第34話 大宴会と、ダンジョン攻略計画
大宴会だった。
別に俺達の歓迎会というわけではない。
武装キャラバンが無事に戻ってきた事を祝う祝勝会と、次なる大きな戦いへ向けての壮行会を兼ねている。
肉やらパンやらが並んでいるな。
ビールもある。
俺は生前、酒はやらなかった。
美味しくないんだよね。
アニタも一口飲んで「うぇー」と顔をしかめて舌を出した。
「苦いだろ」
「にがすっぱいー。なにこれー」
すると、砂漠の連中がワハハと笑うのだった。
「まだ子どもには分からんよな」「酒ってのは味わうもんじゃない。ぐっと腹に注ぎ込んで酩酊感を楽しむものなんだ」「なんだ、旅人の戦士よ。お前も酒がダメなのか」「槍もへっぽこ、酒もダメ。全く、どうしようもないな」
おっ!
俺なんかディスられてる?
だが、俺は心が広いんだ。
今は生かしておいてやるからなあ。
なお、これはギフト持ちの少年戦士ローデスも例外ではなく、
「ぜってービール不味いって! 飲めねーよこんなの!」
「ギフトがあってもビールには勝てねえよなあ」「お前も早くデカくなって俺等と酒を飲もうぜ!」「がっはっは、酒だけは教えてやれるからな!」
「いらねー! 俺より弱いくせに、こう言うときだけガキ扱いしやがってよー!」
おうおう、仲良し仲良し。
周囲もなんか微笑ましげに見ているね。
フラグかな?
「おや、ご機嫌だなリョウ殿」
アイハムが俺のところまでやって来た。
骨付き肉を持っている。
「いやあ、人間の美しさを見てしまって……。本当にいいものだなあ」
「ああ。ローデスか。あいつは一人、砂漠を彷徨ってここまでたどり着いたんだ。もっと小さなガキの頃だぞ? この国のみんなが親になってあいつを育てたんだ。まさかギフト持ちとはなあ……。ま、ギフトがあってもなくても、俺らの息子や弟分みたいなやつってことさ」
「ははあ、それはとてもいいね。いい関係性だ。時に……ギフト持ちがもう一人いなかったっけ?」
「あいつはとてもストイックなんだ。今回の宴席にも参加せず、ダンジョンアタックの準備に勤しんでいるよ」
「ははあ、なるほど……。顔を見られなくて残念だ」
「リョウ様、またろくでもないことを考えてますわね?」
「強そうな奴の顔見ておきたいじゃん。ダンジョン攻略終わった後のお楽しみでしょう?」
「おっと、お邪魔をしてしまったかな。では俺はこれで」
アイハムが何か勘違いした様子で去っていった。
周囲は大いに盛り上がっており、ローデスはビール飲めない仲間のアニタと何やらお喋りしているようだ。
背格好も近い感じだからな。
「リョウ様、砂漠を安心して通れる通り道にしようとしておいで?」
「ま、似たようなものです。ダンジョンに住む連中を手懐けられれば一番楽なんだけど、それは会ってみないと分からないからなあ。ただ、アンドロスコルピオたちのあの感じからすると話が通じない気がする……」
宴会も大いに盛り上がるのだが、不思議と酒で潰れる者は出てこない。
みんな何かあっても戦いに行けるように備えているのだろう。
ここで、大きな板を持った男が入ってきた。
「やあやあ諸君! 魔人たちの結婚式は近い! 次の満月の夜であるのは間違いないだろう。なぜって? それは、先代の女王が魔人将となるための試練に挑み、破れたからだ! 魔人たちは新たな女王を作り出す必要がある! 彼らは今、ダンジョンでその備えを行っているだろう。今がチャンスだ!」
板が壁に立てかけられて、松明がそれを照らし出す。
ほう、あれはダンジョンの通路図か。
大雑把なものではあるだが、どうやって調べたんだろう?
「何人もの犠牲が、このダンジョン図を作り上げた! 今こそ、彼らの勇気に報いる時だ! 奴らは昼になると行動を鈍化させる。突入口は三つ。こことここから陽動が入り……」
「酒で鈍った頭で作戦会議行けるのか?」
「何度もこの話を詰めていたようですわね。みんなそれぞれの隊に名乗りを上げていますわよ」
「俺達、ちょうどいいところに来ちゃったなあ。他の魔人と、強い人間たちの戦いを特等席で見られるぞ。さて……」
「あらリョウ様、外に出るのですか? これから長がやって来るようですけれども」
「どうせ、新参の俺達は陽動部隊に配備されるだろう。それに長が出てきて何を話すかなんかたかが知れてる。これまでのみんなの頑張りがーとか、今こそ決戦の刻ーみたいな、そういうのだ。俺達は今日到着したばかりだぞ? 思い入れもなんもなく、いきなりクライマックスを見せられるみたいなもんだ。それよりも、もう一人のギフト使いとこの国の構造を見て回りたい」
「なるほど……ひねくれてはいますが、まあ仰ることはよく分かりますわ。ですけど、リョウ様一人では明らかに危険でしょう? 何が危険かというと、あなたと出会った人間が危険です。だからわたくしもついていきます」
「過保護だなあ」
「リョウ様への嫌な意味での信頼があるだけです」
宴会場から外に出た俺達。
ほぼ、何も食べなかったのだ。
いやー、食材を見ると、リサイクルしてー! という欲望を抑えるので必死になるからな……。
宴会場を走り回る、ゾンビ再生された食材たち。
阿鼻叫喚になることだろう。
絶対面白い。
そんな事を考えながら、ブラブラと街の中を歩く。
「リョウ様、あのボタンはなんでしょうか?」
「あ、これは恐らく……この上でジャンプしてボタンを押すとだな、ほら、城壁に穴が空いてるだろ。あそこから巨大な切先が飛び出してくるんだ。上位魔人を誘い込んで一撃浴びせる施設だな。ウォリアーでなくても戦える。なるほど、考えたもんだ」
他にも、亜竜たちを飼っている場所があり、その近くには竜の唾液を集める設備があったりする。
これを加工して、ボウガンの火薬にするのだろう。
他にも、一般人が扱える据え置き型ボウガンもあちこちに設置されていた。
家々の屋根の上や、国を囲む城壁の上だ。
「国に侵入された後の戦いも想定しているな。これは国自体がなかなか手ごわい。アニタの力を使ってもらう必要があるだろう」
「シエスタのみんなを呼ぶのですわね? はあ……。きっと王国は、シエスタがもぬけの空になったのを見て驚くのでしょうね……」
「ああ、そういう展開になるよなあ。街を捨てて来てもらうわけだから……そうだ。一時的に、この国をシエスタ第二号にしてしまえばいい。今回の作戦を成功させれば、魔人の数もかなり減るようだし……安心して暮らせるんじゃないか?」
「気が早いですわよ、リョウ様!」
取らぬたぬきの何とやらだったかも知れない。
全ては明日の作戦次第だ。
いやあ、楽しみだなあ。
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