第33話 砂漠の国を見て回りつつ
アイハムと、ギフト持ちだというウォリアーが俺達を案内してくれることになった。
ギフト持ちは、糸使いの異名を持つまだ若い少年。
子どもに見えるのに、この国でもトップクラスの使い手なんですか?
へえー!
俺はまじまじと彼を見た。
武器は背中に背負った大振りな剣一本。
糸ってどうやって使うの?
「この人、いやなニオイがする。教えたくないな」
「なんですとー」
鋭い!!
いやあ、正しい感覚を持っている人間もいるもんだ。
少年は俺に一切気を許していない。
その反面、アニタやファルメラから質問されると、全然普通の感じで返答する。
二人とも性格がいいからね。
「ローデス、あまりそういう事を言うものじゃない。ともにダンジョンに飛び込んで戦う仲間なんだぞ」
「だけどさ、アイハム! おれは勘が鋭いの!」
「ダンジョン!?」
別に俺の人間性についてはどうでもいい。
俺はこの世界に来て、初めて聞く言葉に反応した。
「やっぱりこの世界も、ダンジョンがあるのか」
「ああ、そのとおりだリョウさん。魔人たちの住処であり、特に将軍や女王などの上位魔人は、作り上げたダンジョンの奥深くに住む……。もしや君の暮らしていたところにもダンジョンがあったのか?」
この言葉に、アニタもファルメラも驚いた顔をする。
「私のとこにはなかったなあ」
「ドラク王国にもですわ。リョウ様のおられたところにはありましたの?」
「あった」
具体的には、俺が生前いた世界。
世界中にダンジョンが発生してて、ダンジョンを攻略する姿を配信する冒険配信者っていうのがいた。
あれは零細の女性配信者がダンジョンで可哀想な事になったりするので、俺はよく視聴してたなあ……。
今度は俺が配信者側になるってわけ?
こりゃあ因果が巡っちゃうな!
「テンション上がってきた。任せてくれ。どんな攻撃でも食い止めて見せる」
「こりゃ頼もしい!」
「言葉が上滑りして感じる……」
「ローデス少年は疑り深いなあ」
俺はハハハと笑ってこの鋭い少年の言葉を受け流すのだった。
さてさて、案内されたこの国の施設群は、居住区画に商業区画、そして訓練区画。
商業区画には鍛冶屋や万屋などがあり、なんと魔人を倒して得た素材で武器を作ったりしているようだ。
「魔人の他にも、亜竜やモンスターたちがいる。それらは全て貴重な素材になるし、肉は食材になる」
「人が魔人を食べたりしている。食物連鎖だなあ」
確かに、アンドロスコルピオの甲殻はいい素材になりそうだ。
つまり、倒したあとはリサイクル&リメイクして、何らかの武器にできるってことだな?
武器屋ではボウガンを発見。
アイハムたちが使っていたものよりも弱そうだ。
「俺達のボウガンは素材を使って強化してある。だが、みんな始めは武器屋の安いボウガンからスタートするのさ。俺はこいつがサブウェポンだが、中にはボウガンをメインにしてるやつもいる」
「ほうほう……。俺もボウガンを武器にしようかな……」
「リョウさんはなんか狙いが下手っぴそう!」
アニタ、なんてことを言うんだ。
だが、槍を使ってもへなちょこなバトルセンスだった俺。
否定はできない。
そして俺達の宿に案内された。
旅人ということで、石造りの家の中にある涼しい寝台を提供してもらっている。
「男女別か……」
「とても潔癖な国ですわね。戦士たるもの、色恋に現を抜かしている場合ではないということなのかも知れませんけど」
「えーっ! 私はリョウさんと一緒がいいなあ」
「ハハハ、女子たちよ、またご飯時に会おう。俺達は別に食事は必要じゃないけど」
部屋に引っ込み……。
俺は案内されたこの国のことを思い返しつつ、自分なりにまとめてみる。
「まず……エルミジャッドは極めて戦闘的な国家だ。砂漠の魔人たちと戦うために作られた国と言っていい」
兵士と呼べる者たちはいるが、彼らは戦場の主役ではない。
ウォリアーと呼ばれる、特殊な武器とそれを扱う戦闘技術に長けた連中がこの国の主戦力だ。
武器群は魔人やドラゴンの素材を使って強化されており、恐らくその全てが、魔人へ有効打を与えることができる。
これはなかなかの脅威だ。
見たところ、アンドロスコルピオはゾンビなど何体放っても相手にもならないほど強い。
ゾンビ爆弾を数発打ち込めば倒せるだろうが。
そのアンドロスコルピオを、この国のウォリアーは単騎で仕留められるという。
ギフト持ちともなると、一人で複数体のアンドロスコルピオと戦い、将軍クラスの巨大な魔人でも相手取れるんだそうだ。
うーん、その戦闘風景を見てみたい!
なんかね、ローデス少年が俺を危険視したように、俺もまた彼はなんか他と違うなって気がするのだ。
あれ、成長してきたら俺の前に立ちふさがる敵になったりしない?
なるんじゃない?
うわー、おもしれー。
じゃあ何やかんややって、この国を破壊する時が来たとしたら、俺から逃げられたら見逃そう。
そうしよう、そう決めた。
ニヤニヤする俺なのだった。
「リョウさん、いいかい? 食事の用意ができたんだ。ご馳走だぞー!」
アイハムが呼びに来た。
「あ、そりゃ楽しみだ! これから共に魔人と戦う仲間同士、美味い飯と美味い酒で交友を深めたいもんね!」
それに、この国にはまだまだ幾らでも見るべきものがある。
武器に防具に、それに街全体には対魔人用の仕掛けがしてある気がする。
いやいや、本当に来てよかったぞ、エルミジャッド。
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