第31話 ようこそエルミジャッドへ!
「この荷馬車に乗ればよろしい?」
「おいおい、こいつは荷馬車じゃない。俺達ウォリアーの乗り込む戦車だ」
「戦車!! これが? このラクダが引っ張ってるやつが?」
「ラクダが何なのかは知らないが……」
アイハムはこの毛むくじゃらの生き物を指さした。
「ティキトスのことだな? 竜を先祖に持つ、俺達の足となる生き物だ」
つまりドラゴンの一種ってこと?
遊牧民だけでなく、砂漠の人々もドラゴンの仲間を使ってたんだな……。
ここでファルメラが出てきて、話を整理してくれた。
「つまり、わたくしたちがキャラバンだと思ったものは実はそうではなく、本当のキャラバンはこの後に来るということですのね?」
「そういうこと! 来るぜ!」
灯りが近づいてきた。
随分高いところにある。
まるで、巨大な建物が丸ごと動いているような……。
って、これ帆船だ!
砂漠を走る巨大な帆船だ!
「神様、なあにあれ!」
「神……?」
アイハムが微妙そうな顔をした。
いかんいかん。
「アニタ。俺のことはリョウと呼ぶんだ」
「えーっ、いきなりそんな風に言われてもー」
「普通の人は仲間のこと神様って呼ばないからね。ね?」
「分かったー。リョウさんって呼ぶ」
「よしよし。ちなみにあれは船と言ってだな」
「あれが船!? 初めて見た!」
「アニタは内陸の出身だもんなあ」
恐らくは船を知っているファルメラも、唖然としている。
陸を巨大な船が走ってくるんだから、そりゃあ驚くだろう。
どうやらあのラクダドラゴンで荷物を運び、砂漠で待機している船に積み込む。
そしてこいつを走らせて砂漠の国に戻ってくるというわけだ。
アイハムは得意げに笑った。
「驚いただろ。これぞ、俺達武装キャラバンの船、砂漠の暁号だ!」
「すげー」
これは素直に感嘆してしまった。
やっぱりデカいものは凄いな!
俺もファルメラもアニタもポカーンとしていると、
「外は危ないからな。乗り込んでくれ。夜明けにはエルミジャッドへ到着するだろう」
「いいの? 俺達はよそ者だが?」
「さっきまでのやり取りで、あんたたちが悪人じゃないことは分かった。魔人とも戦っていたしな。それに、うかうかしていたら大物が来ちまう」
「大物?」
「魔人どもを率いる親玉だよ。女王と将軍たちがいる。奴らはアンドロスコルピオやアルケニーなんか比べ物にならないデカさの化け物だ。そいつに見つかったら、トップウォリアーでもなければひとたまりもないぜ」
俺は困った顔をファルメラに向けた。
「また独自の言葉がたくさん出てきたので、何も覚えられなくなったのですね?」
「ごめんね!」
「仕方ありませんわねえ……」
ファルメラが代わりに話をして、まとめてくれた。
固有名詞が俺の一番の弱点なんだ。
「つまり、魔人たちの上位魔人が存在するということですわね。巨大な怪物である上位の魔人相手は、あの戦車でも勝てませんわ。ですが人間たちの中で優れた戦士は、その上位魔人とも生身で渡り合うそうですの」
「えーっ! にわかには信じがたい。だが実際にそうなのかも知れない。これは砂漠の国にご招待いただいて、この目で見るしか無いだろう」
「私も砂漠の国、行きたーい!」
「ではわたくしたち、全員一致で船に乗り込むということでよろしいですわね? 伝えてきますわ」
持つべきものはコミュ強の姫騎士!
こうして俺達は、砂漠の暁号に乗り込むことに成功した。
名前がカタカナじゃなくて、文章になってると覚えやすいんだよ。
こうして降ろされた縄梯子を使って船に乗り込む。
戦車は船の腹が開き、そこに直接搭載されるようだ。
うーん、カザン帝国とは技術力が違う!
ちなみにアイハムたち、ウォリアーが持っていたあの銃。
あれは機械仕掛けのボウガンなのだそうだ。
火薬ではなく、亜竜から採れるブレスの素を筒の中で爆発させ、その勢いで連続して弾丸を飛ばす。
そういう武器だ。
面白そう。
今度壊れたやつをもらおう。
ブレスの素なしでも使えるようにリメイクしたい。
俺達を乗せた帆船は夜の砂漠をぐんぐん進む。
途中、小規模なアンドロスコルピオの部隊に出会ったりしたが、船が大きすぎるせいか向こうからは仕掛けてこない。
「もっと数が多いか、将軍クラスを連れていると仕掛けてくるぞ。なんなら船をよじ登ってくる」
「砂漠、凄いことになっていたんだなあ……」
俺はすっかり感心してしまった。
これは、バルログと言えど全く油断ができない環境だわ。
最初に選んだ砂漠ですらこれでしょ?
この世界、魔窟が過ぎない?
「眠っていていいぞ。到着したら知らせるからな」
「そう? じゃあお言葉に甘えて……」
俺、ファルメラ、アニタで寝た振りだ。
俺達、睡眠は必要ないからな。
「本当にこいつらは信用できるのか?」
「どうだろうな、だがあの魔人たちと戦っていたのは確かだ」
「魔人同士の争いじゃなかったのか?」
「わからん……。少なくとも、女二人は人間に思えたが……」
「男は?」
「全く分からない」
「うおっ! この盾、造形は子どもがデタラメに作ったみたいなひどさだが、とんでもない重さだ! こんなものを片手で持っていたのか、あの男!? それにこの槍……。盾の上に置いてあるが、燃え続けているぞ……!」
しまった。
あまりにもトンデモな装備を持ってきすぎたか!
「つまりこれを使いこなすのがこの男のギフトということだろう。間違いない。ギフト持ちだ」
「おお!」
変な方向に話が進んでるな……!
「この男が入ればあるいは……。女王討伐に成功するかもしれん!」
何が起きようとしてるんです?
彼らの立ち話を盗み聞きするうちに朝が来て、どうやら船は砂漠の国に到着したようだった。
何度も繰り返されて、もう覚えたぞ。
エルミジャッドだ。
俺が目を開くと、そこには巨大な土の壁に囲まれた都市があった。
門が開いていく。
武装キャラバンを迎え入れるためだ。
俺の目覚めに気付いたアイハムが、笑った。
「ようこそ、砂漠最大の都市エルミジャッドへ! 強きウォリアーを歓迎する!」
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




