第32話 砂漠の国で腕試し
砂漠の暁号は大歓声とともに迎えられ、荷下ろし役らしき人々がワッと詰めかけてきた。
最下層に荷物を大量に詰め込んでいたんだな。
「こ、こんなに人間がいっぱいいるなんて~! ここだけで、シエスタにいた人達と同じくらいいるよー」
「シエスタはせいぜい千人足らずだったもんなー」
「ドラク王国だってそうです! 王国とシエスタを合わせて、二千人行くかどうかですよ!? こんな……こんなに人がいるなんて……」
なお、カザン帝国は余裕で一万人以上住んでいたのだった。
砂漠の国エルミジャッド、恐らくカザン帝国と同規模はあるぞ。
偉いっぽい人がやって来て、アイハムと何やら話をしている。
お偉いさん、体格がいいな。
あれは過去にウォリアーだったんじゃないか。
そして俺達のところにも来て、握手を求めた。
「今のエルミジャッドの長だ。凄腕のウォリアーでもある。長、彼らがアンドロスコルピオの群れと戦っていたウォリアーです。砂漠の外、カザンという土地から来たそうですよ」
「ほう、カザンか! バルログたちが封じた場所からやって来れるとは、なかなかの腕利きと見た。どうか、我らに力を貸して欲しい」
「どうもどうも」
俺はペコペコしながら握手し、
「それで、俺達の助力が必要ってことは、何か起きそうなんですかね? ここに来るまでに聞いた、魔人たちの将軍が出てくるって話ですか?」
「……魔人の結婚式だ」
「結婚式ぃ?」
そりゃあまあ、めでたいことなんじゃないの?
俺はどうでもいいけど。
結婚式で警戒度が上がるもんなの?
「結婚式は素敵ねー。誰が花嫁さんなの?」
アニタの無邪気な質問に、長がちょっと微笑んだ。
「魔人たちの新たな女王と、将軍が結婚する。女王一人に対し、複数の将軍が出現するんだ。その中で最も優れた将軍が選ばれる。奴らは上位魔人と呼ばれる、巨大な体躯を持つ怪物たちだ。そんな連中が複数で暴れれば、砂漠では大きな砂嵐が起こる。下手をすると、エルミジャッドが飲み込まれてしまうほどだ」
「全部説明してくれた! なるほど、分かりやすいな……」
「素敵な結婚式じゃなかった!」
「確かにそれは、警戒すべきですわね……。わたくしたちの手を借りたくなるのも分かりますわ。でもよろしいのかしら。わたくしたちの実力を知らないのに、そんな事を言って」
「あ、言われてみればそうだそうだ」
俺はファルメラに同意した。
「では俺達の力試しをしてほしい。俺達は大変善良で、実力派のウォリアーだぞ」
「ほう、自ら実力を売り込んでくるとは……期待できそうだ」
ということで。
訓練場に案内された。
中央に、アンドロスコルピオを模した巨大なサンドバッグめいたものがある。
こいつで技を試すわけか。
「俺がやり方を見せよう。はあーっ!!」
アイハムが二刀流でサンドバッグに切りかかった。
このサンドバッグは特殊な素材で作られており、どんなにダメージを受けても回復するのだ。
これこそ、勇者がもたらした奇跡の一つ、無限訓練場なんだと。
「どうなってるんだろう……。調べてみたい……。だが下手に調べると怪しまれそうだ」
「誰が行く? 私が行く? 行くねー!」
アニタが元気に飛び出していった。
巨大な斧を軽々と振り回し、身構える。
この姿に、アイハムや長、他のウォリアーたちもどよめく。
「一見して小柄な少女なのに」「恐るべきパワーだ!」「しかも回転して……」「あの斧を使いながら高く跳躍して、切りかかった!!」
なかなか反応がいいぞ。
アニタは、身軽さとパワーを兼ね備えたアタッカーということが理解してもらえたようだ。
「ふーっ! いっぱい動いた! でも全然あのサソリさん壊れないの。頑丈だねえ」
「さすがは勇者が残した奇跡だな。じゃあ、次はファルメラ様どうぞ」
「はい。参りましょう」
ファルメラが剣を抜いた。
アダマンタイトでコーティングされた刀身が輝く。
一見細身だが、その重量は大剣に匹敵するぞ。
そんだけ中身が詰まっているので、そう折れるものではない。
「はっ!!」
ファルメラが地面を蹴ると、その姿が消えた。
既にサンドバッグの背後にいる。
一瞬遅れて、サンドバッグの全身に無数の衝撃が走った。
「は……速い!!」「人間の速度か!?」「いや、俺には斬撃が見えた。速く、そして正確な剣筋だ」
ファルメラの剣が見える奴がいる!
これはカザン帝国の聖戦士(笑)なんか勝負にもならないほど、ツワモノが揃っているなあ。
その後、ファルメラがあらゆる方向からの超高速斬撃と、サンドバッグを踏み台にして跳躍して、頭上からの切り下ろしを見せたところで腕試しは終りになった。
彼女は極めてスピードに優れる、フェンサー型のウォリアーという扱いになったようだ。
アニタともども、超一線級だな。
そして満を持して俺である。
「よし、行くぞー」
大きな盾と、炎の槍を構えてのしのし歩く俺。
走ろうと思えば走れるが、盾がかさばって引っかかって転びそうなんだよな。
なので徒歩で歩くくらいの速度になる。
「長よ。彼は超重量の盾と、燃え上がる槍を使いこなす守り手です」
「ほう、先の二人のみならず、この男もギフト持ちか! これは頼もしい」
見学してるウォリアーの中に二人ほどギフト持ちがいるらしい。
そいつらがファルメラの動きを見切った奴だな?
さあ、では俺の強さを見ておののくがいい!
俺はトコトコ進むと、盾の影から炎の槍を突き出して、サクサクサクッと突いた。
また盾を構える。
再び盾の影から出てきて、サクサクと突く。
「な……なんというか……」「地味だな……」「槍の使い方も全く凄みがない……」「だが、視界を封じられるほどのあの巨大な盾は脅威だな」
おやあ?
俺の扱いがあまりよろしくない。
長も首を傾げていた。
「君の凄さは、訓練場では伝わりづらかろう。俺が斬りかかるから、これを防いでみてくれ!」
「おっ、了解」
アイハムが助け舟を出してくれた。
彼は二刀を抜くと、猛烈な勢いで切りかかってくる。
「ツアーっ!!」
「うおー」
俺は刃が来る方向に盾をチョイチョイ、チョイチョイと動かして的確にガードする。
いやあ、盾がでかいと楽ね。
「アイハムの連撃を防ぐか!」「しかも巨大な盾を、まるで軽い板でも扱っているかのように動かす!」「これはまさに鉄壁だ……!!」「攻めは全然アレだが、守りは超一流だぞ!」
攻めも凄かったでしょ!!
だが、俺も一応は一線級と認められたようだった。
アニタとファルメラが認められて、俺が落第とかしたらもう威厳とかね?
色々台無しだからね?
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