、パパールは砂漠は食べるものがないので、周囲の森を食べながらこっちに移動してくるとのこと。
ガランドーは、カグツチやラッシュ、シンカイにも暖かく迎え入れられた。
「ああ、そうだバルログたち。頼みがあるんだが。そこにピラミッドが見えるだろ? あそこ、このエルミジャッドとは関係が無いっぽいんだ。ちょっと調べといてもらえるか? 俺は次にやることがある」
「と、仰られますと」
カグツチの言葉に頷く俺。
「舐めた真似をしてくれた遊牧民どもを分からせてやろうじゃないか。今度はお前も来るか?」
「オーバーロード殺しのこのカグツチ、お供致しましょう」
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




