第38話 女王は流石に大物だ!
「あー、もったいない。アンドロスコルピオはともかく、将軍はいい素材になるのに。リメイクしてー。だが俺には美的センスがなく、ガランドーを見つけた今、彼を連れてここに戻ってくるのが最適解」
「リョウ殿! 行くぞ!」
「リョウ様、ここはこらえてくださいませ! 正体がバレたら困るでしょう」
アイハムがせかし、ファルメラが俺に囁く。
そうだった。
ここは苦渋の選択だ。
まだウォリアーたちに正体がバレるわけにはいかない。
バレてしまうと、これからあるであろう面白いことが色々出来なくなってしまうからだ!
「リョウさん行こー」
「俺は先に行ってる! アニタも来いよ!」
よし、行くかあ。
俺は盾を背負った。
なんと!
巨大な盾は背負うことで、行動を邪魔しなくなるのだ!
ガッシャガッシャと走る俺。
ダンジョンの出口までは、ローデスが糸を張っているからこれを辿ればいい。
便利だなー糸使い。
で、外に飛び出してみると……。
『キキキキキーッ!!』
甲高い叫び声をあげながら、巨大な蜘蛛みたいなのが暴れていた。
うおーっ。
なんだあれはーっ。
って、女王か。
「他のチームは失敗したのか!?」
どうやら、少人数で女王を倒すべくダンジョンに入ったが、やはりこれは無理と判断。
ダンジョン外まで誘導して、俺達の合流を待つ作戦に切り替えたようなのだ。
有能~!!
「ウォリアーたち、ことごとく有能過ぎない?」
俺の感想に、既に臨戦態勢のアイハムが答えた。
「力だけでなく判断力。それがない仲間たちは皆倒れたからな。行くぞ!!」
複数のウォリアーたちが立ち向かう、女王戦。
本来なら行われるべき魔人の結婚式は中止だ。
何しろ、お相手になる将軍は俺達が倒してしまったからな。
その姿は、見上げるほどの巨大な蜘蛛で、頭部には硬質化した組織が絡まり合ってミサイルポッドのようになっている。
先端に、大きな女の姿があった。
まさしく女王。
上位魔人と言われても納得できる威厳を感じる。
女王は腹から真っ白なボールを何発も放つ。
これは粘着力の高い糸の塊だ。
これに当てられたウォリアーが動けなくなったところで……。
「うおおおーっ!?」
『キキィィィーッ!!』
女王が纏っていた硬質な組織……ミサイルが射出された。
それがウォリアーを串刺しにする。
「ウグワーッ!!」
その直後、女王の周辺に砂の竜巻が巻き起こり、射出された硬質な組織が再生した。
あれは砂で作られているのか。
女王は時折砂嵐を起こして視界を塞ぎ、あるいは射撃攻撃への壁とし。
次々に糸を放ってウォリアーを捉えようとする。
「強いんじゃない?」
「恐ろしい強さですわ! わたくしとアニタでしたらどうにかできそうですけれども……力を使ったら、バレてしまいますもの」
「人間に擬態した実力だけだと厳しいか」
「今のわたくしたちでは」
ファルメラの冷静な戦況分析を聞く。
なるほどなるほど。
最前線では、ローデスとアニタが走り回っている。
後は、見覚えのない女が巨大な弓を構えて、戦場を駆け回りながら矢を放つ。
多分、あの女がギフト持ちの一人だろう。
この三人以外は、どうにか近づこうとしても糸玉が襲いかかってきて、これを回避するので精一杯だ。
「思った以上に戦力差があるな。普通のウォリアーでは、女王クラスには刃が立たないわけね。アイハムですら近づけないでいる」
「わたくしも行きますわ。なんだかあの魔人に好き勝手されているの、腹が立ちますもの!」
ファルメラがダッシュした。
一瞬で砂嵐を突き抜け、女王の眼の前まで到達する。
『キキィーッ!』
振り下ろされる前足をくぐり抜けると、それを足場にして駆け上がっていく。
切先が、女王の人型ボディに浅く傷を作る。
効いてる効いてる。
この間に、アニタが女王の足をあちこちでガッツンガッツン殴っている。
砂の甲殻がバリバリはがれる。
おっと、アニタ、殴るのに夢中で糸玉の標的にされているぞ。
「うおー! 間に合え~」
俺は砂嵐目掛けて走った。
そしてふと気づく。
この乱戦状態……。
わざわざ能力を縛る必要も無いだろう。
「砂嵐をリメイクだ。アパラチャノモゲータ! 俺の前の嵐は両方に分かれ、むしろ追い風になる!」
風向きが完全に変わった。
背中に盾を背負っている俺が加速する。
あっという間にアニタの前まで到着し、俺はえっちらおっちら盾を構え……。
「うわーっ、構え中に糸玉で射撃してくるんじゃない! アパラチャノモゲータ!」
糸の粘力をリメイクしてゼロに!
ばらばらにほどいてその辺に捨てるぞ。
「リョウさーん! 助かっちゃった!」
「ははは、盾として活躍しに来たぞー」
やっと盾を構えたところに、女王がガツーンとぶつかってきた。
これを俺は「おりゃっ」と受け止める。
俺と女王のパワーが拮抗。
完全に女王の動きが止まったな。
「なぜか女王が動かなくなった! 今だ!!」
ローデスが空を駆ける。
狙うは女王の首だ。
なお、動かなくなったのは俺と押し合いしているからだぞ。
俺が完全に状況を拮抗させているので、女王は動けないのだ。
こんな図体して、俺一人押しきれんのか。
俺、この世界で力比べで負けたことが一度も無い気がするぞ。
「よーし、ついでにお前が吐き散らした糸をリサイクル! 俺の周りに集めて……。粘着!」
『キキキキーッ!!』
「ここでお前を勧誘したいところだけど、正体バレちゃうしなあ。それにそこそこ強いけど、利便性が低そうだ」
粘着糸は、女王にも通じるらしい。
人型ボディも糸に絡まれて自由を奪われ、女王が何かを叫んでいる。
「すまんな! ここで倒されてくれ! じゃあな!」
俺が笑顔で手を振ると、次の瞬間、女王の頭に矢が何本も突き刺さり、ローデスの剣とアニタの斧とファルメラの剣が三方向から、その首を切り落とした。
しばらく体がバタバタと暴れていたが、反射だけなのだ。
すぐに動きを止め、女王は死んだ。
「う……うおおおおお!!!」
女王の首の上に立ち、ローデスが剣を突き上げた。
生き残ったウォリアーたちも雄叫びをあげている。
これを、アニタはニコニコしながら眺めていた。
「まさか殺されるのを放置するとは思いませんでしたわ」
「こいつら、ひたすら話が通じなかったんだよね。アンドロスコルピオやアルケニーはダメだ。滅ぼそう」
俺はこの土地の魔人に対する方針を固めたのだった。
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